第115話 一話丸ごと風呂会ムフフ
どうしてこうなった。何故俺は本来幸せなはずの女子の裸を見てこんなに気が滅入っているのか。
状況を説明しよう。ティンがお茶を落とした後、派手に俺の服へお茶がかかってしまった。
それは別に構わない。全く気にしていない。
しかし、その後風呂に入っていると事件が起こる。ティンとカチュアがすっぽんぽんで風呂に入って来たのだ。隠すところを全く隠さずにだ!
彼女達は恥ずかしく無いのか……一応俺は男なんだけど。
ええと、カチュアはそもそも羞恥心が無い。ティンは裸を恥ずかしく思うのではなく、胸が小さい事が恥ずかしい。そして、俺の趣味はバレていないが、彼女は少なくとも俺は胸が小さい事を気にしないってことを分かっている。
結論、二人とも裸でも恥ずかしがらない。そもそも、文化が日本と違うのだ。風呂の習慣は無かったが、行水するのに男女の関係などない世界なのだ。
じゃあもう、いっそのことティモタやエルラインも呼べばいいんだ!
と思ったが俺だけ興奮してるのを彼らに見られるのも嫌だ。
ちくしょう。最近は誰も来なかったのに! ミネルバも来ないように、彼女へ俺が風呂に入る時間にはおやつを与えるようにしてたんだよ。
それなのに、何だ。この状況は!
「や、やあ。二人ともどうしたんだ?」
思いっきり動揺する俺の声に、彼女らはいい笑顔で俺に応じる。
「ご一緒したらダメですか?」
「ピウスさん、たまには一緒に入りたいな」
ぐうう。既に裸じゃないか君達!
「ま、まあ。たまには……」
俺の了承の言葉を聞いた二人は俺が浸かる湯船へ入ってくる。
ち、近いよ!
入るのはいいけど、近い!
右手にはカチュア。左手にはティン。
もう胸が俺の腕に触れそうな距離なんだが。湯船は広いんだからもっと広々使おうよ。
「ピ、ピウス様、そのお……」
ティンはお湯の熱さで少し紅潮した頰を見せ、上目遣いで俺を見つめてくる。
「どうしたんだ?ティン?」
「あの……」
ティンにしては、珍しく歯切れが悪いな。いつも元気一杯でハキハキしてる印象なんだけど。
言い淀むティンをジッと見つめていると、彼女は顔を赤く染めたまま目を逸らす。
「み、見つめ過ぎです。ピウス様」
「わ、悪い」
その反応はグッと来る……可愛いじゃないか。ハッ! いかんいかん。
「ええと、ピウス様は女性に興味ありますよね?」
「あ、ああ」
いきなり何聞いて来るんだ……ティンにこの前襲いかかろうとしたじゃないか俺……ミネルバに邪魔されたけど。
ティンはうつむきしばらく停止した後、意を決したように俺を見つめる。
「その、ピウス様は男の人にも興味がおありなんですよね?」
「え、ええ?」
どうしてそう来る? 俺、そんなそぶり見せたっけ?
「その、エルさんの事を好きなんですよね?」
待てこらー! どう考えたらそうなるんだよ。男同士と言えば男同士だけど、エルラインは人外だぞ。亜人とはレベルが違う。
銀のサイコロを調査する代わりにずっとエルラインには手伝って貰ってるけど、彼は遠距離会話もできるから外へ出る時に居てくれると助かる。
もし、エルラインが居ないとなれば、エリスかパオラの手も借りないといけなくなる。
「エルは良い友人だとは思ってるけど」
「ピウスさんがエルさんのお家に行ってたりしたとか聞いたよー」
今まで黙っていたカチュアが口を挟んで来る。
ま、まあ彼女の言う通り、何度もエルラインの家には行っている。未だにどこに彼の家があるかは分からないけどね。
「家に行ったからといってどうしてそうなるんだよお」
「ピウスさんが誰とも寝てないって噂だから、男の子が好きなのかなーって」
カチュアはあっけらかんととんでもない剛球を投げてきた……
なるほど。ティンがカチュアを連れてきた理由が分かったよ。ここまでの直球はカチュアでないと聞けないよな。
「誰も抱いてないからと言って、その発想はないだろう! ベリサリウス様だって俺と同じじゃないか」
「ベリサリウス様はエリスさんと寝食を共にしてるじゃないですか」
ティンがすかさず割り込んで来る。
ティンよ。君は大きな勘違いをしている。ベリサリウスがエリスと寝食を共にしているからと言っても、彼がエリスを抱いていると思わないことだ。
俺は確信しているぞ。ベリサリウスとエリスの二人に肉体関係は無いと。
説明したいが、ベリサリウスの名誉とイメージに関わるから彼の美観は俺だけの秘密だ。
よって、ティンの勘違いを指摘する手段が無い!
