第193話里にまかでたるに(4)
清少納言先生:続きをお願いします。
舞夢 :了解しました。
返事については、文字としては書きませんでした。
海藻を一寸くらい紙に包み、届けさせました。
その後、則光が来て、言うのには
「あの夜は、とにかく宰相の中将に無理難題を言われ、思いつくところを様々お連れしたのです」
「真顔で脅かしてくるので、本当に辛く感じますよ」
「それに、何故、何も返事をよこさず、わけもわからないような海藻の端切れを包んでよこすのですか」
「本当によくわかりません、人のところへ、あのような物を包み届けるなどという決まりがあるのですか、何を考え違いをしているのですか」
ということなのです。
私としても全然あの返事の意味が理解されていなかったのだと思って、もう話をするのも嫌で、口など聞きません。
硯箱に入っていた紙の端切れに
かづきする あまのすみかを そことだに ゆめいふなとや 布を食わせけん
(素潜りをする海女のように、隠れている私の居場所を特定されないように目配せをする、その思いで布を食わせたのでは?)
と書いて差し出したのですが、則光は
「歌をお詠みになったのですか、絶対に見ることはしません」と言って、扇で紙をあおぎ返して、逃げるように去っていきました。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :なかなか、お互いの気持が合いませんね。
清少納言先生:もうね、無粋の極み、大嫌いになりました。
舞夢 :則光様は一度は夫となったお方、でも、もともと、生きていく世界が先生とは違うのでしょうね。
清少納言先生は、少し寂しそうな顔、なかなか男女が添い遂げるのは難しい。
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