第194話里にまかでたるに(5)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


こんな感じで、お付き合いをしていたのですが、特に格別な理由もないけれど少しずつ仲が悪くなった頃、則光が手紙をよこしたのです。

則光の手紙には

「お互いに心が通い合わないこともありましたが、やはり昔は深い愛情を交わしあったこともありますので、私をお忘れにならないでください」

「またいつか、どこか他のところでお逢いしたならば、かつては想いを寄せた男と思っていただきたいと思います」

と書いてある。


則光が常々言うことは、

「私に想いを寄せるのであれば、和歌を詠みかけるようなことはしないでください」

「そんなことをする人は、誰に限らず、古くからの敵と思います」

「私と関係を断ち切ると思った時には、どうぞ歌をお詠みになってもかまいません」

とのことでした。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :則光様は、そこまで和歌が嫌いなのですか?

清少納言先生:そんなことはないですよ、和歌の実力もあります。

舞夢    :となると?

清少納言先生:うーん・・・実務者ですし、そういう詩歌管弦よりは政治とか蓄財の人でね、その意味で私とは生き方が違う。


人それぞれ生き方があるけれど、こういう別れの文を残す以上、本当には嫌っていなかったのだと思う。

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