第1話_転生

 強くなる。だたそれだけを目標にして、とあるVRMMOをプレイしていた。このゲームはフィールドの広さはトップクラスでダンジョンの数も多かった。その上、自由度も高いということもあり人気を博した。そのためプレイヤーの層が広く、ダンジョン攻略だけでなく、アイテムを作って商売するプレイヤーもいれば、レアアイテムをコレクターすることを楽しむプレイヤーもいた。そんなゲームでひたすら強さだけを追い求めていた。

 しかしながら、それでも今回は勝てなかったようだ。

「あなたは亡くなられました」

声が聞こえた。辺りを見回すと白い部屋にいることがわかった。正面には女性がいた。どうやらこちらが落ち着くのを待っていてくれているようだった。

「そうでしたか」

落ち着いて答えた。女性は少し驚いた様子で、

「あまり動揺していないようですね」

と言った。そりゃゲームだし、と思いつつ死因を思い起こしてみる。

 長いこと潜り続けていたダンジョンから久々に出て街に行き、素材を換金した。武器を新調し、ポーション類を買って、……どうしたっけ。どこのダンジョンに向かうかまだ決めてないから街からは出てないし、街中でPKは起こりえないし、起こりえたとしても仮にもトッププレイヤーの端くれだ。それで死ぬ程弱くはない。という事は……バグったか。

「GMに“補償”してもらいましょう」

思わず口に出た。

「じーえむ? “保証”でしたら、私、女神アストレラが持ちますが?」

女性、改め、女神アストレラ様が疑問を呈す。

「あ、いえ。……復活にはどのくらいかかるのですか?」

独り言に反応され、焦って誤魔化す。蘇生ポイントは最後に立ち寄った街の神殿。デスペナはあるが、直ぐに復活する。今回のように女神様に会うという話は聞いたことないが、なんらかの条件で発動する隠し要素なのかもしれない。そもそも、その手の噂には疎いのだ。

「転生ですか? ……そうですね。手続きを済ませれば直ぐにでも可能です。転生の手続きを行いますか?」

女神様が丁寧に答えてくれた。……転生? 手続き? なにか雲行きが怪しい。とりあえず手続きの説明を聞くことにした。

「手続きは転生先の世界についての説明を聞き、必要があればなんらかのサポートを受けて完了します。説明は必須、サポートは任意です。サポートの内容は相談、合意の上で決定しますので、希望があれば申し出て下さい」

ということらしい。ついでに転生先の世界はRPGのシステムを世界の理として導入して作ったものらしく、魂がまだ十分に集まっていないので転生者を募っているのだそう。……うん。リアルに死んだのだろうことをやっと悟った。

「転生を希望されますか? 希望される場合、なにかサポートを望まれますか?」

そう言って女神様が説明をめた。

「直前までやってたRPGのデータ引き継げませんか?」

率直に希望を伝えた。女神様が少し思案して答えた。

「……各ステータスの値を引き継ぐ事が可能です。但しレベルの値は『1』になります。装備などのアイテムはおよそ持っていくことができません。スキルも同様です。世界間の互換性によるものですので、あきらめてください。なお、ステータスの値ですが、行く先の世界では有利にこそなれ不利にはならないといった程度のものです。参考までに。よろしいですか?」

「はい。お願いします」

女神様の問いかけに躊躇ちゅうちょなく答えた。女神様は返答を確認すると、

「今から転生作業に入ります」

と言って微笑んだ。

「あなたの行く先に幸多からんことを」

視界が暗転した。

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