第13話 年の差と現実となにか。

「…………」

私たちは黙り込んでしまった。


年の差、分。

ということは

「あの……」

私は恐る恐る、タケルくんに聞いてみた。


「あれって、やっぱり……過去の記憶、なの?」

彼はうん、と頷いて

「そうだよ。ーーーあ、もしかしてまだ…そんなに知らないのかな?」

「うん、私はずっと同じような場面しか夢に出てこなくて。」


私の言葉に、タケルくんは目を細めた。

「……へえ、そうなんだ」

それから、彼は少し考えるように一点を見つめた後、

パッと笑顔になり、話を切り替えた。

「ま、そんなに思い出すことが良いワケじゃないしね。」


「じゃあ、お前は何でわざわざ会いに来たんだよ」

中空くんがボソッと呟く。

タケルくんは平然と答えた。

「そりゃ、可愛い妹に会ってみたかったからだよ」


ゲホゲホゲホッ

私はジュースが変なところに入ってしまい、思いっきりむせてしまった。

中空くんはポカンとしている。


タケルくんは私の方に向き直り

「……ずっと、夢で見ててさ。会いたかったんだ。」

「え……」

切なそうにこちらを見る彼の顔は本当に綺麗で。

思いがけずドキリとする。


「ふうん」

隣で中空くんは面白くなさそうにジュースを飲み干した。


「ところで。タクミ、大丈夫か?」

見ると間宮くんはまだ真っ青な顔をしている。

「……え?あ、ああ」

「顔色、悪いよ?」

私も心配になって、間宮くんに話しかける。


私は昨日も体験しただけあって、慣れたというか。

すぐに目眩は落ち着いたけれど。

きっと、間宮くんも驚いていると思う。


それにしてもーーー

あの、映像は。


「……悪い。俺、やっぱ帰るわ」

間宮くんは額を抑え、ゆっくりと立ち上がった。

「え、大丈夫?」

メイが心配そうに聞く。

「……ああ、多分少し横になれば治ると思うけど。この後少し予定もあるからさ」

そう言って間宮くんは席を外してしまった。


その背中を、タケルくんは静かに見守っていた。


「で、さくらは大丈夫なの?」

メイが私の方に振り返り、額に手を当てる。

「あー、うん。案外大丈夫だった」

「そう、また倒れたら大変だと思って」


「……また、って。倒れたの?」

タケルくんが私たちの会話を聞いて驚く。

私は簡単に、自分のことを話した。


小さい頃から同じ場面ばかりみていたこと。

最近、少しずつ別の場面が見えたこと。

でも、その『夢』をみた後はひどく疲れることーーー


中空くんとのことは、まだよく分からなかったし

言わずにおいた。


「…そうなんだ」

話を聞き終えて、タケルくんは納得したように頷く。

「俺はさ、小さい頃からしょっちゅう夢に見てたから。なんだか別の話の主人公になった気分で楽しんでいたんだけど」

人それぞれみたいだね、と最後に結論付けた。


中空くんは追加で買ってきたドリンクを飲みながら

素朴な疑問をぶつけた。

「この夢って、何か意味とかあんのかな」

「意味?」

私が首をかしげると


「……ほら、別に過去の記憶なんて普通知らなくて良いワケじゃん。それをわざわざ掘り起こしてみせるってことは……」

中空くんが言いかけた続きを、タケルくんが話す。

「彼らが伝えたい『何か』があったかも、とか?」

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