人の堕落

「モグモグ。フルーティで結構美味しいっスね」


「なんでこんな美味しいもの食べさせてくれなかったのかしらね」


あーあ。二人共食べ始めちゃったよ。


「……ん?よく見たら女さん、裸じゃないっスか!」


「キャッ!って、男も同じじゃないの!」


「キャッ!」


「うわキモ」


二人は自分たちが裸であることを知ると、急に恥ずかしくなったのか彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちの腰に巻いた。


うーん。これはいけないな。ちょっとお説教しなきゃ。


私は散歩をしている振りをしながら園に近づいた。


「おーい。男と女ー!どこいったんだーい」


すると園の木の間から人の声が聞こえた。どうやら隠れていたらしい。


「あ、神様。チョリーッス」


「ああ、うん。ところで何でそんなところに隠れているの?」


「いや、その、裸だから恥ずかしくて」


「君たちが裸だということを私は教えてないんだけど。……もしかして、禁断の果実食べた?」


「ギクッ」


「男~嘘つくの下手ね~」


すると男は言った。


「こ、これは違うんス!この女が自分に無理矢理食べさせたんス!」


「はぁ!?なに責任転嫁してんのよ!」


「まぁ君たちがあの木の実を食べたのは分かった。……で、女。何か言うことは?」


「あの蛇!あの蛇が私に食えって強要してきたの!」


「ええ……」


「なにこの責任の押し付け合い」


これは酷い。コイツらにはキッチリと罰を与えなくては。






コイツらは禁断の果実を食べたから死んだよ。死んだ、と言っても肉体的じゃなくて霊的に死んだんだ。


その結果、彼らの中に恥が入り込んだ。だから裸を恥ずかしがったんだね。


ちなみにこれが宗教の始まりだよ。人間の罪(神に背を向けること)から来る恥を、自分の行いによっておおい隠そうとする試みだからね。


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