10カウント!~リア充爆発する~
ほうこう
第1話 呪いと祝福
「好きです、付き合ってください!!」
僕は高校生になって初めて告白を受けている。
ここは校内でも人気が少ない、グラウンド近くの桜の木立のなか桜は今ほぼ満開で、花弁が舞い散っている。
そんな告白に絶好なシュチュエーションで僕は現在、クラスでも可愛いと評判な女の子、宮園加恋さんに告白されている。
どうしてこうなったかは今でもわからない、僕こと山本春彰≪やまもと はるあき≫はモテるほど顔面に自信があるわけでもなく実際友達にも特徴がないのが特徴だと揶揄されることがある。そして運動も勉強も特にできるわけでもない、ほぼ平均のちょっと下といった感じだ。
そんなことを考えていると、彼女が上目遣いでこちらを見ているのがわかる。
「どう・・・かな?」
もちろん断る理由など僕にあるわけがない、だがこんな状況初めてでからかわれているんじゃないかと邪推してしまっていた。だがそれでもここで返事はしないのは卑怯だと思い意を決する。
「も、もちろん、こここ、こちらこそ、よりょしくお願いしまう。」
盛大に噛んでしまった!顔面に血液が集まり顔が真っ赤になってしまっているのが自分でもわかる。自分のこういう所に心底腹が立つそんな気分でいると。
「ほんと?嬉しい!ありがとう!私絶対断られると思ったから…。」
はにかんだ様子で彼女の端正な顔も少し赤いのがわかる、彼女のショートカットのきれいな髪が春の風になびいているのが心底きれいだと思い、これはユメではないかと自分のほほをつねりたくなる。
「そ、そんな事絶対ないよ。そんな断れる奴なんていないと思う。」
「そお?だと嬉しいなぁ。それじゃあ山本君のLINEのID交換してもらってもいい?」
「いいよ。」
それから僕たちは少しだけ話をした後に時間差をつけて教室に帰ることにした。
そのあとのことはあまり良く覚えていない、夢見ごごちすぎて友達としゃべっていても何をしゃべったかもよく覚えていない、ただただ平静を保とうと必死になったのだけを覚えている。
そして帰り道、友達と別れて自分一人で歩いていると、LINEの通知が入る《今日はありがとう、また明日ね。》という言葉と可愛らしい猫のスタンプが使ってある。
可愛い、ホントに可愛いこんな彼女が僕の彼女なんて全く信じられない、あんな彼女と手をつないだりいろいろしたりするんだろうかと妄想すると、にやにやが止まらない。
そんな感じで考え事をしながら、家の中に上がり自分部屋に入る。
「やあ、おかえり何かいいことでもあったのかい?顔がにやけているよ。」
「え??」
そこには年齢は彼より少し上くらいで黒髪で長い髪、透き通るようなというより本当に透明なような白い肌に真っ黒なロングなワンピースを着たそこだけ見ればまだ普通の少女だが、瞳は紫色に爛々と輝いており普通の人でないことはかれにでもわかった。
そんな彼女が勉強机の前においてある椅子に座っている。
誰だこの人、今は母仕事でいないはずだし、もちろん僕には姉や妹なんかもいやしない。親戚にはこのぐらいの、近い歳の女の人がいたはずだけどそれでも絶対こんな人じゃないはずだ。
そんな風に混乱の極致にある僕を見透かしたように彼女が話し始める。
「いやぁごめんごめん、自己紹介がまだだったね。わたしはルージュまあ仮名だけどね、私たちの世界では名前はそんなに意味をなさないし、それで一応君たちの世界でいう悪魔といった感じだね。」
「悪魔!!??」
そんなのファンタジーでしか聞いたことがない、そんなのいるわけがない。でもラノベやネット小説を読んでる自分としてはもしかしてこれって異世界転移のフラグじゃないか?僕がそんな・・・ってあるわけないよなぁばかばかしい、いやでもしかし・・・。
「君が期待してくれてるとこ悪いんだけど、異世界転移とかそんなじゃないから。それに私から言わせてもらうと君とかのようなただの学生を異世界に転移させるより、もっと賢い人間や戦闘力に特化した人間を探してその人間に能力を持たせた方がずっと効率がいい。」
「で、ですよねぇ。」
「まあ、そんなことを話すために、ここに来たんじゃないんだ。」
「えっとじゃあどのようなご用事で?」
ここは逆らわずにいた方がいいような気がする、決して怖いからではない・・たぶん。
「まぁただのお使いでね。今日学校でいつもと変わったことはなかったかい?」
そりゃあ最も変わったことがあったけど、こんな良く知らない美少女の前で言えるわけもない。
「まあ大体察しはつくよ。クラスの美少女にでも告白されたんだろう?」
「なっ!?どうしてそれを?」
「まあ一応悪魔だから、というのは嘘でこれは君にかけられた祝福が関係しているんだけどね。」
「ど、どういうことですか?」
「とりあえず話は長くなるから、そんなところに立ってないで早く入ってきなよ。」
ここ僕の部屋なんだけどなぁ、まあ今無暗につっこむと藪蛇だろうから黙っていよう。」
それから彼女は事のあらましについていろいろ話してくれる。
なぜか僕に神様が異性からの好遇の祝福つまりモテモテになる能力を与えたらしい、そしてルージュの上司である原罪の悪魔と呼ばれる存在がそれが気に入らず逆に呪いをかけたらしい。
つまり今日彼女に告白されたのはその能力のせいだったということなのだろう、なんかすごい残念なようなラッキーなような、よくわからない気持ちになる。
「で、ここからが問題なんだけどその呪いっていうのが…、異性と過度に接触すると爆発するっていう呪いなんだ。」
「は・・・い?」
何言ってるんだこの人、ばくはつ?それは爆弾とか卵とかそういうのが弾けるみたいなことでいいんだろうか?やっぱりこの人は僕の妄想の産物とかじゃないんだろうか?そもそも自分の部屋でこんな綺麗な美少女と二人っきりというのもおかしな話だ。やっぱりこれは夢だ。
「君には悪いがこれは夢じゃないんだ。うちのバカ上司がやったことではあるが私もすまないとは思っているよ。」
「あの、関係ないですけど僕の心とかって読んだりしてますか?」
「いや?君は思っていることが顔にでやすいから、何を考えてるかは大体推測できる。」
「そう、ですか…。」
「まあそんなことより、呪いのことだがこれは一度試してみればわかるだろう。ちょっと私の手をにぎってもらってもいいかな?」
そんなことを言って彼女は右手を差し出してくる。
まさか女子から、手を握ってといわれる日が来るとは思わなった。いやこの人は悪魔なのでノーカンなのか?やばいなんか緊張して手に汗かいてきた。
「葛藤しているところ悪いんだけど、早くしてくれないかな私もこれでいて忙しいし。」
「ではお願いします。」
そして僕は右手を差し出して彼女の手を握る、彼女の手はヒンヤリしているというよりもほぼ氷のような冷たさで今の緊張して熱くなってしまっている僕の体温からして丁度いい感じ。
「そんなにきつく握られたら、恥ずかしいじゃない。」
「へ?」
「いや、こういう感じが君は好きなんじゃないかと思ってね。ほら離さないでくれ、もうちょっと時間がかかる。」
そして手を握って数秒したころ、頭の中で唐突に機械的な女性と思われる音声が流れだす。
『異性との過度な接触を確認しました。このまま継続されると対象へのターゲッティングが行われます。』
「そうこれが第一段階だ。」
『ターゲッティングが完了しました。10カウントで対象を爆破処理いたします。』
なんだ、何を言ってるんだ爆破するってどこだ?ここから逃げた方がいいのかどうしたらいい。
混乱し茫然自失していると無情にも音声は流れ続ける。
『10・・9・・8・・』
「ああ、始まったねそれじゃあ手を放すから、君は私の手を見ててよ。」
