第26話 輝きに消えた日

そして...運命の日

朝の列車に乗る

いつも通り光と澪が居る

俺「...」

光澪「...」

お互い黙ったまま列車は進んで行く

そして二木島に着いて善子が乗る

善子も黙ったまま俺達の所に来る

そして列車はすぐに波田須に着く

神姬がいつも通りに乗って来る

神姬「おはよ〜」

俺達「...」

神姬「ん?どした遼?おはよ〜」

俺「...ん!?あ、あぁ!!おはよ!!」

光達「おはよ!!」

神姬「お、おぉ...ど、どなえしたんや?まぁ何もなかったらええけど、でさでさ...」

何とかなった

...いや、何をやってるんだ俺は

マイナスに考えたって意味がない

気楽に行けばいい、そう、気楽に

そう思い込ませて終業式を終えた

まるで学校に居たのかわからないくらい早かった

そして学校が終わる

周りの奴らは遊びに行こうとかワイワイ言っている

しかし俺達は違う

神姬には用事があると言って先に神姬を帰らせた

俺達は先生の車に乗せて貰うことにした

俺と澪と光は担任

愛と善子は小町の車に乗った

澪「...遼」

俺「ん?」

澪「大丈夫や」

俺「...あぁ」

やっぱり落ち込んでしまう

澪はそんな俺を見て黙る

そして車はすぐに神姬の家の近くに着く

家の前には神姬とおばあちゃんが居た

おばあちゃんの手には何か古いカバンのようなものを持っている

神姬は...え!?

神姬は目を閉じたまま制服姿で立っている

まるで生きている感じがしない

おばあちゃん「よう来てくれた...じゃあ、ついてきて」

そう言っておばあちゃんがヨボヨボと歩き出す

ついていくと海岸に着いた

神姬は眠ったままだ

光「な、なぁ...今から何をやるんだ?」

おばあちゃん「今から...弟の霊の成仏を行いんよ...安心して、普通にやれば失敗なんてしないんよ...」

俺「神姬は...今どうなってるんですか?」

おばあちゃん「今神姬はわたしの能力で深い眠りにつかせてるんよ...恐らく生きてる感じがしないって思たかもしれへんけど大丈夫...生きてるから...」

俺「...おばさん...いや、おばあちゃん...!必ず成功させて下さい...お願いします...!!」

俺は深く礼をする

それを見て少し驚くおばあちゃん

おばあちゃん「...遼君の願い...しっかりと受け止めるわ...わたしもこれが最後の仕事になるやろうから...それでは...今から弟の霊の成仏を始めます...皆にやってもらうことはただ一つ...霊の成仏を祈るのみ...ただし、わたしが良しと言うまで一言も喋ってはいかんよ...?じゃあ、始めます...今から喋らずに祈ってください...」

そう言って神姬を砂浜に寝かせる

そして数珠を取り出して手を合わせる

俺達もそれと同時に祈る

「はぁあっ...!!!!」と物凄く強い声が聞こえる

...頼む...神姬ぃっ...!!!!

皆の思いはただ一つ

...そして数分が過ぎた

おばあちゃん「...良し!」

俺達「...」

静かに目を開ける

...今、終わったのだ

おばあちゃん「...成功した」

俺達「おぉ...!!」

おばあちゃんがそう言うと神姬はゆっくりと目を開ける

神姬「...」

俺「おーい、神姬〜」

神姬「...」

光「おーい、どうし」

光が神姬に近づこうとした瞬間だった

おばあちゃん「...近づくな!!!」

光「へ?...うおっ...!?」

神姬「...」

俺達「...!?」

...え?

今...何が...!?

神姬が...光を...!?

光は腹を抑えて悶えている

すると神姬がじーっと俺を見ている

おばあちゃん「...」

おばあちゃんは恐ろしい顔をして震えている

おばあちゃん「そ、そんな...馬鹿な...」

俺「...な、何があったんですか!?」

おばあちゃん「じょ...成仏したはずの弟の霊が神姬に取り憑いたんや...!!こんな事なれへんのに...このままやと...神姬の魂がこの霊に支配されて...元も子も無くなる...!!」

