第4話 接近と拒絶
「や、山本君!?大丈夫?どうして泣いてるの?」
声がする方向を見ると、心配そうな顔をした宮園さんが立っていた。
どうして宮園さんがいるんだろう?
確か僕はかなりひどいことをして彼女とデートの途中で別れたはずだ、今思い出してもあれはないと思う。
だから僕は彼女の顔をまともに見ることができず顔を逸らしてしまう。
「ご、ごめん、大丈夫・・だから。それよりもどうして宮園さんはここにいるの?」
「えっとねさっき山本君と別れてから、なんか私も怒りすぎちゃったかなと思ってきた道を引き返して山本君を探してたんだけど、その時丁度山本君が陸橋を上ってるところを見かけて、声を掛けようとしたんだけど、そしたら・・・。」
どうやらあんなひどいことをした、僕の跡を追ってきてくれてたみたいだ。
どうしてそんなに僕のことを気にするのだろう?
祝福の影響だとしても、もしかしたらほんとに僕のことが好きなのかもしれない、そう思い彼女の顔をのぞいてみる。
「ふふ、そんなところにいたら危ないよ。ケガしてるんだから早くベットに戻らなきゃ。」
そう言っている宮園さんの顔は微笑んでいる、でも僕にはなぜかその笑顔が作り物であるような違和感を感じて体の奥底に寒いものを感じる。
「ほら手につかまって、私がつれていってあげる。」
「ご、ごめん、大丈夫一人で歩けるから。ありがとう。」
「そお?何かやってほしいことがあったら言ってね。」
僕は彼女の提案を断り体中の痛みに耐えながらベットに戻る、呪いのせいで彼女に触れるわけにいかないし勘違いかもしれないけど彼女の笑顔にとても嫌なものを感じた今は、あまり近づかない方がいいように思えたのだ。
そして僕がベットに戻ったことを確認した彼女は、壁側にある付添人用の椅子に腰かけている。
「あっごめん、山本君ケガしてるから私もう帰った方がいいよね。」
「いや、そんな別にすぐに帰らなくてもいいけど・・・。」
「そお?それじゃあもうちょっとだけお邪魔するね。」
「うん。それで・・・もしかして救急車を呼んでくれたのって宮園さん?」
「ええ、階段から落ちたのを見たときは、ホントに心臓が止まるかと思ったのよ。」
「心配かけてごめん、それでなんだけど僕が落ちるときに女の人はいなかった?」
さっき母さんからいないといわれたけど、それは勘違いかもしれない一応ということで聞いてみる。
「女の人?その女の人は山本君とどういう関係なの?」
「関係?特に関係とかはないけど・・・。」
何故宮園さんはなぜそんなことを聞くのだろうか、ただ落ちそうになっているのを助けようとして、そして逆に殺してしまった・・・・・。
いや考えるのはやめよう、今更後悔したってもう何にもならないあの時と同じことだけはしないようにしよう。そう心に決める。
「そう、それならいいの。でも山本君が落ちているときそばに人なんて誰もいなかったよ。突然腕を伸ばして後ろ向きに落ちていくからびっくりしちゃった。」
「そう、だよね。変なこと聞いてゴメン、それから救急車呼んでくれてありがとう。」
「うん、どういたしまして。」
彼女の笑顔はとても可愛らしく、小動物を思い出させる。
やはりさっきの悪寒は何かの勘違いだったのだろう、さっきはルージュと話していて動揺していたからその影響があったのかもしれない。
「それでね山本君、一つお願いしたいことがあるんだけど。」
「え、何?まぁ僕にできることなら・・。」
「えっと・・頭を撫でさせてもらえないかしら?」
いま彼女は何を言ったんだろう、頭を撫でる?僕のだろうか?なでるとしたら僕の頭しかない、でもなんで突然そんなことを言い出すんだろうか?
頭を撫でるにしても僕には呪いがある、あまり触られると爆発する危険性がある。
「えっと五秒ぐらいなら・・・。」
「ホントに?ありがとう、それじゃあ・・・。」
そういって彼女は僕の頭を撫でる、その手は程よく温かく気持ちがいい、今どんな顔をしているんだろうかそんなことを思い彼女の顔を見る。
そこには・・・どす黒い、まるで実験で使う動物を見るような見下す笑顔を浮かべた彼女の顔があった。
ぼくはあわてて彼女の手を振りほどく。
「あっ、ごめんもう5秒経ってたわよね。」
「あの・・・ごめん。」
「いいのよ、それじゃあ私帰るから。それで・・・またデートしてもらってもいい?」
僕はもうわけがわからなかった、可愛らしい彼女の笑顔とそのあとの黒い笑顔のどちらが真実の顔なのだろうか、何と返事すればいいのか。
「う、うん、いいよ。またデートしよう。」
こうやって僕はまた、その場その場の相手が喜びそうな返事をしてしまう。
前から直さなきゃいけないと思っていてもこの癖だけは直っていない。
「嬉しい、ありがとう。じゃあ後で連絡するね。」
そういって彼女は可愛らしく手を振りながら、笑顔で病室から出て行った。
スカートめくりや手を振りほどいたり拒絶したはずなのに彼女は僕にやさしくしてくれる、理想といってもいいほどの彼女。
だけどあの笑顔は何だったのだろうか、もう何もかもよくわからない。
僕はそんなことを考えていたが、気が抜けたのかゆっくりと眠りに落ちていった。
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