出会いと狂人
第壱宴
凍てついた寒空とぬくぬくと温まれる炬燵が風物詩だった冬が終わりを告げ、桜やフキノトウを初めとした植物がニョキニョキと成長を始め出す温やかな春の日。
「あ〜……買えて良かった…………」
僕、
今は絶賛春休み中。宿題も課題も無くてのんびり過ごせるし、部活にも入っていないので学校が始まるまで、自由に
「後一週間、か……」
新学期が始まるまで後一週間。そろそろ読む本も底を付いてきたし……
ドガッシャ────────ッン!!
「ぅおわ……ッ!?」
「あっははははははははは!」
考え事しながら歩いていたらいきなり、頭上からガラスの飛び散る音が聴こえ、上から
しかも何故に爆笑しながら……?(汗)
「あっははいやァ残念だなァ? ユキちゃんはそんなモノだったのかい?」
「あらあら舐めてもらっては困るわ〜……ねェひがっちゃん?」
「あっははははははははは〜まァ仰る通りだねェ?」
ドガガガガガガガガガガガガガッ!!
にこやかな会話と共に繰り広げられる激しい戦闘。まるで普通の日常から逸脱したその行動は僕の度肝を抜いた。
「ボスがお怒りなのよ、此処らで死んで貰えるかしら?」
「え〜? 死んだら骨が喰えなくなるじゃないか、それだけは嫌なんだよねぇ〜……」
「あらァ……残念ね?」
拳銃とアレは……反り返って無い直刀で刃渡りが太刀ほど長く無いから、俗に言う『忍者刀』ってヤツか(?)を振り回しぶっ放している、俺とほぼほぼ
その質問に攻撃を避けて扇子(弾を弾いてる所を見ると鉄扇と呼ばれる類か?)で斬撃を防いでいる、着物姿の二十代の男性が笑顔で突っ撥ねる。
二人共整っている顔立ちなのに、言動は常軌を逸していた。
その惨劇の流れ弾が尻餅をついてボーッと眺めていた僕の所に飛んでくる。
「アッ……」
終わったな。
僕はそう思った。僕はあの流れ弾というヤツに当たって死ぬのだろうという事は簡単に理解出来た。
──最悪だ……ゴメン、母さん。どうやら親孝行をまともにする前にこの世を去る事になりそうです。今まで楽しかったよ、有難う。
そう今まで育て上げてくれた母に懺悔をして、目をギュッと瞑った。
が、何時迄も痛みは来ない。どうせ死ぬのなら苦しまずに死にたいのだが……
「あっはは随分潔く無いかい、少年? 人生は生きて然るべきだろうよ?」
「あらあら御免遊ばせ、一般人を危険に晒してしまったわァ……」
「ユキちゃん、周り関係無くぶっ放すのはオススメしないよ?」
「解っているわよ……コレは一時休戦ね、では失礼」
そう言うと少女は武器を袖に終い、サッと姿を消した。
それにケラケラ『ひがっちゃん』と呼ばれていた男性は笑いながら呆れた様に言った。
「あっははユキちゃんはせっかちだねェ〜」
「え、あ、あの……?」
呆然とひがっちゃんに声を掛ける。男性は今まで僕の存在を忘れていたらしく、笑いながら軽ぅく言う。
「あぁ御免御免、キミの存在を思わず忘れていたよ。キミ存在を消すのが上手いねぇ?」
「え、いやそんな事は……ってかなんですか、今の…………?」
「ン〜? 俗に言う『戦闘』ってヤツさ。キミはそれに巻き込まれた形になるねぇ?」
あっははと特徴的な笑いをしながら、男性は呆気無く簡単にサラリと言った。
「そうだねェ……取り敢えず此処を綺麗にしなくちゃね?」
ひがっちゃんは事も無げに言うと、扇子をパチンパチンッと開いたり閉じたりした。そして一言。
「あっはは〜……“
ひがっちゃんがそう呟くとほぼ同時に、ボロボロに壊れまくっていた街角の一角は一瞬のうちにして、元の小綺麗な風景に戻っていた。
「なっ……!?」
「よしお〜わりっと! 所でキミはこれから暇かな? 少年?」
「え、あ〜……割と暇、です、かね……?」
ひがっちゃんの真意が掴めず、曖昧な返事を返す。
それにニッコリと笑ってひがっちゃんは僕の手を掴むと簡単に言ってのけた。
「じゃあこれからボクとすこぉしお話しよっか! ボクのお店兼自宅でね?」
「へ? えぇぇえぇええぇぇえぇぇえええええぇぇえぇぇ!?」
「ほらほらLet's go!」
ひがっちゃんは半ば強引に僕の手を引いて歩き出した。
僕はまだ思っていなかった、コレが有り触れた日常からの逸脱である事を、そしてコレが普遍的な僕の日常をぶっ壊すモノであるという事を────……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます