第11話 もう一人
その日の授業を終え、近くのファストフード店へ行く事になった。
教室を出て、廊下を歩きながらメイが言う。
「今日から新メニューじゃなかった?」
「あっ!さくらもちパイ!!」
思わずテンションが上がり、声が大きくなってしまった私を見て
中空くんは吹き出す。
「テンション上がりすぎて階段落ちるなよ」
「ちょっ、そんなこと無いってば!」
もう、と怒りたい所だけど
つい昨日落ちてしまった身では否定出来ない。
4人で階段を降り、校舎を出る。
校舎から正門までは、運動場を横切る形になるのだけれど。
「……ねえ、他校の子が来てる」
メイが遠くに見える門を指差して言った。
「メイって視力いいよね。他校ってわかるんだ」
私はボンヤリと見える人影を見ながら感心した。
少しずつ、距離が縮まるにつれて
『彼』の様子が見えてきた。
「……わあ、なんか可愛い男の子」
「え、どこか事務所の子とか?」
周りの生徒も、彼の存在に首を傾げたり
遠巻きに興味深そうに眺める様子が見える。
確かに、なんだか綺麗な顔した男子だ。
まだあどけなさがあってーーー年下だろうか?
そんな事を考えているうちに、校門までたどり着く。
すると、私たちの後ろを歩いていた間宮くんが驚いた様子で声を上げた
「……なんで……おまえがここに」
「え?」
私とメイは思わず振り返る。
間宮くんの、知り合い?
「やだなあ、間宮さんったら。そんな思いっきり嫌そうな顔しなくても」
「……ちがっ、お前」
間宮くんが焦ったように何かを言おうとするけれど
彼はそれを遮るかのように、私たちの方を向いた。
「ーーーひさしぶりだね、さくら」
「はい?」
私は意味が分からず、素っ頓狂な声を上げてしまった。
こんな可愛い子に久しぶり、なんて言われる心当たりがない。
「ちょっと!アンタの知り合いなの!?」
「いや、ちょっと待っ」
私が否定するより早く、彼はまた話し始めた。
「あれ、まだ知らないの?……おかしいなあ。間宮さんと会ってるならスグに思い出してるものかと」
彼はクスクスと笑いながら、私のすぐ近くに顔を寄せて
「じゃあ、自己紹介からしなくちゃねーーーハジメマシテ。俺はご覧のとおりまだ君たちより若い中学生だけど……遠い昔、君の兄『フリッツ』だったんだよ。」
「『!?』」
言ってることが、全く分からない。
何だろう、この子は何か俳優か何かで
どこかでドラマの撮影でもやってるのかしら。
それともーーーどこかにカメラが潜んでいて
ドッキリでした〜みたいな展開?
私はもちろんのこと、中空くんもポカンとしている。
ただ、間宮くんだけはーーー青い顔をしていた。
「はあ!?」
少しの間があって、中空くんが大きな声を出した。
「ちょっと待て、そんなバカな」
「そんな馬鹿な話があるわけないーーーと言いたいんだろうけど、残念ながら事実だよ。」
彼は話を続ける。
「俺がさくらを見てすぐに名前を言えたことからも推測できるだろう?ましてやーーー共通の知識が無い限り知る由もないはずの兄の名を呼ぶことなんて、誰ができると思う?」
「そんな……」
中空くんも言葉が見つからないようだ。
それもそうだ。
昨日、やっと私は中空くんと話をして、お互いの夢が共通しているんじゃないかと
認識したところだ。
そして今朝、間宮くんも仲間だと聞かされ
詳しく聞こうとしている矢先に現れた少年がーーー仲間だなんて。
「ちょっと、ねえ…どういうこと?」
メイが周りを見て不安そうに尋ねる。
彼女が一番、状況が分からないはずだ。
「……っっと、とにかく!ここは目立つし人の目もあるから」
私は働かない頭を無理やり絞り、なんとか場所を変えるという案に辿り着いた。
この際、間宮くんと彼
まとめて話を聞こうじゃないの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます