画図百目鬼夜行[技の解説]

 




画図百目鬼夜行がずどうめきやぎょう【 壱 】



■ 空手

  胴回し回転蹴り



『 壱の戦 ≪ 駆けあがった男 』より。


 身体を前方に縦回転、または横回転させ、相手の頭部や顔面に踵を叩きこむ技。別名『浴びせ蹴り』とも。


 もとは、1977年の某フルコンタクト空手の対抗戦にて、180㎝超の黒人選手であるグレッグ・カーフマンに対して千葉真一ちばしんいちが放ったのが起首ルーツである。以降、空手の試合のみならず、プロレスの試合などでも使用されるようになったポピュラーな技。


 アクロバティックでトリッキー、非常に華のある大技だが、使用直後に審判の「待て」がかかりやすい側面もあり、時に疲弊した選手の逃げの点数稼ぎとして利用されることもある。戦略を焦って浴びせ続けていると逆に観客のブーイングを浴びてしまうこともあるので、乱用には是非とも気をつけたいところ。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190507012119.jpg


(↑これらの画像は、スマホアプリ『EASY POSE ~ Lite版』で作成したものです。大半が既存の動画などを参考にして作成していますが、アプリの扱いに不慣れであったり、私の想像力や経験値が足りないなどの理由から、技の精度として現実的な画像とはいえないかも知れません。また、エンターテインメント性を優先し、やや大袈裟な描写として作成してもいます。どうぞ悪しからず、参照程度におとどめください(実戦への転用はお薦めしません。下手の横好きが描いた暴力を実用したところで人生を落伍ミスるだけですので)。





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◎ 画図百目鬼夜行【 弐 】



鬼門陰陽流きもんいんようりゅう古武術

  あおふじ



『 壱の戦 ≪ 駆けあがった男 』より。


 バック転の勢いに乗って相手の顔面に膝を叩きこむ大技であり、鬼門陰陽流の独自の技。あるいは『胴回し回転蹴り』の逆バージョンという見方もできるだろうか。


 技の流れとしては、着地の際、相手の脚を生け捕りにして初めて完成となる。この後、足関節技へと移行するなどして勝利することを目的としており、牽制として用いることが大前提。つまり過信は禁物。使用のタイミングを見誤って相手に回避スカされてしまうととたんに窮地に陥りやすくなるため、決して好い気になって使ってはならない。なるほど、百目鬼歌帆どうめきかほも「不合理な技」と酷評している。もしや、使用者の、武道家としての成熟度を試さんとする天の邪鬼な技なのかも知れない。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190507012528.jpg





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◎ 画図百目鬼夜行【 参 】



■ 柔術

  足首固め



『 壱の戦 ≪ 駆けあがった男 』より。


 柔道、柔術、ブラジリアン柔術、総合格闘技、プロレス、戦場格闘技などでしばしば用いられる、足首をターゲットとする関節技。


 その他『アンクルホールド』や『トゥホールド』などの様様な呼称があり、派生技、アレンジ技ともに多岐に渡る。斯様かように豊富なバリエーションを誇るため、ベーシックな型をコレと限定することは非常に難しい。が、唯一、いずれにも共通しているのが「梃子の原理を利用している」ということ。ただ腕力に任せて捻るのでは絶対に目的は果たされない。


 なお、己にちゅうを尽くさず、ただ過去の実績を過信するあまりにたやすく闇夜へと落とされた鷲見晋太郎すみしんたろうの足首は、まるでスナック菓子のように破壊されてしまった。呆気ない結末というのは往往にしてあるものだが、やはり「しんしんなり」ということか。



⊿ 画図

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◎ 画図百目鬼夜行【 肆 】



■ 鬼門陰陽流古武術

  稲掛いなか



『 肆の戦 ≪ 蚊帳の外の男 』より。


 鬼門陰陽流の独自の投げ技。


 柔道の『背負い投げ』に似るが、対象の胸座むなぐらを掴んで懐中ふところへと潜りこむのではなく、対象の領頚えりくびを掴んで後背を捕える。となれば、対象は前転の流れで背中から投げられるのではなく、バック転の流れで頭頂部テンプルから投げられることになる。


