IRON HORN

 登場人物


 ブランペイン……アドラスティア第十二柱。幼さを残す少女ながら、巨人の腕は一流。

 オルコック……アドラスティア第四柱。背が高く寡黙な男。

 ホームズ……アドラスティア第一柱。総督代理を務める。


 海上には鋼でできた砲門と真っ黒いタールの滑走路があって、それより下にはにぶい墨色をした要塞が広がる。ここはアドラスティアの本拠地で、十数年前からキロム海峡の北小島にある。

 うちはひとつ後悔をしてる。やっぱりひとりはさみしかった。なんでグレイスを連れて行かなかったんだろうって、今では思う。ウエストバイアから亡命するとき、もうひとりいてもどうにかなった。脱走も警備プログラムの変更や教官の排除くらいわけなかったし、ネメシスの人に取り入ってキロムへ行くことも失敗の余地はなかっただろう。うちは自分の弱さが憎かった。グレイスならいつか安全に抜けられるから、危険な道はうちだけで行く。そんなことを言いながら、うちは逃げてただけだったんだ。うちが守るよって、その一言だけで今幸せだったのに。

「……うん、そんなこと言ってても仕方ない。グレイス、待っててね」

 今、助けに行くから。思い出すたびに、そう心に決める。そしたらもう、四年が過ぎてた。

 キロムで出会ったハレーというおじさんは、結局うちを買った。けどベッドに座って初めてしたことは、うちの目を見ることだった。

 目を見てくれ。なにが見える? おじさんはそう言った。うちには砂漠のオアシスと蒼い目の女の人が見えたから、そう答えた。おじさんは驚いていた。自分の目に狂いはなかった、それは自分にとって大切な場所だと、そういうことを言った。

でもうちは大事なことを言わなかった。その女の人は確かにおじさんを愛していたけど、その目の奥に暗い影が見えた。あの人はおじさんのために、何かをしてくれるようには見えなかった。

 うちの目は、昔からいろいろなものが見える。人の感情や行動、巨人を通して乗り手のイメージがわかったりもする。フレインではそれによって惑わされもした。あれはおそらく、うちに近いものだ。どこが近いのかはわからない。この力か、心のあり方か。でも、近いということはそれだけで不快だった。

 もうひとつ、おじさんは気になることを言ってた。君はある男に面影がよく似ている。バイールで最低の、だが最強の指揮官。そう聞いても、うちには分からなかった。そしておじさんはうちを抱かないまま、最後の話を始めた。アドラスティアという言葉を聞いたのは、これが初めてだった。

 朝になると、うちはおじさんに手を引かれここに来た。巨人に乗れる、それだけがうちに必要なことだった。

 ここに来てから、食べ物や寝る場所には困らなくなった。でも人と会うことは少なくなって、そこが少し寂しいくらい。ここにいる人といえば……。

「ブランか、早いな」

「あ、オルさん。この前はありがとね。小さな国だからあんな数いると思わなくて、少し手こずっちゃった。オルさんが指揮官を狙い撃ってくれたから楽に倒せたよ」

「そうか」

 この人はオルコックといって、射撃がすごくうまい。任務には忠実で、油田の時は拠点から潜水艦の上に張り付いて、移動中もずっと狙いを定めてた。こだわりも強いようで、フレインでは敵の手だけを正確に狙い撃った。

「ねえねえ、模擬戦やろ。今週予定無くて暇でしょ」

「構わんが」

 線が細い割に無骨で、かっこいいんだけど口数が少なすぎる。リーブスにはいないタイプだった。

 通路を歩く時は、うちはいつも小走り。歩幅の大きな男の人に合わせるため、キロムでついた癖だ。オルさんは背が高い上にやたら歩くのが早いから、横に並ぶとすこしたいへんだった。

