第2話 起承転結の承

起。


俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。


「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」


と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。


承。


「クソ! 俺は男として、飛び降りる勇気はあるのに、死ぬこともできないのか!? これもきっと、リエという女の名前のせいだ! リエの呪いに違いない!」


光リエが、頭をかきむしりながら、不幸を呪っていると、


「クスクスクス。」


どこからか笑い声が聞こえる。俺が死ぬこともできないのを、バカにして笑っている女がいる!? これもリエの呪いだ!?


「誰だ!?」


俺は、声のする方向へ振り向いた。それは上空だった・・・!?


転。


「こんにちは。」


上空に女が一人いた。空を浮いて立っているのである。


「おまえだな! 俺が学校の屋上から飛び降りても死ぬことができずに、不幸を呪っているのを笑っているのは!?」

「・・・。」

「俺が男のくせに女の名前だとバカにして笑っているんだろ!? おまえはリエの手先か!?」

「・・・。」


俺の被害妄想に恐れをなして、女は一言もしゃべらない。それどころか、俺を見て、コイツ困った奴だな・・・、私はこんな奴の相手をしないといけないのか? という表情をしている。


「おい、オカマ。」

「誰が、オカマだ。」

「言いたいことは、終わったか?」

「お、おお。」

「それでは、こちらの番だ。まず、上空に女の子が浮いていたら、そこをツッコムだろうが!? なぜそこに触れないんだ!? おかしいと思わないのか!?」

「え? リエの手先なら、空ぐらいは飛びそうだから。アハハハ。」

「はぁ・・・、さらに妄想癖もあるときた・・・、なんという不幸の塊なんだ。」


ガッカリして、俺のことを不幸の塊という女に、少しづつムカついてきたの、言い返してやるという気持ちが生まれた。


「あ、少しだけいいことがあったぞ。」

「なんだ?」

「イチゴのパンツが見れた。」

「なぁ!? 見たな~!」

「スカートを履いて、上空に浮いているのが悪いんだろう。」

「女の名前のくせに性欲はあるのか!? このオカマ野郎! 殺してやる!!!」

「ギャアアアア!」


俺は、ボコボコに殴られて血を流し、生と死の狭間を彷徨った。ああ・・・やっと死ねる・・・これで不幸ともおさらばだ・・・。


結。


「それにしても、素晴らしい被害妄想だ。こんな不幸製造工場は、今まで見たことがない。」

「お褒め頂きありがとう。」

「誰も褒めてない。」


そして、俺は、ついに核心に触れる。


「おまえは、いったい何者だ!?」

「遅い。聞くのが遅い。」

「すいません。」


不幸で自分に自信のない俺は、この口の悪い女には、無意識に勝てないと感じ、素直に謝った。


「私は、福の神だ!!!」

「え?」


俺は耳を疑った。この偉そうな女、自分のことを福の神と言ったのだった。


つづく。






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