エピローグ〜未来へ〜


 拝啓、お父さん、お母さん

 お元気にしていますか。結婚式以来会えていませんが変わりありませんか。1年前に秀斗が皇帝に就任してから毎日が忙しくて、でもとても充実した日々を過ごしています。

 時間が出来たら会いに行きます。お二人も時間があったら会いに来てくださると嬉しいです。 敬具



 机に向かって両親への手紙をしたためていた風華はひとまず最後まで書き終えると一つ息を吐いた。

 あの運命の日からもう2年が経とうとしていた。あの日から炎帝国は大きく変わり、そして本当の意味で一つになった。

 1年前に秀斗が皇帝に就き、白玉が補佐についてから国内は安定し、外交においても紫翠や奏の力で目覚ましい発達を遂げていた。紫翠とは色々とあったが、秀斗と紫翠は姉弟だ。お互いの気持ちはしっかりと繋がっていた。

 そして秀斗が皇帝となった日と同じ日。風華は秀斗の妻となった。

 今は皇妃として忙しく公務の日々を送っている。

「失礼いたします。風華皇妃、珠麗皇女がお会いにいらしております」

「通していただけますか」

 珠麗とも相変わらずだ。

「最近お兄様の様子がおかしくて何かと思えば、私の恋人のことが気になって夜も眠れないそうよ」

 珠麗も、光の娘という檻から解き放たれ、伸び伸びとした生活を送っている。秀斗との婚約も破棄され、最近は初めて心から慕える人物と出会ったそうだ。

「私、絶対に幸せになりますわっ」

 頬を赤らめてそう言う彼女の笑顔は、自然と風華を笑顔にした。


 そして日も暮れた夜。

 この日の公務を終えた風華は外の空気を吸うために縁側へと出た。

 本当に色んなことがあったが、今は心から幸せだと思える。こんな日が来るとは、昔の自分、闇の娘だった頃には想像もしなかった。

「何を考えているの?」

 その時、ふと後ろから温もりが風華を包み込んだ。

「・・・少し前のことを思い出していたの。もう2年前なんだなって」

 風華のその言葉に後ろから風華を抱きしめていた秀斗は目を閉じた。

「そうだね」

「秀斗が皇帝になってから、この国は良くなっていった。だから私も頑張るよ。だって、私は秀斗のお嫁さんなんだもん」

「うん・・・」

 風華の言葉一つ一つをこぼさないように、秀斗はじっと風華の言葉に耳を傾けていた。

「風華が隣にいるだけで、俺は十分幸せだよ。これからもずっと、命が燃え尽きても君を離しはしない」

 少し力が込められたその手に、風華は自身の手を重ねた。

「ありがとう」

 この温もりがあったから、自分は今ここにいる。彼が手を離さないでずっと繋いでくれたから、こうして生きている。

 これからも秀斗の隣で共に歩んでいく。

 雲の間から覗いた満月の月はその神々しい光で2人の姿を照らし出した。



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