親睦会
警備隊と呼ばれる人たちは、主に街のトラブルを解決する役目を担っている。未然に、と言えるほど先手を取れてはいないが、治安維持には貢献しているし、街には必要なものだ。厳密には都市安全課警備部隊、となっているが、警備隊の通称で親しまれている。
表のトラブルは警備隊が、裏のトラブルは侍女を隠れ蓑にした暗殺部隊が――それがこの街の基本である。いや、侍女たちに関しては基本にしているのは、一部の人間だけだが。
そして今、彼らは警備部が訓練で使っている敷地内の山にいた。
「――さて、親睦会を始めましょう」
黒色の
「場所を借りる対価として、こっちの動きは術式の監視がつくわ。適当に対応なさい。見るのは勝手、それを防御するのも勝手よ。目的は山頂――と言いたいところだけれど、夕方だものね、目標設定はなし。ただし山から出ないように」
ということでと、鷺花はくるりと彼らに背を向けて、山へ向かって歩き出した。
「二十分後、私が襲撃するから対応なさい。死ぬこともあるから気を付けなさいよー」
反論は聞かず、鷺花はひょいひょいと木の上まで行くと、すぐに彼らの前から姿を消した。
五分とかからずに山頂のベースにまで到着した鷺花は、通り抜けて行く風を身に受けて、軽く後頭部に手を当てるようにして髪を押さえた。
「エミリーは個別行動か……」
予想していた通りだ。そして、それが悪手であることの証明はすぐにでもできるので、放置。残る三人は登山の速度を落としながらも、いくつかの想定を話し合いながら移動中。
「ふうむ」
どうしたものかと、思う。
今まで鷺城鷺花が教育をしてきたのは、主に戦闘面だ。もちろん、戦闘を介してほかのことも教えてきたが――やはり、主体となるのは戦闘の中、それでも生き残れるためのものである。
大前提だ。
それがなくてはどうしようもない――が。
彼らはどうなのだろうか。
ある程度、言いくるめることは可能である。この世界で外に出ないことを選択しても、それでも、戦闘ができることは優位に働く。けれど、そこに固執する必要があるのかと、考えてしまうわけだ。
彼らを選択した理由は多くあるが、その一つが、進路――己が向かう先を〝決めている〟ことである。ファゼットは侍女たちに育てられたので、そちらの方向に進んでおかしくないと思っているし、
専門を持つのは悪くないが、早すぎる。それしかないと思い込めば、成長を阻害する。だからこそ、違う学科から引き抜いた。
チームとしての在り様は考えていない。そんなものは、時間が経てば培われるものであり、それを決めるのは鷺花ではない。
学園は十六歳で卒業、すぐに働き先を見つけることになる。彼ら全員は、一年と半分くらいになるだろうか。それまでに教えるだけ教えてやりたいと思うし、まあ、とりあえず一ヶ月の猶予期間で拒絶しなければと思う。
――二十分が経過した。
鷺花は
サバイバルには向かない山だ。小川はあるけれど、食料そのものが少ない。ただし、風雨を凌いで休憩するには向いた場所だ。何しろ視界が開けているため、安心感もある。
まあ山なんてのは、どう使うかだと、鷺花は思う。
――そういえばと。
かつて幼少期に、友人と殺さない殺し合いをしたのは、どんな山だったろうと想いを馳せるが、しかし、思い出せない。数千年単位では仕方がないことだが、少しだけ寂しさもあった。
更に十五分後、鷺花は単独行動をしていたファゼットを発見した。
「――監視術式に対しては誤魔化しなのね」
声をかければ、僅かに重心が下に落ちるだけで、構えはしない。本人にしてみれば、まだ隠しておきたいと、そういう意図だ。冒険科の戦闘成績は下から二番目、そこそこ上手くやっていたのだろう。
「この山の感想は?」
「……サバイバル向きじゃねえな」
「でしょうね。単独行動を選択したの」
「悪いか?」
「私は文句を言わないわよ。けれど、彼らはどうなのかしら」
「知るかよ」
「そう。じゃあ暇潰しで聞けばいいけれど、今まさに襲撃を受けているところよ。もちろん私にね。初動には気付かなかっただろうし、対応で後手を踏んだ以上、そこから先手へ回ることは、まあできないように仕掛けてるんだから、無理でしょうねえ」
「……」
「彼らがどうかは知らないけれど、少なくともあんたから見れば、容赦がないと思う程度には追い込んでいるわ。一撃喰らって地面に倒れたままなら、追撃がくる。受け身を取って起き上がれば、そのまま蹴られて木に叩きつけられる。距離を取ろうと攻撃を受けたまま転がって逃げれば、その先にある罠に引っかかって、ようやく、誘導されたと気付く」
「手心を加えないって忠告か?」
「あら、加えているわよ。だってまだ殺してないもの」
「――まだ?」
「訓練で死ぬのと、実戦で死ぬのと、何か違いがある?」
それは。
「エミリー、あんたしかそれを知らないのに、どうして単独で行動してるの?」
「俺が教えろってか?」
「そんなことは要求してないわ。三人のうちの誰かひとりが死ねば、否応なくわかるでしょ?」
「――」
「そのうち連中も、いつだって隣にいる〝死〟の存在に気付きはじめる。それを目の前にして、人は選択を迫られる。一つは諦めて受け入れること――そして、もう一つがエミリーも選んだこと」
そうだ、ファゼットはそれを知っている。
「〝だがそれでも〟と、一歩を踏み出す」
「――俺みてえな存在を増やそうってのか?」
「それが嫌だから汚れ仕事をしているあんたが、どうして、ここで単独行動なのと、私はさっきから言っているけれど?」
「――ッ」
「手のかかる子ねえ」
滑り落ちるようにして山を下っていくファゼットの背中を見送りながら、吐息。こちらの意図を読み取るようならば、こんな状況を作らなくても良かったのだけれど、それは望み過ぎだ。
さてと、腰に手を当てた鷺花もまた、下山を開始する。
のんびりと、ファゼットに追いつかないように。
※
正確に時間を数えられている者はいない。だが間違いなく、三十分以上、息のつく間もないほどの戦闘が行われていた。
学科がそれぞれ違うとはいえ、最低限の戦闘訓練はカリキュラムに含まれている。だがそんなものは役に立たないと、今、証明され続けている。
息も絶え絶え、躰も重くて思考が上手く回らず、ともすれば視界すらぼんやりと霞む中、それでも動き続けなければ致命傷を負う。
三人が三人とも、感じたはずだ。
一秒先に存在した〝死〟という可能性を、ぎりぎりの領域で回避できた瞬間が、間違いなくあったから。
――いつの間にか、追撃がやんでいた。
はあと、デディが吐息を落とす声が聞こえて、
もう終わりなのか? ――そんな甘えに似た、救いを求めるような思考が頭に浮かんだが、頬の泥を拭いながらも否定する。
甘えがあったから。
こんなにも満身創痍なんだと、唾液をごくりと飲み込んだ。
「――」
音がした。
左右、そして上へ視線を向けた
「伏せて――」
「え?」
傍にいた藍子の手を思い切り引っ張れば、崩れ落ちるようにして地面へ。背後にいたデディに視線を投げれば、すぐに伏せた。藍子もまた同様の姿勢を取りながらも、二重の物理結界を正面に向けて張った。
「地滑り⁉ 耐えられるのか
あまり離れるのも悪いと思って、匍匐前進の要領で近づいたデディは、腰のポーチから宝石を取り出して弾き、三つ目の結界を補助。既に声が届かないほど大きくなった地鳴りと共に、圧倒的な質量が山の上から流れてくる――
「――ばっか野郎が!!」
真横から飛び込んできたファゼットは、あろうことか三つの結界術式を強引に消し飛ばし、ぎりぎりのタイミングで先端の尖った結界を張り、三人の上へかぶさるようにして。
土砂が彼らを飲み込んでいく。
