カインへの呪い

しばらくたったある日。


「やぁ神様だよ。カインくん、弟のアベルくんはどこいったか知ってる?」


「……知りません。俺は弟の番人ではないので」


「……こ、この男の目……養豚場の豚の餌を見るかのような冷たい目だ……残酷な目だ……!まるで『弟殺しちゃったけど神様の前だから嘘付いとこウェーイ』って感じの!」


「なんでそこまで分かるんですか」


「カインくん、お前さぁ、なんてことしちゃったのよ。いいかよく聞け。お前の弟の血が、その土地から私に叫んでいる。今や、お前はその土地に呪われている。その土地は口を開いてお前の手から弟アベルの血を受けた。それで、お前が土地を耕しても土地はもはや、お前のためにその力を生じない。お前は地上をさまよい歩く漂流人となるのだ」


「そんな!でも俺の咎は大きすぎて担いきれません!ヤハウェの御顔から隠れ、地上をさまよい歩く漂流人となるなんて!それに土地を呪った犯人として俺とエンカウントした人間はもれなく俺を殺すため殺人を犯すでしょう!」


「あ、確かに。うーん。君に罪を着せたら、他の人間が罪を犯すかもしれないってことか。どうしよ」


ヤハウェよ!ご決断を!なんならオーディエンスとかテレフォンとか使っていいですから!」


「何?クイズ番組なの?えーっと、こうしよう。『カインを殺すものは誰であろうと、七倍の復讐を受ける』ってルールをつけたらどうかな」


「なるほど!それなら俺を殺そうとする人間はいませんね!」


「もっと褒めてー」


「図に乗るな。とりあえずエデンの東、ノドの地に住ませてもらいますね」


「ええ…………」








ここで豆知識。察した人も多いかもしれないけど、「罪を着せる」の語源について説明するね。あくまで一説だからアテにしないでね。


前に「神様の前に姿を現すときは衣を着なきゃならない」って言ったよね。


衣を着るようになったのはアダムとイヴが禁断の果実を食べるという罪を犯したからだね。


つまりそういうこと。罪=衣なんだ。だから「着せる」という表現を使うようになったとか。





次回からはカインの子孫の話をするよ。カインくんは漂流人になるはずだったのにエデンの園に定住するし、次の話では調子に乗って町を建てるよ。カインくん開き直り方が半端ないね!

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