第13話 不幸を幸福への起
起。
俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。
「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」
と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。福の神のおかげで、俺にも久野文香という彼女もできた。そして、俺の不幸との戦いが始まろうとしている。
承。
「いくぞ! 銀行強盗!」
俺は、勇気を振り絞って、銀行の入り口の自動ドアを開けた。
「痛い!?」
銀行の中から出てきた、男とぶつかってしまった。俺はふっ飛ばされて倒されてしまった。
「な、なんだ!?」
俺とぶっかって倒れてしまった男に、銀行員や警備員が飛びかかり取り押さえる。
「いや、ありがとうございます! お客様のおかげで銀行強盗を逮捕することができました。本当にありがとうございました。」
「いえ、当然のことをしただけですよ。アハハ。」
俺が銀行強盗をしに行けば、銀行強盗が捕まるのだった。
転。
「貴様の不幸、私が頂くよ。」
これが福の神の決めゼリフである。
「本当に銀行強盗をしに行って、銀行の支店長に褒められて、警察から感謝状までもらってしまった!?」
「貴様の不幸は、福の神の私が憑りついているので、幸福に転換されるのだ。貴様が不幸なことをすれば、するほど、この世界に笑顔が溢れるということになるのだ! ハハハハハッ!」
「福の神がすごいのか? それとも俺の不幸が強すぎるのか?」
「強い不幸も、私の大好物だ。甘辛くておいしいぞ。」
「俺のリエの呪いは、10年物だからな。子供の頃から、オカマ、男女、リエちゃんと散々いじめられてきたからな・・・ワインのように熟成されているのかな?」
「貴様、本当に不幸の連続だったんだな~、これじゃあ死のうと思うのも無理はない!」
「だろ!? 俺が死にたくなる気持ちも分かるだろう。」
「死のうとしたのが1月1日で良かったな。おかげで貴様には福の神が憑いているぞ。彼女もできたし、これから貴様の人生は、これから幸福のフィーバータイムだ!」
「おお!」
生きてて良かったね。
結。
「貴様には、これからも不幸がたくさん降り注ぐだろう。星の数ほどの不幸も私が振り払ってやろう。だって私は福の神だから。」
「福ちゃん、なんか言った?」
「いや、何も言ってないが、貴様に一つだけ言っておくことがある!」
「なに? 改まって?」
「私はレンタル福の神だから、レンタル期間は1年だけ、今年の大みそかにはいなくなる。」
「そんなの嫌だ! セクハラできないじゃないか!?」
「そっちか・・・。」
「貴様には、私がいなくなっても、一人で強く生きれるようになってもらう。」
「弱いままでいいです!」
「人生は不幸の連続だ。貴様は、特にな。だから不幸と戦えるように、死のうなんて思わなくていいように、強くなってくれ。」
「嫌だ。」
「バカ野郎! それでも男か!?」
「実は、リエちゃんって言うんです。エヘ。」
「こういう時は、オカマになるのか・・・。」
「はい、リエちゃんって呼んでね。」
「オエ~、気持ちわるう!」
「なんか、嫌だな。」
「え?」
「うまく言えないけど、不幸と戦って強くなるって、福ちゃんとお別れするために強くなるってことだろ? 俺、そういうの嫌だな。」
「貴様・・・。」
「だって・・・福ちゃんに触れなくなる!」
「こら! 私に飛びつくな!」
こうして、俺と不幸の戦いが始まった。
つづく。
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