第8話正月七日
清少納言先生:少し中宮様のお話から離れて、正月七日のお話です。
舞夢 :はい、そのまま現代語訳で。
7日、消え残る雪間から、若菜を摘んできます。
とにかく青々としていて、普段の日などは、そういうものを直接には見ることもないので、御殿の中では大騒ぎになるのですが、それがとても楽しいのです。
白馬の儀式の見物のため、宮仕えをしていない家庭の女たちは、車を美しく飾りたて、宮中に見物に出かけます。
待賢門の敷居を通る時などは、車が少し揺れます。
車に乗っている者同士が頭も揺れてしまい、ぶつかって飾り櫛も落ちてしまうとか、折れてしまうとかして、みんなで大笑いするのも、なかなか面白いのです。
建春門の左衛門の陣の周りは、殿上人が大勢立っています。
その人たちが、舎人の弓を取ってしまい、ふざけて馬を驚かして笑ったりするのですが、それを牛車の簾の隙間から見ていたところ、主殿司や女官たちが行き来していて、なかなか、それにも風情を感じます。
本当に、どれほどの幸せ者が、宮中をわがもの顔にふるまっているのかなあと思うのですが、実際は、ほとんど見られる範囲は狭いものです。
舎人もお化粧をしているのですが、地肌があらわになっている部分もありまして、それが真っ黒で、白粉の行き渡らない部分などは、雪がまだらに消え残っているような感じで、かなり見苦しいのです。
それから馬が時々跳ねて騒いだりするのも、かなり怖いので、どうしても車の奥のほうに引っ込んでしまい、結局はよく見えません。
清少納言先生:まあ、そんなところです。
舞夢 :ほぼ現場実況ですね。
晴れやかな儀式ですがなかなかユーモラスで(笑)
清少納言先生:車の中から見ているだけの私たちは、そんなものです。
舞夢 :ただ、こういう実体験の話は、私たち後世の人間には貴重です。
清少納言先生:じゃあ、書いておいて良かったかな。
舞夢 :はい、この時代の記述としては、一番スッキリとしています。
清少納言先生:ゴチャゴチャと飾りすぎた文が嫌いなの。
舞夢 :先生の文は、短いようで深い意味と雅を感じます。
清少納言先生:そういうところだけは、上手になってきました。
お世辞を言われたところで、また、明日、ごきげんよう!
清少納言先生は、ニッコリと今日の講義終了を宣した。
※用語
○七日:正月七日を人日(じんじつ)と称し、七種類の菜の熱い汁物を食すれば万病を免れるとされた。
○白馬の節会:正月七日、朝廷で行われた儀式。馬は陽の獣。青は春の色であることから、それを見ると年中の邪鬼を除くという故事によったもの。左右馬寮の白馬21頭(毎年左右の馬寮から10頭ずつ、隔年交代で領馬寮から1頭の余馬)を進め、天皇がご覧になり、後に宴を賜わう。
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