 この技のポイントは、相手の右腕を左手(左利きの場合はその逆)で搦め取り、その可動域を制限することによって受け身の効果率を引きさげることにあり、頭部に重大な損傷を与えられるよう設計してある(落とした瞬間に体重移動でも為されたのか、吹田源治すいたげんじこぶの外傷のみで済んだようである)。


 ちなみに『稲掛け』とは、稲などの穀物や野菜を稲木(支柱と横木から作られる物干しの竿、台)に束ねて掛け、天日干しにする農作の伝統文化である。地方によっては、


稲掛いねか

稲機いなばた

稲架はさ (はざ、はせ、はぜ、はで──等とも)

稲架掛はさか


 など、別称や異称も多い。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190507084401.jpg





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◎ 画図百目鬼夜行【 伍 】



■ 総合格闘技

  フロント・チョークFront-Choke



『 伍の戦 ≪ 土俵にあげられた男 』より。


 柔術やプロレス、総合格闘技など、多くの格闘体系に見られる絞め技のひとつ。他に『前方裸絞ぜんぽうはだかじめ』や『ギロチン・チョーク』など、様様な呼び名がある。


 前屈みの状態にある相手の正面に立ち、片方の上腕部で頭部を抱えこみ、抱えこんだ腕をもう片方の腕で掴んでかんぬきとする。こうすることで、相手の気管や頸動脈を絞めあげることを目的としている。この際、地面に対して垂直に、上方へと持ちあげるようにして負荷をかけるのが定石。


 寝ているグラウンド状態で技をかける場合は、相手の腰のあたりに両脚を回して挟みこむ「胴締め」を加味することもある。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190508054511.jpg





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◎ 画図百目鬼夜行【 陸 】



■ プロレスリング

  卍固め



『 伍の戦 ≪ 土俵にあげられた男 』より。


 プロレスの見せ技のひとつ。


 もとは『グレイプヴァイン・ストレッチ』という呼称のヨーロッパ発祥の技だが、アントニオ猪木いのきのフェイバリットホールドとして日本に浸透して以降、当初は『アントニオ・スペシャル』や『オクトパス・ホールド(レフェリーの沖識名おきしきなが命名)』と呼ばれ、また日本テレビ『日本プロレス中継』の技名一般公募を経て『卍固め』と呼ばれるようにもなった。ちなみに、その名の由来は、技の見た目が「卍」という字に似ているから。


 華のある技だが、体勢が崩れては元も子もない技であり、プロレス以外の実戦の場には向かない──との声もある。つまり、逆転されることもまた美学となり得るプロレスならではの、ある種の哲学を包含する感慨深い技といえよう。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190508055350.jpg





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◎ 画図百目鬼夜行【 漆 】



■ プロレスリング

  パロ・スペシャルPalo-Special



『 伍の戦 ≪ 土俵にあげられた男 』より。


 ゆでたまごの原作漫画『キン肉マン』の主要キャラクターであるウォーズマンの必殺技。彼の才能を見抜いたロビンマスクによって進化を果たした。日本名は『スタンド式波乗り固め』で、実在プロレスラーであるジャッキー・パロの技が着想とされている。


 対象の背後バックを取って腰に馬乗りとなり、対象の股間から内股にかけて脚を挿入、下腿かたいを膝に絡めて固定。それから、対象の両手首を掴んで前屈みにし、さらに前方へと体重をかけることで肩関節を破壊。脱出エスケープの難しい関節技だといわれている。


 旧ソ連出身の超人プロレスラーが得意とするだけあって、野心に溢れる支配的な技だったが、反面、この体勢を長時間とキープしていられない弱点もあった。技のほうではなく使用者のほう、支配者のほうに隘路ネックがあったのであるからして、なんとも皮肉な話である。



⊿ 画図

http://img.nanos.jp/upload/l/lioliolio/mtr/0/0/20190508055833.jpg




 

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