狂人たちのお仕事
幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕
始まりの鐘は全てを告げる
第零宴
「あっはは〜まァた失敗したんだァ?」
「うるっさいなァ! ムズいンですよこの仕事!」
「あっははは〜まァ常人じゃ出来ない類の仕事だからねェ? まま、頑張って〜あっははははははははは〜」
「アンタはいい加減笑うの止めれ────────ッ!!」
ドンガラガッシャーンッ!!!
ある春の暮れ、辺りを揺るがすような大きな物音が響き渡る。住人たちはそれを聴いて『まァたやってる』と諦めた。
僕だって好きでこんな人の相手をしているんじゃない。コレは
寒々しい冬が終わりを告げ、暖かな日差しと温もりが辺りを照らすあの日、僕の普通な日常は狂人たちによって締め括られた──。
「あっはは何それ〜まるでボクがその狂人の一人だと言ってるみたいじゃないか? 折角キミを助けてあげたって言うのに、酷いものだねェ?」
「じゅうぶん狂人でしょうが、アンタも。普通の人は笑顔で笑いながら骨を齧ったりしませんよ……」
「なんでさァ? 骨は美味いよ、死ぬ時の感情が情緒に刻み込まれてる」
「…………これ以上言わないで下さい、晩飯が食えなくなりそうです……」
僕のモノローグに笑顔でツッコんできたのは狂人其ノ壱、
職業は葬骨屋と言う、訳の解らない仕事で暇さえあれば骨の標本を組み立てて遊んでいる、
見た目はそこそこイケメンな部類に入るのだろうが、本人の言動がこの上無く不信感を煽り立てる為、整った顔立ちも意味が無い。
それに──────……
「それになんだい? ほらほら早く言っておくれよ、愉しみで仕方無いじゃないか!」
自分の事を
「ボクは骨以外口にしないよ、キミらが口にするものはボクにとっては不味いゴミ以下だからねぇ……」
「ゴミって……」
本人の言では『口にしない』らしい。僕が食べているのでさえ、骨を齧りながらも見ようとしない有様だった。
と言うか……幼稚園児以下だろこの人。人の居る前で平然と骨を齧るし、血を飲むし! かと思えば食べ掛けの骨を僕に向けて投擲してくるし、危ないったらありゃしない! よく今まで怪我しなかったな偉いよ僕!
「あっははそこまで言われると流石のボクも照れるねェ?」
「誰も褒めてねぇよ!?」
「うんうんそかそか、イヤイヤこの年頃の若者は照れやすくてシャイでイケナイねぇ〜?」
「誰がシャイだこの変人!」
「あっははははははははは〜シャイじゃないか?」
「もう嫌だこんな人の世話係とか!!(泣)」
プルルルルルルルルルルルッ!
僕が泣き叫んだと同時に室内にある電話が一斉に鳴り響く。
その一つを菱垣はケタケタと悪魔じみた顔で手に取った。
「あっはは〜どうやら更なるお仕事の依頼のようだよ?
「あぁもう最悪だ……」
菱垣はいつもの調子で電話の受け答えをする。全くよくコレで客足が絶えないなこの人……。
「あっははやァやァお久し振りで! 何々今回はちゃぁんとボク好みのお仕事用意してくれたのかい?」
──コレは僕、
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