第2話 デートと失敗

悪魔のルージュから呪いと祝福の話を聞いた次の日、僕は彼女である宮園さん昨日の事を忘れたかのようにデートに臨んでいる。


絶対にデートなんかするべきではない、というよりも彼女のことを考えれば即座に別れたほうがいいに決まっている。しかし僕にそんな度胸があるわけがない、まして彼女なんかできたのは初めてで、今でも気持ちは舞い上がっているのだ断るのは不可能というものだ。

そして昨日のはただの夢だったと思い込もうとしている。


というかそんな風にか考えなければやってられない、触れているだけで相手が爆発するとかもう漫画の中の話だ、そんなのあり得るわけがない。


「どうしたの山本君?具合悪いの?」


ちょっと不安そうな感じで彼女が僕のことを、横から少し見上げるぐらいの感じでこちらのことを見ている。

僕たちはこれから映画を見に行くことになっていて、二人で並んであまり楽しい会話もなく歩いていた、そしていつの間にか考え込んでいたのだろう、気をつけなければと自分に言い聞かせる。

それにしても彼女の私服姿はとてもかわいい、ブルーのシャツにギンガムチェックのスカートを履き、白いハンドバッグを肩に提げている彼女は、どこぞのモデルのようでまるで自分と釣り合っているようには思えない。かくいう僕はパーカーにジーパンで自分からみてもとてもダサい。


「ううん、な、なんでもないよ。」

「そっかそれだったらいいんだ、もしかして私みたいに緊張してるのかなと思って心配してたんだぁ。」

「え、宮園さん緊張してるの?」


それは考えていなかった、彼女はモテるのは公然の事実で彼女のことを好きだと言っている男を何人か知っている。

それに噂で彼女は誰かと付き合っていたというのは聞いたことがある。


「うん、私ってデートってあんまりしたことないんだ。それに・・・なんか山本君といると胸がドキドキするっていうか・・・。ってごめん今の忘れて、なんかすごい恥ずかしいこと言った気がする。」

「そ、そう?わかった。」


うつむいて顔を赤らめている彼女はとてもかわいい。

だけどドキドキする要因はたぶん神からの祝福に関係があるんだと思う、冷静に考えて僕にドキドキさせるような要素があるわけがない。

そう考えて勝手に自己嫌悪に陥ってしまう。


その時、なんだか暖かく柔らかくすべすべした物が手をつかんでいるような気がすることに気付く。

恐る恐るそちらを見ると、彼女が僕の左手を右手で恥ずかしそうに掴んでいることを理解する。


そんなもの理解できるだけで反応することなんてできやしない、当たり前だ僕の人生で女の子と手をつなぐなんて、幼稚園や小学校低学年で先生に言われたから握ったことがあるだけでそれ以外にあるわけがない。

ましてこんなかわいい子と手をつなぐなどあっていいことではない。


そんな感じで混乱して身動きが取れずにいると唐突に


『異性との過度な接触を確認しました。このまま継続されると相手へのターゲッティングが行われます。』


機械的な女性の音声が脳内に響く、頭の中は混乱と恐怖で真っ白になる。


『ターゲッティングが完了しました。10カウントで対象を爆破処理いたします。』


「っっ!!」


無情にも機械的な音声は続いていく、そこでようやく僕は冷静になり彼女の手を乱暴に振りほどいた。


「ご、ごめん、急に手を繋いじゃって、嫌だった?」


彼女はすごく悲しそうな顔をしてこちらを見ている、でも僕としてはそんな場合ではない早く何とかしなければ彼女が爆発する!

何とかしなければと思うほど思考は空転していく。


『10・・・9・・・8』


何か何かないかそんな考えをしているうちに、目の前で風に揺れてひらひらしているものに気付く。

もうこれしかない、というかこれしか考えられないのだやるしかない。


『5・・・4・・・3』


ええいままよ、僕は勢いよく下から上に向かって手のひらを上に向けて振り上げる。

そして僕は目にした、こんな時なのに僕は思った『あ、ピンク色だ』と。


『ターゲッティングが解除されました、カウントを無効にします。』


そして僕と彼女の間には沈黙が数秒あり、そのすぐ後に僕の左ほほがいい音を立てて叩かれる。


「サイッッテー!!」


そう言い残し彼女は早歩きで去っていく、そう僕は彼女からしてみれば手をつないだら乱暴に振りほどかれ、しかも謝りもせずに突然スカートめくりをするというトチ狂った行動をしたのだ叩かれて当然だ。


はい、僕死んだ社会的に死んだ。

彼女はこういうことを周りに言いふらすタイプには見えないが、友達にはいうかもしれない、そうするとクラスの全員が知るのはホントにすぐだろう、これはもうホントどうしようもない。


それとも彼女に爆発するからわざとあんなことをしたと正直にいうべきなのだろうか、そんなのだれも信じてくれるわけがない僕だって信じられていないのだから。


そんなことを考えながらトボトボ歩いていて陸橋の階段を上っていると、目の前からとなりを20代ぐらいの会社員だと思われる女性が降りていく。一応端によけながら歩いていると女性は何に気を取られたか階段で躓き転げ落ちそうになってしまう。


僕は咄嗟に手を伸ばし彼女を支えようとするも、変な態勢だったためか体重を支えきれずに体が宙に浮いてしまう、僕はなし崩し的に彼女をかばう形で階段を転げ落ち

ていく。


そんな危機的状況だといのに僕は思い出す、このまま彼女に触れているとまずいのではないかと、だけどそんなのは後の祭りで転げ落ちた後僕は


『異性との過度な接触を確認しました。このまま継続され・・・・・。』


という音声を聞きながら。

僕の意識は暗い闇の中にとけていってしまう。

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