第198話さて、その左衛門の陣などに行きて後(2)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中宮様へはお返事として、まず恐縮している旨を書き、添え書きを書いてよこした女房ヘは、あくまでも私人同士の文として

「私としても、素晴らしいと思わないことはありえません」

「中宮様が、『なかなるおとめの』とご覧なさってはおられるだろうと思っておりましたので」と書いて差し上げました。

すると、折り返しの文に

中宮様

「これほどの好意を寄せる仲忠の面目を無為にするようなことを、何故言われるのですか」

「もう、今宵はそのまま里邸などではなく、全てを忘れてお出でください」

「そうでないと、大嫌いになりますよ」

ということでしたので、

私は

「世間並の憎しみを受けてでさえ、恐ろしいのです」

「ましては、大嫌いになると言われては困ります」

「命も身もそっくり捨てて参上いたします」として、参りました。


清少納言先生:はい、お疲れ様でした。

舞夢    :さすが中宮定子様ですね。

清少納言先生:「なかなるをとめの」は、宇津保物語に源涼の琴の音に感動した天女が、天空を舞った場面で「あさぼらけ ほのかに見れば あかぬかな なかなるをとめを しばしとめなむ」からです。

舞夢    :仲忠の話は、天女が涼の琴に感動したけれど、同時に琴を弾いた仲忠が劣るように見えるとのことからですね。

清少納言先生:とにかく、ありがたいご配慮です。


宇津保物語は平安時代の人々の愛読書。

枕草子にも源氏物語にも、頻繁に登場する。

いつかは、ここでも詳しく書いてみたいと思っています。

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