第9話 もうひとりの仲間

翌日。

体調はすっかり元通りのようだ。


帰宅後すっかり疲れて

部屋に入るなり泥のように眠っていたらしく

久しぶりに夢も見ず朝まで寝ていた。


母親が心配して起こしに来る。

「あら、起きてたのね。学校はどうする?」

案外ケロッとしている私の顔色を見て安心したようだ。

「行くよ。」


私はそう言って、何事も無かったかのように身支度を始めた。


昨日、保健室での話はとても驚いたけど

なんだか共通の話が出来る相手が見つかったという安心感の方が勝っているようだ。

また、彼と何か楽しい話が出来るんじゃないか。

そんな期待で、学校に行くのが楽しみになっていた。



家を出てすぐ

「さくらー!」

メイが後ろから走ってくる。


「大丈夫だった!?」

彼女には連絡もせずそのまま帰ってきてしまったのだ。


寝起きにスマホを確認したけど何件かメッセージがきていた。

学校で会うし、今すぐ連絡しなくてもいいか、と確認だけしてそのままだ。

「ごめんね。心配かけて。」

もう大丈夫、と笑顔で返すとメイはホッと胸をなでおろした。


「頭打ってたりしたらどうしようかと思ったよ…中空くんが居て良かったねホント」

「うん。そうだねー……そういや中空くんはあの後、教室戻った?」

「6時限目は授業受けてたよ。眠そうにはしてたけど」

「そっか、なら良かった」

いくら大怪我はしてないと言えども、あれだけ色々あったら疲れていただろうに。

先に帰ってしまった罪悪感がチクリと胸をかすめる。


「それにしてもビックリしたよー、隣から消えたと思ったら下に落下だもん。」

「あはは、ホントごめん」

「でも疲れていたみたいだし、仕方ないよね。」

「今日はしっかり眠れたから大丈夫!」

私は腕を曲げ、ガッツポーズを取った。


後でノート貸してね、とメイにお願いして

教室に入った途端

クラスメイトの知り合いが数人、昨日のことについて聞いてきた。

簡単に事情を説明し、もう大丈夫だと説明して

やっと、自分の席に着いた。


「おはよ…その様子だと大丈夫そうだな」

「あー、うん。今日はぐっすり寝たから」

「俺も昨日はさすがに眠れたな。」

「ごめんねほんと、巻き込んじゃって」

「いや、別に大丈夫。」


まだ知り合って数日しか経っていないはずなのに

あまりにも自然に会話をしている私たちを見て

メイが面白そうに入ってきた。

「何なに!?二人は知り合いだったの!?」

「いや、そういう訳じゃないけど……」

二人揃って同じように言ってしまう。


「やだ、なにその息ピッタリ感!」

「えっ」

私と中空くんは顔を見合わせて驚く。


「えー二人はどういう関係よー」

メイはニヤニヤと私を小突く

「どうって何も」


同じ夢を共有しています、なんて言えるわけがない。


でもなんとなく、二人の秘密のような感じがして

それもまた、悪くないなと思った。



そうこうしているうちに、始業のチャイムが鳴り響く。

朝のホームルームが始まる。

英単語の小テストがあるのだけれど、そのプリントを配っている最中に

隣から小さなメモが飛んできた。


「昨日、言い忘れたけどーーー俺の前に座ってる奴も、同じだから」


はい?

どういう、意味?

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