怒濤の篠笹体育祭開幕! 編

第52話 『体育祭まであと*日』

*52*


 ――どいてどいてどいてーっ!


 モップ片手に走り廻る。夏休みも終わると、篠笹高校の昇降口には『体育祭まであと*日』という張り紙が現れた。


 生徒たちは体育祭に余念がない。今年は織田・蓼丸の「文武両道の実現」なんてスローガンで、芸術部にも、華がもたせられるものだから、「俺たちには関係ねえよ」とそっぽむく生徒は誰もいなくなった。


 ――鮮やかな判断に、陸上部と演劇部の喧嘩も減っ……と思ったら、校門でいがみ合う近江と駿河を見つけた。


「あいつらは、あれでいいよ。桃原と涼風もそうだろ」


 幼なじみらしい二人は、しょっちゅうぶつかり合う。それも、駿河のほうが喧嘩を売る理由は何だろう?


「ももっこー!」とバレー部の有志が声を掛けてくれた。蓼丸は軽く手を挙げて、朝の挨拶。目の前を「会長、待てええええ!」と追いかけて行く涼風。お役ご免になった蓼丸は、美味しそうに紅茶を啜ってみたりして。


「委員長、紅茶飲んでる場合じゃないって! 美化委員のお仕事をしましょう!」

 どこの部活か知らないが、室内練習をやりすぎて、一階を泥だらけにした。お陰で美化委員出動である。


「綺麗になったからいいよ。だいたいどいつらかは分かったから、後で制裁考える。桃原、こういうときは小柄でも便利だな。ちょこまか良く動くね。――以上、解散!」


 ぶつぶつイイながら美化委員たちはモップを戻して、蓼丸に挨拶して帰っていった。


「盛り上がってるね、体育祭」

「ああ、運動部も芸術部も。どっちも参加出来る。芸術部に置いては、ショーの評価をつける。上がれば支援費が出るよ。経理のほうから、少しくらいならって」

「それなら文句ないじゃん!」


 気づけば蓼丸とは、結構普通にお喋りをするようになって。蓼丸は今みたいに生徒会の相談を口にもするようになった。


 ――平和だ。ただ一点を覗いては。


「また、いるな……チェシャ猫」


 報道部の追尾がきつくなっている。気づけば二条がぴったりと貼り付いて観ている。


「あたし、聞いてみようか?」


「いい、思い当たるフシはある。……嫌な部だ、同好会にしちゃおうかな」



 ――それは職権乱用です。蓼丸。

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