心の中で秒数をカウントしたのは誰だったか、けれど二十秒ほどで一切の音が消えた。
「――」
土を押しのけて躰を起こし、すぐに立ち上がったファゼットは、舌打ちを一つ。
「面に対して、面で防御してどうする馬鹿! おい藤崎、てめぇが気付いて然るべきだろうが! 畑中は周囲察知からもっと早く報せろ! てめえもだ椋田、二重結界くらいで防げるわけねえだろ! 専門に
そこから、何かを続けようとしたファゼットは、しかし、軽く目を瞑って、大きく息を落とした。
「悪い、言い過ぎた。先にお前らを捨てたのは、俺だったな――」
泥だらけの三人を見て、ファゼットは右手を木に当てると、そこから
「エミリーさん?」
「おう藤崎、ナイフあるか」
「あ、うん、一本だけ持ってきたけど」
「貸してくれ」
「わかった。――霧?」
「警備隊が使ってる術式を誤魔化すのに意識を割けないからな。それと、知覚範囲の拡大。……ん、壊してもいいか」
「贅沢は言わないよ」
「そうか。――動くなよお前ら、せいぜい死なないよう気を張ってろ」
直後、霧の中から姿を現した鷺城鷺花――上空から振り下ろされる刃物に合わせるよう、知覚できていたファゼットが応じるが、一手目で既にナイフは破壊された。
着地点を狙った左の蹴りは、読んでいた鷺花が上半身を反らすことで回避されるが、途中で止めた左足は最初から踏み込みのため――左手には、今しがた壊されたナイフと同じものが既にある。
だが、それすらも予測の内。
肘の内側にぽんと、軽く鷺花の左手が触れるだけで、狙いは首の横に反れ、そのまま踏み込まれれば肘が顎へ。
みしりと、骨が軋むような音があり、一瞬の停止を見せながらも堪えきれず、ファゼットは吹き飛ばされた――が。
周囲の霧が刹那にて凝固、無数の細かい氷の針となって鷺花に降り注いだ。
「――」
鷺城鷺花が
背中からファゼットが木にぶつかる。
鷺花の周囲を巻き込むように針が飛来する。
――二人の姿が、ぱしゃんと、
霧が消えて視界が広がり、音が消えたような錯覚があった。三人は誰も追いつけず、ただ、結果だけを目にした。
右手の服の袖を木に縫い付けられ、背中を叩きつけられたファゼットの首横に、突き立てられたナイフ。いつしか口の端からは血を流しながらも、戦意だけは失わずにいる彼の前に。
「だらしないわねえ」
なんという言い草。この状況を見てもっと他にないのかと――思えるほど、余裕のある人はここにいない。
「こんなんじゃ話にならないけれど、優しい私は六十分の休憩時間をあげるわ。まったく、まともに親睦会もできないなんて、たるんでるのかしら。それとも、よっぽど脳が天気なの? 仕事をするだけ番犬の方がマシね、賢いし」
言うだけ言って、背中を向けて一歩、それだけで鷺花の姿は消えた。僅かに残った魔力残滓から、術式を使ったことはわかったが、どんなものかはわからない。
まず、首の横のナイフを引き抜き、続いて袖口を縫いとめていたものも抜いて、口の中にたまった血をファゼットは吐き出す。この二本は、ファゼットが作ったものだ。
「――おい、休憩をやるから感謝しろってよ、あのクソ女。移動だ、近くに小川がある」
軋むような痛みを伴いながら、ファゼットを先導として移動すれば、すぐに川を発見した。一メートルほどの幅で、山頂付近から流れてくる水の量は比較的多く、手を入れれば傷に染みる程度には冷たい。
面倒だ、と思ったファゼットは顔を突っ込み、口の中の血と一緒に顔を洗う。それから何度か喉を鳴らすようにして水を飲み、近くにあった岩に腰かけた。それを見て三人も続いたので、少し集中するように術式で周囲に薄い膜を張るようにして、監視を誤魔化す。
「……助かったよ、エミリーさん」
「どうだかな。俺が来なくたって、どうにかなっただろうさ。たぶんな」
「それ、僕のナイフじゃないよね」