 それに空気がすごく重い。オルさんとの会話が三回以上往復したことはないし、彼の方から話しかけてきたことは結局最初のひと言しかなかった。

「ねえねえ、次はどこいくの」

「わからん」

「そ、うちは巨人に乗れるならどこでもいいよ」

 返事がないから、これだけで会話が終わる。他の人たちは長期任務があるようで、今ここにはオルさんと一般隊員しかいない。だからうちと話す人など限られてくる。うちは戦場で生きている兵士では決してない。だからこそ、話しづらいところもあるのかも。そう思うとたまに話しかけてくれるこの背の高い男の人が、すごく優しい人のように思えてきた。

 格納庫には一般隊員の巨人のほかに、うちの四番機、オルさんの六番機がある。一番機はずっとそこにいるけど、動いているところは見たことない。

 その他は単独任務でいなかったり、壊れてたりする。オルさんが使用許可を取ってくれたので、格納庫から機体が移動している最中だった。この辺りが自動で動くところは、この要塞のすごいところだった。

 うちは四番機に飛び乗ると、その動力をつけた。洋上のカタパルトに両足が固定されると、姿勢を少し低くした。がこん、という衝撃のあと、射出にむけ速度を上げる。地を這い回る巨人なんかには興味ない。加速度を保ったまま地上を離れたとき、くろがねの巨人は一対の翼を得る。聞いた話では、初めて戦場に現れた巨人は地上を浄化する神の使いのようだったそう。黒い箱でうちが見た巨人はもっと泥臭く、もっと陰鬱で、もっと神々しかった。

 でもあそこはうちの居場所じゃない。暴力なら耐えればいい。死地に赴くなら勝ち残ればいい。そう思ってたし、そう思っていたからこそうちとグレイスは強くいられると信じた。そんな認識が崩れるのにそう長い時間はかからなかったんだ。

 操縦桿が手になじむ。この組織がうちのために用意してくれたものだから、うちの力を出しきれるようにできてる。高度を上げ加速度が変わる時の高揚は、うちに今を忘れさせ負けないという絶対の自信をくれた。うちはそれを、神の使いが持つ光輪のようだと思った。

 バスタードを頭上で振り回し、そして向かい合う巨人に向け突き出す。動力部の近くにペイントマーカーを張り付けてあるから、そこに攻撃を当てたら勝ちだ。当たれば塗料が弾け、装甲にかかるからすぐわかる。

「さぁ、かかってきなさい。うちの命はこのバターカップ。これを撃ち抜いたら勝ち。いくらオルさんでも、当たる気なんてしてないよ」

 嘘はついてない。ここにきてから模擬戦で彼に負けたことはない。だけど弾に当たったことはある。彼は格闘技術が高くない代わりに、相討ちになることが不気味なほどうまかった。試してみたことはあるけど、どれだけ先を読んでも彼のマーカーに当てる前に弾は発射されてた。

 そんなオルさんは私が今のようにどれだけ強気にまくし立てても、こう言うだけだった。

「ふむ、やってみる」

 そう言って彼はいつも先に撃ってくる。うちはその軌道がわかるから、見ていない方向へ避けた。オルさんは撃ってすぐにに距離を詰め、私の死角に入ろうと動き回る。雨あられと機銃を飛ばすけど、この距離では当たったりしない。格闘武器を持たずに、ぴったりと近づいてくるのだ。最初の方はただの死にたがりかと思ったんだけど、これがどうも彼の本気らしかった。証拠に彼がひとたび敵のいちばん前に立つと、それがいなくなるまで突進を繰り返した。

 実際、すごく強い。こうなってくると当たらないようにすることはできないから、動力部だけを守って剣を振るうことになる。短銃は出の早い突きのような感覚で使っているんだろう。それは予備動作が小さく、回避時間に余裕がない。バスタードの刃で受けさせられることも多かった。

 それでも、動力部だけは当てさせない。予測される敵の動きに合わせ、流れの中で右手のバックラーを敵の射線に置く。左手のバスタードをときどき両手に持ち直しながら、うちはオルさんの懐に斬り込む。マーカーを潰すだけの威力しか持たないセラミックブレードだから、だいぶ軽い。むこうも条件は似ているから、なんだかんだ実力通りの展開なんだと思う。

