3

ガチャン ガチャンと二回も音がした。ほぼ同時に二つの扉が開いたのだろう。ここまでのこいつらは、今までと全然変わらず、マイペースに乱雑奇形を倒し、問題をクリアしてきたが、見せ所はここからだ。


「あ〜もう、早く端っこに追いやられてくれ人型野郎〜」


だるそうに聞こえたそれは、最後の班員・横井 真(よこい しん)の声だった。どうやら人型乱雑奇形が行き止まりに行くまで尾行しているらしい。


『横井遅い!暇なんだけど〜』


真の作戦など知らない晃がモニター室から真のイヤホンへと話しかける。当然、真に声は聞こえて、はいはい、という顔になる。


といか、晃、お前は指示を出せ。仕事しろ。


「もうこいつ、やなんだけど〜」


『やじゃないでしょうが。早く!』


「だって端っこに行ってくんない」


端っこに行かないと、お前は攻撃できんのか。俺は呆れてため息が出るが、何か作戦があるのだろうとも思い、すぐに視線をモニターに戻す。


『早めに終わったら、新しく出来た中華料理屋の激辛坦々麺奢ってやるから』


「まじで?!?!………あ」


『何』


坦々麺で喜んだ真が、すぐさま声のトーンを下げる。晃も焦らず聞くが、モニターを見ると状況はすぐにわかった。


「気、づかれた……笑」


『笑、じゃねぇ!!!』


人型乱雑奇形は真の声に気づき、様子を伺っていたが、目が合った瞬間に真に襲いかかってきた。ものすごいスピードだ。


人型乱雑奇形は名の通り人の形をしており、見た目からしては余り乱雑奇形とはわかりにくい。今までの事例では、目が一つのものがいたり、身体の一部が骨だったりと、多種多様なものがいた。


が、今日の試練で作ったこの人型は見た目は普通の人間である。本当に見ただけではわからないだろう。幸い、この部屋には班員しかいないわけだから、こいつが乱雑奇形だと言うことはすぐにわかるのだ。


ただし、そこに簡単さを求めては試験の意味が無いわけで、、、。


常にこいつらを見張っている(?)俺からしては、人型を追うのはスピード型の零、理、奨では無いということ。人型はスピードが特化していなくても充分だし、大きくないため一人が集中して戦う方が効率がよい。しかし、一人で戦うにしては架と聡の武器は重く、いくら速くなくてもコイツらよりは速く逃げることができるし、智はそもそも命中率が低い。となると、消去法で残るのは真ってわけだ。


晃の考えていることだろうコレは、俺には見え見えだったのだが、一歩成長したのだろうか。俺の耳と目が開いて、同時に疑った。


『登内、斜木!突撃!!』


晃が言い放った瞬間、上から二人が人型を前後で挟み撃ちにするよう飛び降りてきた。瞬間、零が後頭部、理が腹辺りを突き刺す。


「「…完了」」


グシャっと血の飛び散る音と共に、人型は倒れる。二人の頬には跳ねた血がついている。


予想していたのだろう、晃は。いや、逆にそういう風に "仕向けた" と言った方が正しいだろう。


真は囮だったというわけだ。やられた。


だが、ほっとしている間もないのだ。

俺もそこまでヤワじゃない。


「二人とも後ろ!」


「「横井後ろ!!」」


三人の背後からジワジワと植物型乱雑奇形が近づいていたのに、誰も気づいていなかった。視界から外れたところをついたのは、俺たち本部のほうなのだからそれはそうなんだが。


真はすぐに振り向き、武器:双剣の片方で植物型の伸びた枝を切ったものの、零と理は武器を持った手を取られる。


「登内!斜木!」


真はすぐ二人を助けに行こうと足を戻す。だが、イヤホンから聞こえた声に止められる。晃だ。


『馬鹿!仲間を助けるより先に目の前の敵から倒せ!』


晃の座右の銘。「仲間を助けるより先に目の前の敵から倒せ」これは仲間を信頼しているからこその言葉だと俺は思っている。部隊幹部からは「信じられない」「仲間が死んだらどうするんだ」など批判があるものの、晃はこのスタイルを貫いている。


ちっ と、真は舌打ちをする。真の癖だ。


「邪魔なんだよもう!!!!」


怒り半分、力任せに剣を振り、植物型乱雑奇形を素早く倒していく。完全に倒してはいないが、中のクライムが見えた途端、クライムだけを奇形本体から空中に飛ばす。奇形の目がそれに気を取られ、真から目を離すと、彼女はクライムがある方向にジャンプし、素早くぶっ壊した。


「早く二人を…………」


クライムを浄化し終えた真は、二人のいる方向を向いたのだが、時、既に遅しというやつか。違う意味で。


「ここでやられるほど」


「やわじゃないんで♪」


二人は余裕の微笑みで真の横に立っていた。さすが、速い奴らだ。


「さぁ〜最後の問題だよ〜」


理はスキップで機械の方へと行く。零も真もそれについて歩く。


「あ、おーーーーーーーーい!!」


機会の問題に手をかけた時、智、聡、架、奨も合流した。


「さて、みんな揃ったとこで、問題解きますかぁ」


真がそう言うと、それに反応したかのように機械の「Q」という文字が問題に切り替わる。








この部隊で一番最初に死ぬ人は誰でしょう

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