俺が思案している間にもティンが更に言葉を続ける。
「エリスさんのガードが硬いのもありますけど、ハーピーにも猫耳にもベリサリウス様に愛されたい人がいっぱいいるんですよ!」
「そ、そうなのか……」
「そうなんです! エリスさんも何も一人占めすることは無いと思うんです!」
ティンは力説するけど、浮気を堂々としろってのはちょっとイッテル発想だと思うぞ。俺は。
「ベリサリウス様が浮気などしそうには無いけど」
「ベリサリウス様ほどの人となれば、子供を授かりたい人はいっぱいいるんです! 夫婦になろうとまで望んではいないんですよ」
「そ、それはベリサリウス様の倫理観的に厳しいと思うんだけどなあ……」
こういうところだけは動物的というか、文化の違いというか。
「私だって、人間の恋愛と結婚の事は理解してますし、私たちだって普通はそうです。でもベリサリウス様は違うんです」
「それはどういった事なのかな?」
「ベリサリウス様の血を各種族は取り入れたいのです。亜人の英雄の血を。その血を後世に語り継ぎたいのです」
「なるほど。それは別の視点だなあ。理解は出来る。ベリサリウス様にも相談しても良いと思う。ただ、彼女達から直接ではなく族長なりから……」
英雄ベリサリウスの功績を血を後の世に伝える為に、彼の子孫が欲しい。意味は分かるし理解できるが、俺の倫理観的にはアウトだよ……
「ピウス様! ピウス様はやはり男の人しか愛せないのですか?」
ティンは哀しそうな顔でうつむく。
いや、ティン、この前抱きしめたよね?
「いや、そんな事は……」
なんかこの言葉はさっきも言った気がするぞ。
すると何を思ったのか、ティンは俺の腕に胸を押し付けて来る!
お、おっぱいの感触があ。ティンのおっぱいはムニュっとは来ないがこっちの方が俺は興奮するんだが!
ってカチュアまで真似しておっぱいを俺の腕に押し付けて来た!
カチュアのおっぱいはティンほどでは無いけど小さい。割に好みだ。
そんな事を言ってる場合ではない! 左右からおっぱいに……じゃないティンとカチュアに挟まれ、男としては万歳、ありがとう! な感じなんだけど、今は逆だ。
ま、まずいぞ。俺のアレが起き上がっておられる。鎮まれ!俺のアレ。
何を思ったのか、カチュアが顔を俺の肩へ乗せ、横から抱きついて来た!
脚が俺の腰に絡むような格好でだ。
あ、当たってるって。何がとは言わないが。
「ピウスさん。女の子でも大丈夫そう?」
俺の肩に顔を乗せたまま、俺の顔へと目を向け、とんでもないことをのたまうカチュア。
だから、最初からそう言ってるだろうが!
「ピウス様ー!」
カチュアに先を越されたからかティンが切なそうな声をあげる。
「ま、待ってくれ! 二人で迫って来ないでくれえー!」
ティンが俺を後ろから抱きしめ、顔を俺の耳元に近づける。
「何でダメなのー?」
不思議そうな顔でカチュアが俺に問う。
ダメじゃないカチュアの気持ちが俺には分からねえよお。
ティンー! 俺の耳にキスしないでくれ。理性が飛びそうだから。
「ピウス様! 私は三人でも構いません!」
ティンはますます積極的になり、俺の肩や胸を撫でてくる。俺の首筋から耳まで何度もキスをしてくる。
カチュアはカチュアで、脚を揺らして俺のアレを刺激して来たかと思うと、俺をじっと見つめ、目を瞑る。
「ピウスさんー」
カチュアは手を俺の胸に置くと、体勢を変え、正面から俺を抱きしめ口づけをしてくる! 目は瞑ったままなのに器用だな……
だー! そんな場合じゃねえ。どうする俺?
※なんだこの温泉宿……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます