2
暇だ。眠い。
何回この二言を脳内で連続リピートしただろう。それくらい、この場所から出られないということは退屈なのである。だんだん座っていることさえダルく感じ、眠気と戦いながらモニターを眺める。
司令塔と言えど、私が指示しなくても班員達は思った以上に行動するし、素早く敵を倒していく訳だから、私の仕事は無いものに等しい。
だが、「エリアA」と示された一番上のモニターには右京と名嘉がじっと足を止めているのが写っている。
まぁそのはず。問題は二人の苦手な数学なのだから。因数分解でさえ危ないというのは、高校二年生になった私たちの歳でどうかとも思う。
その代わり、私は国語が壊滅的なんだが。
この他にあと五人の班員がいる。
エリアC、能天気な二人が動物型乱雑奇形を探している。あくびをしたり、歌を歌ったり。これでもこの班の特攻攻撃を担当する二人なんだが、スイッチが入らない限りはのんびりしている。
エリアF、黙々と雑魚を倒しながら問題を出題する機械を探している二人がいる。この二人は問題ないだろう。片方が頭いいから、問題も何とかなる。
最後の一人はエリアH。人型乱雑奇形を尾行している奴だが、まぁ大丈夫だろう。やり方は置いといて、最後までやる時はやるし。
うちは問題児ばかりらしいが、私は違うと思う。こいつらがめちゃくちゃすぎるのだ。よくついていけていると思う。凄いぞ、私。
そろそろ五分が経つ。右京と名嘉はまだ問題が解けていないようだった。姿勢を直し、マイクのスイッチを押す。スピーカー越しに聞こえるバンバンという音は、どうやら名嘉が機械を攻撃している音みたいだ。
「あーあー。右京、名嘉、聞こえるー?」
私が喋り出すと、名嘉が機械を蹴る音がピタッと止まった。聞こえたみたいだ。
私はさっき解いた答えをさらっと読み上げる。スピーカーからは「おおーーーー!!!!」やら「すごーーーーい!!」やら右京の声が聞こえる。
というか脳内で数式を解こうとするな。
『ありがとアッキーーーーー!!!好きーーーーーーーーー!!!!!』
右京が叫ぶ声が、この部屋中に響く。誰もお前からの告白なんぞ嬉しくないわ!とつっこみたいところだが、面倒臭いため無視した。
すると右京でも名嘉でもない声が「晃〜」と呼んだ。
全モニターをぐるっと見渡す。
エリアCにこっちを向く二人が写る。呼んでいたのはその二人の内の一人、登内 零(とうち りょう)だった。その隣で斜木 理(ななめぎ のぞむ)が跳ねている。かけている眼鏡も一緒に跳ねる。
「どした?」
『動物型いたんだけどさぁー………』
私が問うと、登内は眠そうな声で答える。いつもゆったり眠そうな声だが、本人は眠いわけではないらしい。
話の続きを聞く。
『でかいんだよね〜……めんどくさぁ』
「さっさと倒しやがれこら!!!!」
激しくどうでもいい、早く倒してくれ、私はルール上ここから出られないんだから………。
『じゃあやっちゃおう♪』
一人呑気だな、斜木………。やる気があるのはありがたいところだが…………。
動物型の為、登内の武器:ハンティングナイフ(何でそれで戦えるのかは謎)と斜木の武器:日本刀が刺さる度、赤か黒かさえもわからない血のような何かが飛び散る。
会話が終わると私のことはどうでも良くなったのか、二人とも乱雑奇形を倒すのに没頭していた。
………何故呼ばれた、私…………。
『あぁきらぁぁぁぁぁぁあああ!!!』
「またかよ…………」
次はエリアF。私を呼んだのは間藤 奨(まとう つとむ)だった。こちらにブンブンと大きく手を(というか腕を)振っている。片手には武器:カットラスを持っている。
「何〜?」
『あのな、部首の隣にあるやつって何だっけ?』
私の質問に答えたのは間藤ではなく、隣にいた縦山 架(たてやま かける)だった。武器:ハンマーに顎をつけて、だら〜んとしている。
て、そんなことより!!!!
「いや、それは嘘でしょ?!わかるでしょ?!」
『いやぁ、度忘れしちゃって…なっ!縦山!』
『うん!!』
しかも無駄に元気なのかよ!!
「…………つくり、だよ………………」
『『あーー!!!それだーーーー!!!スッキリしたーーーーーー!!!』』
二人はそう同時に叫ぶと、間藤は機械のモニターに答えを打ち込む。ガチャンと音が鳴った。と、その後またガチャンと鳴る。登内と斜木も扉を開けたようだった。
全扉解放まで、あと一問
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