平穏にトラブルはいらないの!

天下原なばら

第0話_プロローグ

 目を開けるとそこは知らない街だった。レンガ造りの家が建ち並び、石畳の道が延びる。ただひとえに、きれいだなと思った。

 ふと近くから水の音が聞こえることに気がついた。そちらを見遣ると噴水があり、水飛沫が光を映して輝いている。街を背景にして一枚の絵のようだった。そして視線を動かしたことでここが広場だとわかった。

 広場にはいくらか人がいた。元気に走り回る子供たち。それを見守る大人たち。騒がしく通り過ぎる若者たち――。この街には確かな平和があるのかもしれないと思った。

「強くなりたいな」

 そっと呟いた声は澄んだ街の空気に静かに溶けた。空はどこまでも抜ける青色。雲ひとつない快晴の空はこれからの行末を表してくれているのだろうか。

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