第12話上にさぶらふ猫は(1)

清少納言先生:今日は猫の話です。

舞夢    :では、早速


帝がお飼いになられている御猫で、五位の位を頂いた「命婦の猫」がおりまして、とても可愛らしいので、帝も相当大切にしていらっしゃいました。

ところが、その猫が、ある日、お部屋の端の方に出て寝ていたところ、御世話係の馬の命婦が、「お行儀が悪いですよ、中にお入りなさい」と呼ぶのですが、日差しも、そちらのほうが暖かくて眠り込んでいるのです。

そこで、驚かせてあげようと思ったのか、「翁丸!翁丸はどこにいるの?命婦のおとどを噛んでやりなさい」と言ったところ、この馬鹿者の翁丸は本気で飛びかかってしまい、猫が怖がったのですね、あわてて御簾の中に逃げ込んでしまいました。


清少納言先生:はい、そこまでで結構です。

舞夢    :ところで、この時の帝は一条の帝ですね。

清少納言先生:御年二十一歳、定子様は二十四歳、皇后におなりでした。

舞夢    :同時に彰子様は、中宮ですね。史上例を見ない二后並立の年

清少納言先生:ただ、この年の十二月二十六日に定子様はお隠れに。

舞夢    :(清少納言先生の顔が曇ったので、話題を変えるとする)

       「こうぶり」というのは冠、猫に位を叙したんですね。

清少納言先生:まあ、半分冗談でしょうが。

       続きをお願いします。

舞夢    :はい、続けます。


ちょうどその時、御朝食の間に帝がいらしたのです。

帝もこの事態には、本当に驚かれました。

そして殿上の侍臣たちを呼び出されたのです。

蔵人の忠隆となりなかが、御前に参上すると、

帝は「この翁丸を、打ち懲らしめなさい、そして今すぐにでも犬島に流してしまえ」

ときつくお命じになったものだから、全員が集まって翁丸を捕まえようと大騒ぎになりました。

帝は、馬の命婦もきつくお叱りになり、

「こんなことでは、任せられません、世話係も変えます」とのことで、とうとう馬の命婦は、御前に顔出しもできません。

結局翁丸は捉えられ、滝口の武士などに命じて、禁中から追放されてしまいました。


清少納言先生:なんか、あきれるでしょう?

舞夢    :うーん・・・ちょっとね・・・

清少納言先生:まるで、子供なの

舞夢    :宮仕えも、なかなか気苦労ですね。

清少納言先生:・・・まあね・・・嫌なこともある


清少納言先生はそこで黙ってしまった。

まだ、続きがあるらしい。

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