第10話中宮定子の行啓と出産(5)

清少納言先生:はい、この段の続きです。

舞夢    :それでは、そのまま現代語訳します。


姫宮様のお付きの童女の着物を仕立てるようにと、中宮様より仰せが有った時のことになります。

あの成昌が「この衵(あこめ)のうわっぱりなのですが、何色にさせましょうかねえ」と申し上げて来たものですから、その無粋な言い方で、女房達が笑ってしまうのも、しかたがないことなのですよ。

また成昌が「姫宮様の御膳の食器は普通のものでは大きすぎるし、可愛らしくもないでしょう、ちゅうせい折敷(おりしき)にちゅうせい高坏(たかつき)が、よろしいのでしょうなあ」と申し上げるのを

私(清少納言)は、「はいはい、そうですね、そんなちゅうせい御膳で召し上がってこそ、うわっぱりを着た童女のお仕えしやすいでしょうねえ」とからかってあげました。

中宮様は、「あのね、普通の人相手のように、成昌をそんなに笑いものにしてはいけませんよ、何しろ生真面目な人なのだから」と、あの成昌に同情なされるお心も、お優しく素敵だと思います。


清少納言先生:はい、姫宮様は脩子内親王様。一条天皇様の第一皇女でこの時四歳

       衵というのは上着の下に着る物で童女の場合は汗衫の下になります。

       うわっぱりというのは、上に着る物なんだけれど、普通は汗衫なの。

       ちゅうせいっていうのは、成昌の美作のなまりです。

       普通は小さきです。

       何しろね、無骨で、言葉を知らず、なまりまくりで笑っちゃうの。

舞夢    :折敷は食器を乗せるお膳で、高坏は食物を盛る脚のついた器ですね。

清少納言先生:見たことあるの?

舞夢    :いや神社仏閣とかで見ることはありますが日常生活ではありません。

清少納言先生:時代も変わっていますしね。

舞夢    :生まれ変わったらいかがですか、今の時代に。

清少納言先生:舞夢君をからかうために?


清少納言先生は、なかなか、からかい上手だ。

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