#37 All I Need(僕に必要なもの)
「つまりは…恋愛相談だ」
無駄に重くてシリアスぶった割に簡潔な僕の言葉が恋愛武闘の開会、その合図。
僕の本音を察した一同は息を呑み『マジかよ』と低い唸り声が小さく這う。
失礼極まり無いと憤慨する僕は、店主の好きな外国人が名前の由来だと言うバー『カンナバーロ』で恋愛相談をモテ系バンドマン共に持ち掛けた。
あーその、ちなみになんだけど、僕はその相談相手たるバンドの作詞作曲を手掛ける
僕の持つ些細な疑念はともかくとして――ここはどう見ても
しかし、肝心の仲間達――恐らくは大体察してる
何だか相談相手を間違えたかも知れないという不安要素をパチンコ玉位のサイズに圧縮しながら僕は口を開く。
「取り敢えず現状確認と言うか、概略あらましを説明するよ」
沈黙は金を超えたプラチナとばかりにだんまりを決め込む二人と多分ほぼ間違い無く察している
悠一に連れられ行った先のショッピングモールで出会ったこと。
状況とかに流されるままに無し崩し的に二人きりになり散策に興じたこと。
途中で
そして、短いドライブを共にした事を嘘偽り無く――時折都合の悪い事は隠しながら話した。
「それでもって僕としては、彼女との関係をこれっきりにしたくなくて、今後も繋いでいたくて。そういう訳で異性との交際経験がある皆に相談した訳だ」
これが今回の趣旨で論旨で骨子。
なんと言っても僕は童貞バンドマンでもメンバーは違う。
僕とは違って、人生において普通に異性と交際した事がある……アレ、本当何でまた僕だけが皆無で絶無なのか、賢い誰かに解き明かして欲しいもんだ。
「趣旨は理解したけどよぉ…その
どうやら僕の拙ない表現能力では新山
「僕は当然そんなもの、持ってないよ」
ツーショットを撮る勇気も盗撮を行う度胸も持ち合わせていない非モテ男の純なる解答。とすると、
「悠一ぃっ!」
「あいよおっ!」
想い人の妹さんの元カレであるところの幼馴染であれば、何か妙案があるかも知れないと思い指名したのだが、待ってましたと言わんばかりの威勢の良過ぎる返事に些か面食らう。
僕の驚きを外に置いて、色男が「と言っても、流石に俺も新山彩夏女史の写真は持ってないからなー」と呟きながらスマホを操作すること一分。
「コレがアラタの想い人の妹になる。姉はもっと美人系だった」
悠一がそう告げて画面に表示させたのは新山
「うーん。余計にイメージしにくくなったな。この娘の顔くしゃくしゃだし…」
真司も僕同様眉間に皺を寄せての困惑の表情だ。
しかし、性格の悪いモテ男は意に介さず、二枚目の参考資料を提供する。
「これが結構本気でメイクした写真な」
「おお〜」
液晶の中に映るバッチリメイクでピースサインを掲げる新山彩乃さんを見た僕と真司の気持ちの悪いユニゾンが低く響く。潤はクールに『可愛いね」と小さく呟いただけだった。
「コイツの年齢を少し上げて、多少肉感的にしたのが新山彩夏さんだ。私見ながら、我が相棒は良い趣味してると思うぜ」
スマホをデニムのポケットに片付けた悠一は煙草を口に咥えながらフォローっぽい一言で締めた。
「確かにそれは良い女だな」
「流石アラタだね」
その結果僕の身に謂れ無き賞賛が注がれる。
いやいや、新山さんを恋人に出来たのならともかく、好きになるだけで褒められるの? おかしくね? ハードル低すぎだろ! どんだけ僕は駄目な奴だと思われてるんだよ?
「じゃあ各々イメージが多少出来たと思うので次のステップに進もう」
己の下層っぷりを直視したく無いので、会議の速やかな進行に努める。
しかし、突き詰めれば議題と論点は一つであり、この一言に集約される。
で、これから僕はどうすれば良い?
モテ系バンドのモテないボーカルは人並みのかそれ以上にモテるメンバーに直接的な助言を乞う。
ちなみに余談だが、バンドマンがモテるってアレ都市伝説だから。
モテる奴がバンドやると更にモテるってのが真相だから。
そこんとこよろしく!
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