〜狂人たちのお仕事・番外編第弐狂〜
はい今回は本編は取り敢えず横に置いといて、番外編ッス〜(笑)
さてさてどんな咄を聴かせてくれるんでしょうかねぇ?✨
では不思議な狂人たちのお咄の始まり始まりィ〜(笑)
──お仕事其ノ壱:ほのぼのホログラム──
麗らかな春の日差しが机の上に影を作る。机の上に置いてある、真っ白な百合が癒しの楽園を作り上げるのに一役買っていた。
「ふぅ……」
今息を吐き出し汗を拭ったのは此処、『
「菱垣さァんまさか違うとは思いますけど、遊んで無いですよねェ?」
「…………
「骨喰ってらっしゃる!?(怒)」
「モグモグ……いやいやそんな馬鹿なァ〜? ボクに限ってそんな事無いよォ?」
「じゃあその手の中にあるモノは何ですか! そして片付いてる気が全くしないのは僕の感覚が可笑しいンですか!」
「ん〜? あれ? なんで骨を握っているんだろうねェ? いやボクも片付けたつもりなんだけれどね?」
「知るか阿呆! あれの何処が!?」
「あっはは〜……?」
片付け出来ないなら初めから言って下さい! と怒鳴って
ブツクサ言いながら梓潼は本来菱垣が片付ける筈だった場所を片付け始める。ボクはそれを見ながら梓潼が片付けた机に腰掛けて眺める。
──…………
鉄扇でぱたぱたと扇ぎながら物思いに耽る。
遠い昔……と言っても梓潼と出会う五年前の事だ。ボクが殺したも同然の存在……
「…………ん、さん……菱垣さんどうかしたんですか? 珍しくボーッとしてますが」
「…………………………え? あ、あぁ御免御免、少し考え事してたんだよ」
静かになった菱垣の事が心配になったのだろう梓潼が声を掛けてきた。菱垣が黙り込むなど早々無いのだから。
「具合が悪いなら寝たらどうです? 片付けは僕がやりますし、他の事も……」
「……あっはは〜大丈夫だよ、少し昔の事を思い出してただけだから」
「…………そうですか……」
「…………あっははははははははははははははははは! あ〜馬ッ鹿らしい! あ〜もうヤメだよヤメ〜物思いに耽るなんてボクもどうかしてたねェ?」
「…………はは、ですね?」
菱垣さんがいきなり爆笑して
「…………梓潼さん頼まれていたモノは買ってきましたが、何処に置いたら良いですか?」
「あ、卯月さん。野菜類は台所に、洗剤などは洗面所、本類は僕の机の上に置いといて下さい」
「あっはは〜。……卯月ィあの子が死んでから何年だったっけね?」
「解りました。……まる五年、ですね……」
「有難う御座います」
「そかそか〜まる五年、かァ……結構居なかったねェ?」
「どう致しまして。……です、ね……」
卯月は梓潼の指示通りに道具を置く。
暫くして片付けは大方終わり、後は書類整理くらいになった。
「菱垣さん片付け終わりましたよ……ってあれ?」
「? どうかしまし……ってあ」
「んん……」
梓潼の視線の先には猫のように身体を丸めてソファに横になる菱垣の姿があった。微かに寝息が聞こえる。
「菱垣さん、寝てますね……」
「お疲れでしたからね、連日梓潼さんが家事をしてる時とかにヤってましたから」
「え……じゃ、じゃあ『骨拾い』をした後に僕に心配させないように、っていつもみたいにしてたんですかッ?」
「心配させないように、っていうのもあるのかもしれませんがもっと別の意味もあったのかもしれません。……あまり自分の事を話す人では、無いですから」
「そう、ですか……」
すやすやと寝息を立てる菱垣に毛布を掛けて机上の書類を整えながら梓潼は菱垣を見る。
──…………普段ケラケラ笑って何も考えて無い様に見えるけど、本当は僕が思い付かない事をたくさん考えてるンだよなこの人は……
菱垣さんは滅多に考えてる事も過去も言わない。訊けばそれなりに教えてくれるけどそれはほんの触りの部分だけで、肝心の深い所までは教えてくれない。──例えば
「…………梓潼さん、少し一息つきませんか?」
「え? あ、はい」
卯月さんが紅茶をいれてくれる。僕らはそれを飲みながら一息ついた。何時もながら卯月さんがいれる紅茶や珈琲は美味しい。一体どういういれ方をしたらこうも美味しくいれられるのやら……。
「此処での生活に慣れましたか?」
「え? あ、ハイ。卯月さんのお陰で」
「それは良かったです」
卯月さんがふわっと笑い掛ける。
「そう言えば……」
「はい?」
「卯月さんっていつから此処に居るんですか?」
「私ですか? 私は三十年前から此処に住ませてもらっています。
「三十年前から……」
「そういう梓潼さんはどうなんです?」
「僕、ですか?」
「はい」
紅茶を飲み卯月さんが作ったお茶菓子を摘みながらお互いの過去咄に花を咲かせる。
「僕は五歳まで福岡の方に住んでたんです。それもド田舎に」
「福岡ですか? 自然がとても綺麗だったのでは?」
「綺麗でしたよ、空気も結構美味しかったですしね」
「福岡か……一度くらい行ってみたいですね」
「もし行くなら案内しますよ」
「んん〜…………何の咄だい〜?」
「あ、菱垣さんお早う御座います」
「お早う御座います」
「うん。おァよ〜」
二人で話していると菱垣さんが起きて来て予め用意されていたカップに口を付け、紅茶で喉を潤す。そしてそのままお茶菓子を摘もうとしたが、手を付ける前にハッとして手を引っ込める。
「卯月は相変わらず紅茶をいれるのが上手いねェ?」
「梓潼さんにも同じ事言われたんですよ」
「ですよね?」
菱垣さんが自分の机に寄り掛かりながら卯月さんのいれた紅茶を褒める。卯月さんはそれに嬉しそうに笑いながら返事をする。実際に美味しいのだ、卯月さんがいれた紅茶は。
「あっはは〜ボクもお菓子を食べれたら良いんだけどねェ? 身体が受け付けてくれないんだよね」
「紅茶を飲んで下さるだけでも私は嬉しいですよ。
「菱垣さんって
「卯月は堅苦しいねェ〜? ……そうだよ? 食べようとして口にしただけで、吐き出しちゃうからね〜」
「そうですかね?」
「それは災難としか……」
「あっははははははははははは!」
「いきなり爆笑しないで下さいよ!?」
そうして『葬骨屋』の日常は夜の闇に吸い込まれるようにして消えていった。
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