「ああ、構成を読んで俺が作った。厳密には構成そのものも改変されてるから、見た目だけは同じというか、流用したっつーか……」
視線を落とし、ナイフを弾けば水になってファゼットの手に吸収された。
「はは、冒険科、下から二番目だって?」
「よく知ってんじゃねえか。だいたい、今みたいなのを戦闘訓練でやってみろ、
そんな言い訳が通じるはずもないのに。
「……? ねえエミリー、これなにやってんの? 目隠し? 解析していい?」
「うるせえボケ、泣かすぞ」
「泣きたいのはこっちだよ! 研究ばっかしてそれ仕事にして楽に生きるあたしの人生設計どこ行った⁉」
「そんな人生を計画してたのか、畑中さんは……どう考えても無理だと思うけどなあ」
「うっさい!」
「落ち着いたなら体力を回復させろ間抜け。あのクソ女への対策の前に質問が一つ。大剣を影に収納した術式、あれについての見解を聞かせろ」
「――三次元式の
「あ、うん、はるちゃんに同意見。床じゃなくて影の中っていう点だけど、本体と影はそもそも分離しないものだから、そこらを利用したんだろうって。あと、保管や保存に際して、一時的に縮小化する術式が利用されてるんじゃないかな」
「リュックの内部を多重構造化して、より多くの物品を詰め込む開発はされているし、重量そのものの問題も一時的にせよ解決はできる。ただその場合、リュックっていう品物ありきだ。術式そのもので構築しても〝維持〟っていう問題が出てくるはず」
「常時展開する魔力量が少ない? たとえば、自然発生する自己魔力とか、自然界のマナとか。それともスタートの勢いを使って半永久機関で巡らせてる? いやその場合、必ずどこかで破綻するし、中身がどうなるかもわかんないかあ」
「常時展開されている術式が多すぎる点で効率化は着目すべき。でも、マナは使ってない」
「そもそも僕は、鷺城さんの
「あたしも」
「……、エミリー、この薄情ものー、答えろー」
「ん、ああ、まあ〝条件〟に関しては頭が痛いな」
スラックスのポケットから取り出したケースの中、入っている三本の内の一つを口に咥え、火を点けた。
「煙草吸うんだ」
「あー、一日三本って制限付きだけどな。まともに働けるようになりゃ、こんな制限もなくなるんだが」
「それよか、条件ってなにさ?」
「藤崎はリュックだと言っただろ」
「うん。わかりやすいだろう?」
「リュックの中に、抜き身のナイフを入れるやつを、世間じゃ間抜けって言うんだよ。だから〝鞘〟に入れる。だとして? その格納庫はどうなんだ?」
それは。
「リュックなのか、鞘なのか――難易度で言えば、間違いなく、鞘の方が簡単だ。何故って、用途が限られる……あ」
「あーそっか! 逆に制限もかかるんだ。鞘にしてしまえば、刃物しか入れられない。条件付けが違う……そもそも、前提で条件を付属させる必要性がある? 方向性の決定? 空間の確保に定義づけしておいて、追随……あー」
「難易度が高いのは最初からわかってる。エミリー、質問の意図はなんだーこのやろう」
「おい
「あーうん。何がどうっていうより、もう、死にたくないって気持ちで一杯だった」
だろうなと、紫煙を吐き出す。
「鷺城の見解はこうだ。訓練で死ぬのも、実戦で死ぬのも変わらない」
何かを言おうと、誰かが口を開くよりも前に。
「――俺も、同意見だ」
ファゼットが先に肯定する。
「だが、それにお前らが頷く必要はない。ただ、そう考えるヤツがいることは念頭に置け」
「……どうしてエミリーさんは、そう思ったんだ?」
「どうして? 簡単だ、――現実ってのは、そういうものだと、俺は経験した。隣に死があって、いくら遠ざけようとしても、そいつは離れない。いつでもそうだ、常にそうだ。今日追い詰められたから、見えたんじゃない。ただ気付かなかっただけで、あいつは、死は、朝起きれば隣にいるんだよ」
