第14話 不幸を幸福への承

起。


俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。


「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」


と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。福の神のおかげで、俺にも久野文香という彼女もできた。そして、俺の不幸との戦いが始まった。


承。


「よし! コンビニで万引きしてやる!」


俺は、コンビニで万引きするために、入り口の自動ドアを開けた。


「おめでとうございます! ご来店100万名さまのお客さまです!」

「え!? え!?」


万引きするはずが、ご来店100万名さまのお客さんになってしまい、コンビニの店長から、豚まんをもらった。


「ちょうど、お腹が空いてたんだ! パク、モグモグ、おいしい!」


俺の負の行い、不幸は幸福に転換される。レンタル福の神、福ちゃんと出会ってからだ。不幸のどん底だった俺の人生に、幸せが憑いてきた!?


転。


「もっと! もっとだ!」

「なにが?」

「不幸が足りない!」

「俺に不幸の被害にあえというのか!?」

「違う、貴様の不幸は幸福に転換されるんだから、ダメージは受けないだろう?」

「あ、そっか。」

「コンビニで万引きとか、しょぼいのじゃなくて、もっとスケールの大きな不幸で、私を満足させてみろ!」

「なんちゅう、福の神だ・・・。」

「不幸の味は、蜜の味さ!」


または、他人の不幸ほど、おもしろいものはないのである。


「仕方がない、私が福の神の初心者である貴様にレクチャーしてやろう。」

「レンタルのくせに、偉そうに・・・。」

「いいね! 楽しみが無い! 笑顔も無い! その他人を、ひがむ根性がより強い不幸を呼び寄せるのだ!」

「福の神が、俺の不幸で遊ぶな!」

「次の不幸、行ってみよう!」

「聞いてない・・・。」


福の神が自分勝手でもいいじゃないか。


結。


「ここは・・・病院?」

「さぁ、貴様。不幸を呼び寄せろ。」

「呼び寄せる?」

「貴様は、不幸製造機・・・いや、不幸の掃除機だ。」

「不幸の掃除機って・・・。」

「見ろ! 貴様に風邪、熱、ガン、お尻が痛い痛い病など、全ての病気が不幸として、貴様に集まってくる。」

「ウワアアアア!?」

「今、この病院の不幸が貴様に集まっている。」

「ゴホゴホ、あ、熱い、フラフラする・・・。」

「今、貴様の体は病院中の病に侵されている。貴様の不幸を呼び寄せる能力の高さだ。本来なら、とっくに病にかかって死んでそうなものなのに、死んでない・・・。バカは風邪を引かなかったから、病院に来ることも無かったのか・・・、それはそれで不幸だ。」

「バカで、不幸で悪かったな。」

「で、貴様に集まってきた病気を、福の神である私が食べる。おいしそうだ。」


ゴクン、とツバを吞み込んだ。そして、俺にまとわりつく不幸を、素手で優しくつまみ、自分の口に、あ~んと入れて、ゴクンと食べてしまう。


「おいしい!」

「俺の不幸を、おいしそうに食うな!?」

「生死をかけた不幸というのは、コンビニの万引きとは、一味も二味も違う、なんて、おいしいんだ!!!」

「福ちゃん、本当に福の神なのか・・・?」

「どういう意味だ?」

「本当は、悪魔なんじゃ・・・?」

「バカ野郎! 誰が悪魔だ! これでも、れっきとした、かわいい福の神だ!」

「絶対、嘘だ・・・。」

「貴様、周りを見てみろ。」


俺は、周りを見た。不死の病も治り、植物人間も目を覚まし、病院から病人は消え、人々の笑顔が溢れていた。病人のいなくなった、病院が幸福なのかは知らない。


「不幸が幸福に変わってる!?」

「貴様の不幸は、私が頂いた。だって、私は福の神!」


作品は、書きながら考えるので、作品の進展・盛り上がりに、かなりのズレがある。普通なら、福の神の登場シーンからの、この話に飛ぶと良いのだろう。


つづく。











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