第9話 9 ニューうさピョン

壁を1枚挟んで、妹のブッコの部屋がある。ブッコは、ログインして、脳波ゲーム「渋谷EEGgames」の世界にいた。ブッコのゲーム中のアバターは、ウサギの着ぐるみパジャマの「うさピョン」。武器も初期装備のソード。着ぐるみパジャマと武器の性能は大したことがなかった。捕獲できたのも雑魚キャラの「渋谷の栄養満点カラスとネズミ」だけだった。これでは、とても強いとは言えなかった。


「フフフ・・・。」


それは、今までのことだった。ブッコから自信が満ち溢れていた。


「私は生まれ変わった。」


白ウサギの着ぐるみパジャマから、最先端な流行ファッションに身を包んだ「ニューうさピョン」がいた。これが学校の帰り道に寄り道して、109に行き、ガラガラ抽選会の金賞、109特製のレアな着ぐるみパジャマである。


「新しい、うさピョンのカワイイを見せつけてやる!」


白うさぎのうさピョンが、靴はカワイイ、ファー付き美脚ブーティ。上は、今年も流行のミリタリージャケットは、激しい戦闘で着崩れする感じがカワイイらしい。下は、グレーのチェックのカワイイ、ショートパンツを履いている。靴下は、かわいいリボン付きニーハイソックス。アクセサリーは、かわいいタッセルチャーム付き2連ネックレスを装備。うさピョンのかわいい丸い尻尾には109と書いてある。


「カアカア!」

「チュウチュウ!」


雑魚キャラの渋谷の栄養満点カラスやネズミを一刀両断。一撃で撃破した。能力値は、攻撃力、防御力、スピードなどのステータスは、軒並み現状の渋谷EEGgamesの限界値を遥かに超えている。これはチート行為ではなく、レアな着ぐるみパジャマの性能である。


「すごい!? これが私の・・・ニューうさピョン!」


ブッコがレアな着ぐるみパジャマを着た、うさピョンの性能に驚いていると、今日ボスの織田信長が出てきた。


「出たな! 織田信長! 」


普通のうさピョンでは、兄に頼り切っていて、全然レベルの上がっていないブッコのアバターでは、今日ボスの織田信長には、勝つことができなかった。


「レアな着ぐるみパジャマを着た、うさピョンなら、勝てるかもしれない!」


勝てる可能性を感じたブッコは、神経を集中させる。スペシャルウエポンを使おうとしているのだ。


「ああ~! いけ! 福袋! ・・・? ・・・!? 福袋!? 福袋!!!」


ブッコは、レアな着ぐるみパジャマを着て、初めてスペシャルウエポンが出るように念じ、脳波を送った。そして、出てきたスペシャルウエポンの福袋を織田信長に投げつけたが、さすがのブッコも、ふざけたスペシャルウエポンに唖然とし、疑問を感じ、どよめいた。


「YOU WIN」


織田信長を倒し、画面には、勝利の文字が表示された。


「勝った、私、勝ったんだ~♪ 初めて今日ボスに勝てた~♪ わ~い~♪」


ブッコは、兄の力を借りずに、自分だけの力で、初めて今日ボスの織田信長に勝てたことがうれしかった。福袋がスペシャルウエポンで、福袋を投げつけたことは忘れていた。


「よし! 織田信長を狩りまくって、捕獲するぞ~♪」


普通の女の子、ブッコの脳波は脳の動きが活発になり、血管が切れるのではないかというくらい最高潮を迎えていた。ここに着ぐるみパジャマのゲームマスター~♪ が誕生したのである。


「zzz。」


結論、ブッコは、疲れ切って眠ってしまった。眠るまで109回も今日ボスを倒し続けたが、1日5捕獲までという今日ボスの在庫制のため、夜中には、どれだけ倒しても織田信長を捕獲することはできなかった。「お肌のために、早く寝てね。」という運営の優しさである。


「うさぴょん~♪」


ブッコは、寝言を言っていた。その顔は、充実感に包まれていた。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る