第7話中宮定子の出産と行啓(3)
清少納言先生:そのまま現代語訳で、結構です。
舞夢 :はい、それでは・・・
私(清少納言)は、同じ局に住む若い女房達と一緒に、何も気を配る余裕もなく、とにかく夜半のことで眠くて仕方がなかったので、とうとう皆で眠り込んでしまいました。
私たちの局は、東の対の屋なのですが、その西側の廂の間でした。
そこは、北の間にも続いていたのですが、とにかく疲れていたし、眠かったので、隔てとなる奥障子に懸金がないことを確認しなかったのです。
ところが、本来のこの家の主人の成昌が勝手を知るだけに、開けてしまったのです。
その上、「そちらへ、お伺いしてはいけませんか、そちらへお伺いしてはいけませんか」なんて、何度もしわがれ声で言うものだから、つい目を開けて見ると、確かに几帳の後ろの灯台の光が声のする方向を明るく照らしています。
成昌は、障子を五寸ぐらい開けて、そこから声をかけているのです。
これは、なかなか面白いことでね、
まさかお堅い成昌がこんな色好みをするなんて、夢にも思っていなかったので。
まあ中宮様が自分の家にいらっしゃるので、気も大きくなったのかしらと思うと、それが面白いのです。
清少納言先生:はい、今日はそこまででいいですよ。
少しずつ、スムーズになってきました、まだまだですが。
舞夢 :はい、恐れ入ります。
なかなか、こういった生活が、今の社会とは違いまして・・・
清少納言先生:まあ、それはそうね。
舞夢 :成昌様のこれは、精一杯の愛嬌ですかね。
清少納言先生:まあ、色好みが半分当たり前の社会で、
何も声をかけないのも失礼とか思ったのかな。
舞夢 :まあ、家の本来の主人ですし、ホストですよね、今風に言えば。
清少納言先生:そのまま美しい女性達を寝かせてしまうのも、味気ないかなあ。
舞夢 :何がどうなるってことでもないけれど、お話の少しぐらいはですね。
清少納言先生:まあ疲れていても、少しでも声をかけてもらえると、うれしいかな。
舞夢 :そんなものですかねえ・・・勉強になります。
清少納言先生:それが、風雅な男女ってものなの。
どんな状態でも、風雅を忘れないというのは、なかなか難しい。
「お堅い成昌でさえ、それをしたんですよ」クスクス笑いの清少納言先生であるけれど、からかわれ役を引き受けている成昌があって、この段が成立している。
道長にひどい扱いをされようと、風雅の心は忘れない。
そんな心意気を感じさせる記述が続いていく。
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