そんな風にルージュは暢気に言っているが、何か大変なことが起こりそうだというのが危機感のない僕にもわかる。何とかしなければと思うが体は全然動かない、彼女に言われた通りに彼女の右手を見つめることしかできない。
『3・・・2・・・1・・・』
そして空白が生まれる、なんだただのこけおどしかと思った。
しかし次の瞬間、彼女の右腕は色も爆風さえもない爆発によって無残に四散し部屋一面と山本少年の体中を赤く染め上げている。
『あ・・・え?」
「いやぁ、結構すごい爆発だったね。私もこの呪いの効果を試してみるのは初めてだったんだが、結構すごいねこれは。」
「あ・・あの、て、手がなくなって・・・。」
そこまで言って、喉から嘔吐感がこみあげてきて僕はうずくまって必死にこらえようとする。
この平和な世の中で、何事なく暮らしてきた僕には腕がはじけ飛んだという認識がちゃんとできずにいた。
しかし現実を直視してしまい、どうしても体に拒絶反応がある。そんな僕をしり目にルージュは言葉を続ける。
「おっとこれはすまない、見苦しいものを見せたね。よっと、ほらもう治ったよ。」
僕が恐る恐る顔をあげてみると、そこには何事もなかったように右手が元に戻っている姿がある。
それは元に戻ったというよりも先ほどのことがなかったかのように、血の跡など何もなくなっている。
「今、のが…。」
「そう、今のが爆発の呪いだ。よくもまあこんな呪いをかけたものだよ、うちの上司はイカれてるとしかいえないね。」
「この呪い、解く方法はないんですか!!」
僕はこれから宮園さんと付き合うし、他の女子ともこれから絶対に接触はあると思う。
それなのにこんな状態ではまともに生活できるわけがない!!
どうして僕がこんな目に合うんだろうか、僕が何かしたのかそれとも前世での罪とか?
「う~ん、基本呪いはかけた本人が解くか、かけた人が死ぬまで解けないもんなんだけど・・・。いや、そんなに悲しい顔しないで、この呪いはそんなに強い呪いじゃないから時間がたてば解けると思うよ。そうだなぁ何十年後とかじゃないかな、そこらへんは個人差があるから何とも言えないね。」
「何十年後とか、そんなのめちゃくちゃだ早く解いてください!!」
「無理だね、私の上司は嫌がらせするときは本気でやる悪魔だ、私じゃ解けないね。まあだけど呪いが発動しそうになっても中止させる方法ならあるよ。」
何十年も解けないなど絶望しかない、だけど中止できるならそれさえ守っていれば呪い自体があってないようなものになる、その可能性にかけて僕は必死にルージュに言い寄る。
「どうすればいいんですか?教えてください!!」
「なに簡単なことだよ、10カウント数えられる前に相手の心から嫌がることをして好感度を下げればいいだけだよ。簡単だろ?」
それは悪魔には実に簡単なことなんだろう、だけど僕には無理だ。人に嫌われるのは嫌だしそんな度胸もない、まして女の子を相手にそんなことをするなど考えられない。
「そ、そんな無茶ですよ。僕そんなことできないです。」
「まあ無茶でもやるしかないんじゃないか?まあ後は君次第だ。私はこれからまだ仕事があるので帰るよそれじゃあ健闘を祈る。」
「ちょま・・。」
最後まで喋る前に彼女が忽然といなくなっている、まるで夢であったかのようにキレイさっぱりと。
僕はそのままベットに飛び込み横になる。
ほんとになんなんだろう?
告白されたと思ったら悪魔が来て、右腕が爆発してそれが何事もなく元に戻ってもう意味が分からない。
これが夢であってほしいと思い眠りにつこうとウトウトしていると、スマホに通知が来ているのに気づく。
『明日よければどこかに行きませんか?』
そんな文面の宮園さんからLINEにメッセージが届いている。
少し悩んだ僕だったが、了解の旨を伝える返信をして深く考えるのを放棄した。
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