 だからこそ苛烈に攻め続ける。戦いの中でうちは、相手の命をより近くに感じていたかった。相手のきれいな部分も汚い部分も全て知りたかった。肌と肌とが触れ合う距離ならば、より鮮明に見える。オルさんはそう言う意味では、わかりやすいタイプだった。

「ほらほら、そんなんじゃうちのはーとは射抜けないぞ」

 深く踏み込む。この一撃を彼が受けきれたことはないし、きっと相撃ちを仕掛けてくる。でも今回はさせない。ほんの少しだけ、変化をつけた。

「ブラン」

 突然の呼びかけにうちは驚いたけど、自信たっぷりに返す。

「なあに?」

「俺の、初勝利だ」

 そういうと、死角にあった左手がすでに目の前にあった。うちは動揺した。とっさに気を張り直し、そのゼロ射程の一撃を受けようと試みる。バスタードを持った左手で小突くような時間はない。それなら……。

「もうちょっとだったね。まだ負けないんだから」

 肘はブレードになっている。特に決まった使い道があるわけじゃなく、装飾みたいなものだ。うちは装甲に触れた銃身を支点に距離を詰め、その肘を叩き込んだ。剣と同じ材質だから、実際の戦闘でも動力部を破壊するくらいの威力はある。

 三次元の戦闘では全身にちょっとした武器を持っておくと案外役に立つ。おしゃれは小物が大事よ、なんて知ったようなこと言う女もいたけど、案外含蓄あるのかも。とにかく今日も、うちが勝った。

「今日はいつもより強かったね」

「結果は同じだ」

 格納庫に収める前に、洗浄機でマーカーを落とす。自動だから、自分でごしごししてたかつてよりすごく楽だ。分解液を吹きかけ、水で流す。そしてうちは私室へ戻るため、オルさんの横でまた小走りしてた。相変わらずこの人の歩幅は大きい。

「ブラン、何故それを着ている」

 うちはどこから驚いたらいいか困った。確かにここでは服装の規則なんてないから、何を着ててもいい。それをオルさんが言ってきたということは、単に気になったからだろうか。

 何かマークのついた白いチェスターコートは、二年前うちを買った名前も知らない人からもらったもの。サイズも違って不恰好だけど、その時は寒さをしのげればそれでよかった。そんなものをまだ着ているのは、あの街に広がる匂いが残っているからだ。アルコールや香水、浮ついた人の汗が、忘れた頃に生地の隙間から覗かせる。右手で掴んだものを左手で投げ捨てるような、明日のない街。そんな風景がうちは好きだった。でも戦場育ちのオルさんにそれは分からないと思うし、言うべきことでもなかった。

「別に、着たいから着てるだけ。暑くなったら脱ぐし」

「そうか、余計なことを聞いた」

 それからまた無言の時間が生まれる。さすがに慣れてはきたけど、退屈なのは同じ。グレイスがいればな。そう思っても仕方がないことはわかってるけど、どうしても頭から離れなかった。