澪「は、はぁ!?...ど、どうにかなれへんのすか!?」

おばあちゃん「...皆で神姬を止めればどうにかなる...とにかく神姬を止めてくれ!!時間が無い!!」

澪「遼!!後ろ!!」

俺「え...!?」

後ろを振り向くと神姬が俺に殴りかかってきた

何とか寸前で避けた

そしてまた止まる神姬

「...うぉあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

神姬が叫び始めた

それを聞いた瞬間寒気がした

何だかおぞましい感じがした

それと同時に俺の方に向かって殴りかかってきた

なんとか避けたが神姬は容赦なくどんどん来る

そして1発当たって俺は砂浜に転ぶ

神姬は勢い良く拳をぶつけようとしてきたが

それを担任と澪で羽交い締めにして止める

担任「うおぉっ...神姬...どうした...!?」

澪「神姬...どなえしてん...!!」

神姬「...うぉあああっ!!!」

声を荒らげて担任と澪を振り飛ばす神姬

そして俺に近づこうとする神姬の足を澪が掴み転ぶ神姬

そして澪が神姬に馬乗りになって神姬を止める

澪「神姬!!目覚ませや!!!」

愛「くうっ...力が強い...!!!」

神姬「うぅ...!うあぁああ!!!」

発狂しながら暴れ回る神姬

皆で必死に神姬を止めようとするが神姬の凄い力で俺達全員を弾き飛ばす

そして神姬を抑えようと掴み合ったり気絶させようとするが中々上手くいかない

それに夏の暑さもあって俺達の体力がどんどん無くなって力が無くなってくる

それでも俺達は神姬を止めるのに必死だった

そんな時だった

俺と光とで神姬を抑えていた

そしておばあちゃんが構え始めた途端に暴れ始めた

俺は砂浜に転んで神姬が俺に馬乗りになる

俺「くっ...神姬ぃっ...!!頼む...目を...うぅっ!?」

神姬「うぅ...!!」

馬乗りになった瞬間両手で俺の首を絞める

力がほぼ無かったため手で離そうとしても離れない

光達が止めに入るがすぐに弾き飛ばされる

俺「うっ...あぁっ...!!神姬...は、離してくれ...」

あぁ...意識が...

周りが白くなっていく

すると何かが響いて来た

「...うっ...うぐっ...うぅっ...」

ん...?

な、泣いてる...声...?

この声...まさか...神姬...?

神姬が...泣いてる...?

...ん!?

今一瞬だけ神姬の目がいつもの神姬の目をしていた気がした

まだ...神姬はまだ居るんだよな...?

神姬は生きてるに違いない

こんな事で...諦めてたまるか...!

意識が薄れて行く中右腕を神姬の目の前に持っていく

神姬...これを見て思い出してくれ...!

そこには...神姬と俺の恋人の証である腕輪がある

神姬の魂がまだ支配されてなければ...頼む...!!

その時だった

神姬「...うわぁあっ!?」

光達「!?」

腕輪を見た瞬間神姬は目を隠して奇声を発しながら暴れ回る

光「どうした...?」

澪「あの腕輪見た瞬間あぁなった...つまりまだ神姬おるっちゅー事か!?」

おばあちゃん「今や!!早く!!」

光達が神姬を抑える

すると動きがぴたっと止まる

俺「神姬...?」

神姬「...っ...早くっ...!!!早く!!!」

俺「神姬...!?おばあちゃん!!早く!!」

おばあちゃん「ていやぁあああっ...!!!」

ティィイイイーーー...ブチョン!!!

な、何今の!?

おばあちゃんが両手から物凄く眩しい光を神姬にぶつけた

凄い...何か物凄いパワーを感じた

アニメのようだな...なんて思ってる暇はない

神姬は腹を抑えて悶え苦しんでいる

するとゆっくりと立ち上がり始めた

「うぅ...うぁっ...あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

頭を抱えながら高く耳に刺さる程の奇声をあげはじめた

すると神姬の口から黒い何かが飛び出した

その瞬間神姬はバタりと前に倒れる

俺「神姬!!!」

急いで神姬の所に行く

目を閉じていたが少ししてから意識が戻った

神姬「...うっ...りょ、遼...?」

俺「分かるか...?俺だよ...遼だよ」

そういった瞬間神姬が俺に泣きながら抱き着く

するとさっき出てきた黒い何かが動き始めた

これが弟の霊...!?

