蛇の月 十日

 あの夜から三日が経った。

 この飯場は、少し変わった。

 ただ自分だけが儲かればいい、他の奴なんざ全員騙して捨てるだけのゴミだと全員が思っていたが、今では何とはなしに皆が少しずつ協力しあって仕事をしている。

 ギャリーはより一層仕事に精を出すようになった。俺がここをリードするんだ、俺はヒーローになるというのが口癖だ。

 ボルティスも、もう他人に絡まなくなった。相変わらず不愛想ではあるが、危険な仕事を何も言わず自ら買って出ている。今では少しずつ頼られる兄貴分としての地位を確立し始めたようだ。今度、サシ飲みに誘ってみよう。面白い話が聴けるかもしれない。

 バルドも少しずつ周囲と打ち解け始めた。あいつも最後には加わったし、やはりあのインパクトがでかかったのだろう。でかかったもんなあ、バルド。嬢もびっくりしていたが流石熟練ということか、何とかなった。そういやあいつのそんなとこ見たことなかったもんな。そんな事にも気付かないとは、俺もまだまだだ。


 俺も、少し変われた気がする。きっと上手く行く。俺達は、もう少しマシになれるはずだ。

 何か忘れている気もするのだが、きっと些細なことだ。俺達にもう怖いものは何もない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る