第11話中宮定子の行啓と出産(6)

清少納言先生:この段の最後になります。

舞夢    :それでは引き続き


ちょうど用事をしている時のことでしたが、

女房から「大進成昌が、どうしてもお聞かせしたいことがあるのです」と言って、お見えになっているのですが、

中宮様が「また、どんなおかしなことを言って笑われようとするのかしら」と仰せになるのも、また面白い。

中宮様が「聞いてあげたら?」と仰せになるので、仕方なく応対したところ、

成昌は、「昨夜の門の一件を兄の中納言の話しましたところ、清少納言様の機転に、たいそう感心されましてね、しかるべき機会があれば、ゆっくりとお目にかかって、いろいろお話などしたいものだと、申されておりました」などとのことだった。

別に、大した話ではない。

てっきり深夜の訪問かと思って、ドキドキしたけれど、

成昌が「そのうち、ゆっくりと時間を見つけてお部屋に伺います」と言って立ち去ってしまいました。

そんなことで、そのまま中宮様のところに戻ったところ

中宮様は「いったい、何のことでしたの?」とお聞きになるので、成昌が話したことを、そのまま申し上げました。

他の女房で「そんなわざわざ伺いを立ててまで、中宮様の御前から清少納言様を呼び出すほどのことでもありませんねえ、御前にいない時とか、部屋に下がっている時でもいいのにねえ」と笑う人もいます。

ただ、中宮様は、「いえいえ、成昌としてはね、自分が立派だと思っている兄の中納言が清少納言を褒めたということを、わざわざ貴方に聞かせれば嬉しがってもらえると思ったんですよ、それを想ってあげなさい」とおっしゃられる、

その様子が、本当にお優しくて素晴らしいのです。


清少納言先生:そういう風に、中宮様は心の底から、ゆったりとお優しいのです。

舞夢    :確かに、そう感じますね。

清少納言先生:少し長い段でしたが、疲れました?

舞夢    :いや、毎日少しずつなので、何とかです。

清少納言先生:当時の会話というのも、少しはおわかりに?

舞夢    :そうですね、見知らぬ世界でしたが、これも少しずつです。

清少納言先生:舞夢君がこちらの世界に転生すればいいのに

舞夢    :しっかり講義を受けてからにします。

清少納言先生:そうでないと、危なくて仕方がないから?



とにかく、当意即妙、この話のキレは、類を見ない。

それでいながら、どこか雅と優しさがある。

それだから、枕草子は読み続けられるのだと思う。

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