 歩いているとオルさんがつけている端末から小さな音が鳴った。オルさんはそれをちらと見ると、立ち止まった。

「ブラン、集合だ。ブリッジに向かうぞ」

「はいはーい」

 自然と足取りが軽くなる。時々スキップするうちを見てオルさんの頬が少しだけ、ほんの少しだけ緩んだ気がした。

「ねえ、オルさんもうれしいの?」

「何がだ」

「巨人に乗ること」

「嫌いだ。だが離れられん」

「ふーん、じゃあうちと同じだね」

 オルさんは聞かぬふりをして前を向き直す。うちは胸を躍らせながら、その先のことを知るため通路を進んだ。

 地下深くにブリッジはある。この島は地上に出てる分は小さいけど、地盤がしっかりしてるから攻撃にも強いらしい。うちは二日ぶりにこの重々しい自動扉を開けた。

「オルコック、参上いたしました。こちらはブランペイン」

「ねえ、次はどこにいくの?」

 この要塞全てのシステムを司るメインコンピュータがここにある。作業は最大でも五人で行われており、交代制でいつも三人がいる。

 それでその中心で椅子に座ってモニターを見ている人が、総督代理。柱名をホームズといって、見たこともない総督を除けばアドラスティアで最もえらい。

「来たか。オル、ブラン。他の柱は別任務で空けているが、まあいい。察しの通り、貴様らを呼んだのは巨人を使うからだ。今回ある場所から交信が来ている。そこはウエストバイア、ブランならよく知っているだろうな」

 今度はそこを壊してもらう。ホームズはそう言った。

「それって、黒い箱のことだよね」

「バターカップ・フォウよ。同胞だったものを屠るのが怖いか」

 ホームズは苦虫でも噛んだかのように表情をゆがめる。うちはそれでも、言うべきことを言わないといけない。

「こわくなんかない。でもひとつ、忘れものがあるの。それを取り戻すまでは、壊せないよ」

「ほう、それは何だ」

 うちは言葉に詰まった。言えるわけがない。ここはうちだけで生きるための場所。グレイスと一緒にいたいのはこんなところじゃ絶対にない。

「あんたたちにとっては、ちょっとしたものよ」

「そうかもしれんな。だが勝手は許されん」

 おい、資料を送信してくれ。ホームズは傍の男に手で示した。うちは何も言えない。その代わりすべき事をしようと決めた。

「作戦概要だ。連中は我々にジェラールを討伐しようと協力の申し出をしてきた。だがその裏は見え透いている。おおかたジェラールと手を組んで我々を潰そうといったところだろう。馬鹿な真似を。各々が一騎当千であるアドラスティアの柱を、雑兵ごときがどうして潰せようか。連中にはせいぜい、財団が誇る商品の見本市で実演相手になってもらおうか」

 なあオル。少しうつむいた顔を上げ、ホームズは呼びかけた。

「巨人部隊を任す。内容は敵の殲滅と、施設の破壊。オル、ブランを合わせた空六機で問題ないか」

「ありません。必ず遂行します」

「頼もしいな。だがこの話にはもう少し続きがある。奴らからの申し出が来た直後、面白いところから通信を受け取った」

 そう言って白い歯を見せるホームズに、オルさんが口を開いた。

「ネメシス、ですね」

「オル、その通りだ。奴は開口一番、うちと組む気はないかと言った。当然、初めは警戒した。今のトップは彼女なのだからな。歌姫レナ。いつも笑っているが、心は氷のように冷たい女だ」

「それで」

「無論、受けた。敵対する可能性は消しておいた方がいい。それに彼女は利用する価値があるからな。今回は奴らとも共同で黒い箱を狙うことになる。ジェラールがどう出るかは不明だが、仕掛けてくるのなら容赦はしない。それで問題ないな」

「ありません」

「では、これで終了だ。戻ってよいぞ」

 そう言うとオルさんはくるりと反転し、戻っていった。うちは急いで後を追おうとしたが、ホームズに目で阻まれた。エレベーターは一度登って行くと、五分は戻ってこない。うちはため息をこらえながら、次の言葉を待つこしとにした。

「ブラン」

「なに」

「今一度言う。勝手は許さんぞ」

答えない。答える言葉なんてなかった。

「バターカップ・ナインか」

 うちは背中に降りた不快感を必死で隠す。やはり知られていたのか。

「実質奴は連隊の指揮官だろう。無論、我々の第一の標的だ。 その安否まで憂慮する気はない」

「わかった。うちはうちなりに、グレイスを守るから」

 それに。うちはその目に確かな意志を持って、ひとつだけ言った。

「グレイスは、強いよ。あんたが思ってるより、ずっと」

「ほう、我々が遅れを取ると」

「楽しみだね」

 うちは背を向ける。そして示し合わせたかのように降りてきたエレベーターに乗って、その場をあとにした。

 私室に戻る。ここはどうやらある財団の資金を背景にしているらしく、衣食住はもとより遊びにも困らない。戦う理由も商品の見本市だというから、うちらの待遇は悪くなかった。それでもひとりなのは仕方ないか。オルさんも模擬戦以外のひまつぶしには付き合ってくれないから、仕方なくうちはひとりで防音室に向かう。

