第伍宴
ヒュカッドガガガッガキィンッ!!
影で出来た日本刀と朱色に塗られた鉄扇が混じり交錯する。そのままギリギリ……ッと音を立てながら互いが互いを睨み合う。怖いのは両者とも笑っているのに目が笑っていないのだ。
──と、言うか菱垣さんアンタよく鉄扇のみで戦えるな……ッ!?
菱垣さんは鉄扇以外の武器を使わなかった。面倒臭いのかそれとも何か他の理由が──?
「あっははははははははははははは! あ〜…………馬鹿らしい茶番劇に付き合わせないでくれるかなァ?」
「ッ! なっ、に……ッ!?」
ザリィッと菱垣さんが地面の土を踏み締め一気に
「!? ガ、ハッ……!」
「ヤレヤレ背後がガラ空きだよ
「くっ……」
──知らなかった。菱垣さんってこんなに強かったのか……ッ?
菱垣さんは
「ボクはキミの下らない
「菱垣さん……」
初めて見た気がする、菱垣さんの真面目な所。しかし……
──見極めるって何の事だ?
「キミが
「なっ……私が無能だと…………ッ!?」
「えっ……」
「無能だろう?
「ッ……!!」
杼淹が口を噛む。その通りだ。
「それで? ボクの目的は今言った通りだけれどキミとしては違うんだろう? 此処までされといてまだボクに勧誘するかい? 生憎ボクはボクより弱い首領に尽くす気なんて更々無いけれどね」
「…………いや良い。此処まで自分が使えないとは思えなかった。勧誘は諦めて無いがどうやら今の私では無理だという事は理解出来たからな……」
「理解してくれたようで何よりだよ」
ニヤッと口元を三日月状に上げて鉄扇を口に当てて隠す。どうやら骨譟菱垣という名の
「餞別にそうだなァ……これでもあげるよ」
「ッ!?」
菱垣さんは僕がからってきたバックから骨を一つ取り出すとそれで男性の頭を殴り気絶させた。
──は!? いやいやいやいやいや菱垣さんアンタ何やってんの!? なんで和解したのに気絶させるんだよッ?
「いや〜面倒臭い御老人は寝かせとくに限るね〜? ……それに其処に居るんだろう、ユキちゃん?」
「…………貴方に見付からなかった、って事がありませんわね……」
「え? あっ……」
其処に居たのは僕が菱垣さんと会った日に常軌を逸した攻撃をしていた同年代の少女が其処に居た。今日も鮮やかな着物に身を包み、花が綻ぶように微笑んでいる。あの時とは似ても似つかない穏やかな笑顔だ。彼女は僕に気が付くと苦笑して少し頭を下げ、自己紹介した。
「あら貴方は……改めまして、名を
「え、あ……あぁ…………」
吃りながら癒斬邑緋莉と名乗った少女に頭を下げる。……横で菱垣さんがニヤニヤ笑っているのが凄くウザったい。帰ったら骨無しの刑に処そう。
「あっはは〜初々しいねェ? 所でユキちゃん、フォルゲートは何を頼みに来たんだい?」
「…………此処で話しても良いのだけれど少し込み入った話になるのよ……」
「???」
「そうかい。なら『葬骨屋』で話すのが一番無難だろうねェ……卯月其処の御老人を頼んだよ?」
「御意」
「有難う助かるわ……」
「あっはは〜御老人の骨は美味しく無さそうだから要らないかなァ〜代わりに何か別のモノを頼むよ、依頼を受けたら、ね?」
菱垣さんは鉄扇を口に当ててニヤリと狐じみた笑顔でそう言った。
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