だからこそ。
「甘ったれるなと、俺は――まあ、教わってる。お前らが真似をする必要はねえよ。ただ、そういうものだと、覚えておけ。俺だって偉そうに言えるほどじゃねえよ」
「……まあ、僕も実力不足は痛感してる。いや、不足しているのは発想かな。状況を知らないと、何を作ってもがらくたも同然だ」
「言いたくはねえけどな、はっきり言って〝専門〟なんて馬鹿らしいもんはねえよ。誰が、何に、どうやって使うのか――研究も物作りも、そこが大前提だ。自分が経験してねえなら、誰かが経験してる傍で見てなきゃ、無責任だろ」
「うー……痛いこと言うなあ」
「でも実際そうだよ。包丁を作ろうって時に、どんな使い方してるのか知らないと、ただの量産品の間に合わせじゃないか。それに、状況に応じて使い分けるのは当然だけど、そこに対応できるかどうかの幅を決めるのは、僕のような作り手だ」
「反省は後でな。それよりも、あのクソ女どうするよ」
「あー、あれなー、どうにかしろよエミリー」
「だから、なんで椋田はそう偉そうなこと言ってんだ……?」
そうして、ファゼットが煙草を吸い終えた頃、下流からどこか不機嫌そうな鷺花が姿を見せた。視線をお互いに交わし合う。
「あークソッタレね、あの警備隊。ちょっとあんたたち、舐められてるわよ? ガキを相手にあんな追い込み方をするなんて、どういうことだ――とか、間抜けが言ってたわ。未熟なクソガキを相手なら、水遊びでもしてろって暗に言われてんのよ。ちゃんとなさい」
「その警備隊の人、殴っといてー」
「同感だな。ろくに監視も満足にできねえクソ野郎が、一丁前かよ」
「……ノーコメントで」
「え? あたしオチ? 知らんわー」
「はいはい。意見交換は終わったんでしょ? これで親睦会は終わりよ。最終的には三十六時間の殺し合いくらいは、目標にして欲しいところだけれどね」
「え、終わりなんですか?」
「なあに藤崎、この状況で続けられるだけの体力ある?」
「ありません……」
「だったら、女二人がそれに勝っているはずもないでしょ。さて、指針が必要でしょうから課題を出しましょう。んー、まあねえ、どうかしらねえ」
右手を外套のポケットから取り出し、十二枚の小型術陣を掌の上に浮かべる。
「――鷺城さんって、術陣使うんだ?」
「ん? ああ、私の基礎部分がそうなったから、常に使うようにはしてるわよ」
その術陣を握りつぶすようにすれば、掌には鉄の板が四枚。
「はい、受け取りなさい。四枚とも同一の板よ。私は優しいから、一ヶ月の猶予をあげましょう。どんな方法でも構わないから、その板を壊しなさい。ただし、あまり外部の人間に見せないように。相手が興味を持って、壊そうとする行為を防ぐためよ。つまり、壊して下さいと言うのは駄目だけれど、どうすれば良いのかと他人に訊ねるのは良しとする。質問は?」
「あのう」
「なあに、畑中」
「もしできなかったらどうなるんで……?」
「まだ一ヶ月経過していないのに、達成できないことへの配慮を考えるような間抜けなら、最初から期待していないけれど、どうなの落ちこぼれちゃん?」
「むっ……」
「泣きながら今すぐ、できませんって頭を下げるなら、教えてあげてもいいわよ?」
「教えて貰わなくても大丈夫ですー、あたし泣いてませんしー」
「ほかに質問がないなら、とっとと下山して屋敷に戻りなさい。役に立つクソ侍女が夕食作って待ってるから。明日からは自分たちでちゃんと作ること。朝食だけは、しばらく作るよう言っておいたけれどね。ほら、私優しいでしょ?」
その言葉に対して、全員は沈黙して答えなかった。
間違いなく、この鷺城鷺花という女は、優しくなんかない。
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