 防音室に入るとうちは雑然と置かれた楽器の中から、一本のギターを取り出す。三日ぶりの調弦をして、台に腰を下ろした。

 うちにだって多少の心得はある。幼い頃に親父が教えてくれたから多少の曲は弾けるし、即興もできなくはない。うちはうろ覚えの曲をぽろぽろと奏ではじめた。あの曲は、まだ弾く気にはなれなかった。

 不満を溜め込むタイプでもないけど、弾くと気がまぎれる。それはキロムでもやっていたことだ。クラブなんか行くと適当にギターや人まで貸してくれるから、お金に余裕ができたらそこで朝まで遊んだりした。明日の見えない街では、肩に積もった埃を払わないと重さで潰れちゃう。うちはただ生きるためにかき鳴らしてた。

 防音室ではどれだけ鳴らしても壁にあたってかき消される。だからうちは目を閉じて、空っぽの箱から響く音に耳を澄ました。思えば黒い箱の時もそうだった。

 黒い箱には閉ざされた娯楽室があった。リラの事件ののち、クラス間の交流を制限するため閉鎖されたんだ。でもうちはそこに何回か忍び込んだ。もちろんグレイスと一緒に。入る前は、どんなものが隠されてるんだろうって少し期待してた。でも行ってみればなんのことはなかった。マイクのついたキーボードに小ぶりなサクソフォン。埃をかぶった部屋の中で、それだけがよく目立ってた。

 うちは教官の耳に届かないよう、ひとつひとつ小さく音を出した。グレイスはいつも隣で聞いてくれてた。時折聞こえてくる歌声は透き通っていて、すごく綺麗だった。入ってはいけない場所に行くのは、宿舎ではふたりになれないから。うちにはグレイスさえいればよかったんだ。

 うちは手を止めた。聞いてくれない音楽なんて何の足しにもならない。だからこそ、すべきことをしよう。そう心に決めて、防音室を出た。

 分厚い扉を開けると、大柄な影がそこに立っていた。影はじっと見たのち、口を開いた。

「ブランか」

「あ、オルさん。オルさんもここ使うんだね」

「ああ」

 そう言って入っていくオルさんは、いつもより少し疲れ気味だった。

 作戦は年明けに行われるらしい。それまでは紛争地隊での作業が多い。当分はノースランドの小国群に行くことになってるけど、紛争地帯の小競り合いなんか戦いですらない。なけなしの資金で東部のカラノスなんかから型落ち品なんかを仕入れたところで、しっかり整備された巨人には勝てやしない。そんな弱っちい巨人なんか、たとえ百機いたって簡単に壊せちゃうんだから。絶望する敵の声は、冷えきったうちの心までは届かなかった。

 そう思うといつも、胸に針の痛みを感じる。黒い箱で才能を開花させ、キロムで研ぎ澄まし、それで何が守れたの?

 グレイスひとり守れない、弱いうちがいる。連れていかないことがグレイスを守ることだと信じた、ばかなうちがいる。

 だからこそ、うちは一歩先より前を見る必要があった。巨人の光輪が見せてくれたのは、人の感情とか敵の攻撃とかだけ。そんなことが読めたって大事なものは守れなかった。

 六感では決して見えない未来を、考え抜いて生きなきゃいけない。そこに必要なものが何なのか、最初からわかってたはず。

 やっと気がついたうちは、ずっとすべきだったことに手をかけていた。だからこれを言うのも、もう最後なんだ。

「グレイス、待っててね」

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