確かに凄く邪悪な気感じる丸くて黒いスライムのような物体だ

すると突然

「皆!!出ておいで!!」

とおばあちゃんが言う

え?と思っていると何と優希達と佐奈と凛と陽矢が出てきた

いつの間に...?

そして光が俺の方に来る

俺「これは...?」

光「...遼...今まで...ありがとな」

俺「は...?な、何言ってんだ?」

光「...アタシ達...もう行かなきゃならないんだ」

俺「...え...?」

嘘だろ...まさか...光達も...?

いやいや...そ、そんな理由...!?

嘘だ...え!?

光の身体が...光ってる...!?

いや、光だけじゃない...皆!?

担任と小町以外の身体が光り始めた

俺「嘘だろ...ま、待てよ...こんなの嘘だ...嘘だろ!?」

光「...今まで黙っててごめんな...実はアタシ達...既に死んでるんだ...」

な、何言ってんだよ...そんなバカな...

すると皆が俺の前に来る

優希「遼...俺は...お前と出会えて幸せだぁ...本当に...ありがとな!」

太郎「また...俺達と飯でも行こうぜ!!」

駿「遼、お前は1人じゃない。俺達が居るんだよ」

戎「そうだ...俺達が居なくなっちまっても...一生見守ってるからよ」

翔「俺達と...遼の友情は一生続くのさ、だから遼!強く生きるんだぞ!!」

佐奈「...遼...今までありがとう...!!!」

凛「遼と居った時間この先一生忘れへんから...!!!」

善子「遼さん...もう会えなくなってしまいますが...本当に...本当にありがとう...!!」

澪「...遼、ウチを強くしてくれてありがとう...!!あの世では...陽矢と一緒に暮らすけど...遼の事は一生忘れへんから...!!」

陽矢「ありがとうございます...!」

愛「私とは...物凄く短かったけど...何だか...遼君と居ると楽しかったわ...楽しかった思い出ありがとう...」

「グワァアアアアッ...!!!」

黒い物体がどんどん大きくなり始めた

おばあちゃん「皆...行くで!!」

光「待って!!」

おばあちゃん達「...!?」

光「...遼」

俺「...え?」


「...神姬と、幸せになれよ」


光はそう言ってニッコリと笑いながら肩を叩く

何だあの笑顔...

今までの笑顔とは何かが違う

すると皆の身体が光初めて1つの光の玉になっておばあちゃんの手に吸い込まれた

俺の目の前には光達はもう居ない

そして手には黄色い光の玉が浮いている

すると突然立ち上がる神姬

おばあちゃん「準備はええか...神姬」

俺「...え?」

神姬「...ええよ」

神姬がそう言った瞬間おばあちゃんも光の玉となって玉の中に入った

俺「ま、待てよ...どういう事だよ...」

神姬「...」

神姬を見ると少し微笑みながら泣いている

神姬「...わたしさ、遼のおかけで強くなれたんよ。...いつも...いつもわたしの隣におってくれてありがとう。わたし...めっちゃ嬉しいわ」

俺「は...!?待ってよ...なぁ...嘘なんだよな?嘘なんだよな!?」

「グォアアアアッ...!!!」

物凄く大きい黒い物体がこっちに向かって歩き始めた

神姬「そろそろ潮時やわ...」

俺「.....待ってよ...」

すると神姬が俺に抱き着く


「遼...今までありがとう...さよなら...」


俺にそう言い放つと神姬は黒い物体の方に身体を向けた

そして...涙を拭って走り始めた

まるで全てに立ち向かうかのように

俺はただただ足も動かずに見る事しか出来なかった


「はぁああああああああーーーー!!!!」


神姬は...皆の魂、願いを背負いながら


...ドゴォオオオオオオオン!!!!!!!!


走っていった


その時見た輝きは、何故か悲しさを連想させた。


...


腕を顔から離すと目の前には煙が舞っている

潮風が吹くにつれてその煙が薄れていく

段々前が見えてきた

そこには......誰も居ない

そこに居たはずの...居たはずの神姬も居ない

誰も居ない

光も、優希も、おばあちゃんも

丸で何も無かったかのように

ただ...一つ残っていたものがある

それは...神姬と共に付けていた腕輪

落とし物のように落ちている腕輪

その腕輪を手の平に乗せてじっと見る俺

...神姬.........

何故か...何故か余計に涙が零れる

...

っ...皆...神姬ぃっ...!!


うわぁあああああああああっ...!!!!

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