神の贖い

「そういえば女さんの名前って決めてないっスね」


「そういえばそうね。適当につけてよ。最高に可愛いやつ」


「矛盾してません?まぁいいっスけど。そうだなぁ……『イヴ』なんてどうスか?」


「気に入ったわ。褒めてつかわす」


「有り難き幸せ。ついでに自分にもつけて欲しいっス!」


「じゃあ『アダム』で」


「かっこいいっスね!」


「おーいお前ら!神様の登場だぞー!」


「あ、神様だ」


「神様ね」


「ん?二人して嬉しそうじゃん。何かあったの?」


「ああ、さっき妻とお互いに名前をつけてたんスよ」


「そうなのよ」


「へぇ。どんな名前?『トモANDテツ』とか?」


「そんなお笑い芸人みたいな名前じゃないっス!」


「そうよ。二人揃って……」


「「アダムとイヴでーす!」」


「(芸人っぽいじゃん)へー。まぁいんじゃね。それよりお前らに良いお知らせと悪いお知らせがあるよ」


「じゃあ良い方だけお願いするっス!」


「両方聞けよ。良い方の話からするね。お前らにプレゼント。はいこれ」


「なによこれ。皮?」


「衣っぽいっスね」


「お前ら前に植物で衣作ってたでしょ?だから上位互換をプレゼントしようと思って」


「いいわね。着心地も布面積も植物より遥かに上だわ!」


「今後私に会うときはそれを着るように」


「てことは、自分ら、神様に近づく時は動物を殺して皮を得なきゃならないんスか?」


「そうだね。罪ある人間が聖なる私に近づく時は犠牲を伴わなければならない、っていう訳よ」


「エグいっスね」


「で、悪い方のお知らせってなによ」


「出てけ」


「はい?」


「お前ら、楽園追放」


「ひどない?」


「酷くない。これは私なりの優しさだよ。もし間違っていのちの木の実を食べたら永遠に生きなきゃならないんだよ?罪を持った状態でそれは永遠に苦しむことと同義だからね」


「自分達、いのちの木には近づかないっスから!働きたくないんス!」


「ダメ。前科あるんだから信用できませーん」


「うげー」


「うげーじゃない。ほら、出てった出てった」


「やだなぁ。働きたくないっス……」


「仕方ないでしょ。追い出された以上自分達の力で糧を得なきゃならないんだから。ほら、仕事しなさい!」


「鬼っス」









ふー。やっとあいつら追い出せた。それにしてもちゃんと上手くやってるかな。心配だから覗いちゃおう。


ふむふむ。人はちゃんと土を耕してるね。感心感心。


でもまたいつ神様の臑を齧ってくるか不安だな。「仕送りが足りねーんだよ!」とかクズ大学生みたいなこと言われかねん。そしたら楽園にこっそり侵入してくるかもしれないな。


じゃあエデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣でも置くか。そうすればいのちの木に近づけないだろう。


はい、設置完了。なに?ケルビムって何かって?私の御座にいる天使だよ。詳しくはまた今度ね。


次回からはそうだなぁ。人間にもたらされた呪いに焦点を当てようかな。

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