#8 行間
一説によれば、人生には数え切れないぐらいの選択肢があるのだと言う。
選ぶルートによって、その後の運命が変わってしまうような岐路があるらしいのだ。
しかし、その内の殆どが及ぼす範囲の小さい、些細で大した事の無いものなのだけど、いくつかは絶大な変化をもたらすものらしい。
所謂バタフライ・エフェクトと呼ばれる類のもの。或いはカオス理論と定義される曖昧なもの。
言葉の敷居を下げ、馴染み深い言葉で表せば、風が吹けば桶屋が儲かるで問題ない。
が、日常に於ける微々たる選択の積み重ねは確かに人生を変える。
オレは少ない人生経験の中で実地研修したから断言出来る。
とどの詰まり、何を言いたいのかといえば、神無月に会ったこと、コーヒーを切らしていたこと、その他諸々の行動はオレの人生を変えうる可能性を持った因子であったということ。
オレがこの日、公園に行ったのもひょっとすれば運命の女神様の気まぐれだったのかも知れないということ。
まぁ、『運命』なんて大袈裟な言葉を使うと、さも大事で大仰なものの様な気がするけれど、たがかオレ個人、一人の少年の人生の角度が微妙に転換しただけだ。
或いは、オレ以外の誰かの運命も変えてしまったのかも知れないけど、それを考慮し、合算した所で高が知れてる。逆に控除したって構わない位に微々たるレベル。
地球上に何十億と住む人間の内の幾らかの小さな人生。誤差の範囲内。世界全体の歴史と社会の総和からすれば変わってないに等しい。
斑目司としては大事件のつもりだって、縮尺と視点を変えてみればそんなもんだ。
そうすれば少し救われ、気も紛れるのかも知れない。
故に僕はこう思い込むことにしよう。
この日『僕』が体験したことなんてそんなもんさと自分に言い聞かせた。
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