第3話 血と爪と

カリカリ  ついに血が滲んできた。


模試が増える近頃は、無意識につめをかむ頻度がひどいのが自分でもわかる。 無理やり視線をそらし、時計を見ると12時だ。


今日はこの問題を解いたら寝ようと思っていたけど、数学の問題を考えていたはずが、今日の放課後の美由紀の横顔を思い返していた。


同じクラスの男子が気になるという話をする彼女の表情は、イキイキしていて本当にかわいらしかった。美由紀はきっともっときれいになる。


そしたら、きっといまみたいな性格は維持できなくなるだろう。裏表がない彼女は周りから注目され始めると一気に流され、その若さと美しさは年上の少し不良ぶった先輩たちの手垢でべたべたにされてしまうのだろう。



今の無邪気な美由紀の顔と、私が勝手に作り上げたべたべたの笑顔の美由紀が頭でちかちかする。




だめだ、



今考えるべきは数学の問題であって、わけのわからない妄想をしている場合ではない。シャーペンを動かし、式の続きを書こうとするがそのたびに深爪がチクチク痛み集中できない。


今日はここら辺が限界かもしれない。ちょうど父が風呂から上がったようなので寝間着の用意をもって彼女は階段を下りた。

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