第七宴

「一言に『骨拾い』と言っても様々だ。だけれどボクにそれを頼むって事は跡形も無く消してしまって良い▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪って事だね?」

「えぇ良いわ。裏切った者に掛ける情けはもう無いもの」

「解った、だけれどユキちゃん自身は▪▪▪▪▪▪▪▪それで良いのかい?」

「! …………仕方、無いでしょう……あの人は裏切り者で、私は嫌われたのだから……」

「ふぅん? 嫌われたと思い込むのにはまだ早いと思うけどねェ?」

チャプンッと菱垣さんはカップの中の紅茶を揺らして眺めながら意味深に呟く。

「…………さァて助手ワトソン君、仕事に行こうか。卯月、露羅巍君にコールして?」

「え? あ、ハイ!」

「解りました」

「…………私は帰るわ、頭領連れて」

「それなら御老人は卯月に運んでもらいなよ、幾らユキちゃんでも大人の壮年男性を抱えて運ぶには無理があるだろう?」

「けれど流石にそれは……」

「何なら葬骨屋ココに泊まるという手も無いでは無いけれど?」

「…………それは御免被りたいわね……此処、骨だらけで犬小屋かお化け屋敷みたいに感じるんですもの」

「何気に酷いねェ?」

ケラケラと笑って菱垣さんが紅茶を飲み干すと卯月さんに頼んでおいた露羅巍さんへの電話に代わり、何かを話して電話を切った。

それに何か気付いたらしく癒斬邑が反応する。

「……ひがっちゃん若しかして…………彼に▪▪逢うつもりなの?」

「ん? うん、彼に頼むのが一番だろう? 何せ彼は人探しや案内役の申し子スペシャリストなのだからね」

「しかし彼は……」

「…………ユキちゃん。幾らキミでも彼を貶める事は赦さないよ? キミと同じく彼は▪▪▪▪▪▪▪▪ボクの友人なのだからね」

「う……それも、そうね…………」

癒斬邑が言い掛けた言葉を遮り、菱垣さんが笑顔で言葉を紡ぐ。ただそれだけの事に癒斬邑はビクッと身体を震わせた。卯月さんも珍しく硬直している──ただ僕だけが解っていない──菱垣さんはケラケラ笑って受話器を元に戻しているので、結局何で癒斬邑たちが硬直していたのかは解らなかった。

──……帰って来たら卯月さんにでも訊いてみようっと……

菱垣さんがパンッと鉄扇を拡げて口元を隠して告げる。

「さァ行こうか。助手ワトソン君はボクのお供。卯月はユキちゃんと御老人を送って?」

菱垣さんが笑顔で僕を手招きした。

「菱垣さん? どうしたんで……ッ!?」

「あっはははははははははははははは!」

どうしたんですか。そう訊こうとして菱垣さんに触れた瞬間何かに▪▪▪吸い込まれるように……いや実際に床に吸い込まれた。それも──菱垣さんと一緒に。

「…………行ってらっしゃいませ、梓潼さん、我が主……」

「…………流石に鳩慈霊君には同情するわ、彼に逢わなきゃいけない▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪なんて」

「え……ええぇぇぇぇえええぇえぇええぇぇぇえええぇえ!!!!????」

「あっはははははははははははははは! 元気にしてると良いねェ?」

──やっぱり此処でフェードアウト。

僕は暗い穴の底に堕ちながらそっと意識を手放した。

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