物語ができるまで

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物語が出来るまで 目次

短編ができるまで

物語の生成・あらすじの変化・文章化前の検討

*コンセプト

 短編で、単純で、血が出たりしない話。ほんわか。


*ネタ

 男が、バスに乗って、降りて、家に帰る話。


*あらすじ

 朝、若い会社員の男が、妻と険悪なムードで会話をする。家をでた男は不機嫌なままバス停に並び、遅れてきたバスに乗る。車中はいつもと変わらず混んでおり、男はますます機嫌を悪くする。思索は妻は何を怒っていたのかに向かい、気づき、慌ててバスを降りた。



*具体的情報で肉付けしたあらすじ

 水曜日の朝、午前7時30分ごろ。若い会社員の男が玄関で靴を履いている。家の中に向かって「行ってきます」というものの、妻の返事はない。男も不機嫌になり、家を出る。マンションを出て数分。すでに何人か並んでいるバス停の最後尾につく。バスが3分ほど遅れ、男はますます機嫌を悪くする。

 不機嫌なまま乗り込んだバスは、いつもと同じように混んでおり、座ることはできない。肩や肘をぶつけ、頭をさげて、手すりにつかまる。不機嫌さは極まり、男は自分がなにをしたというのか、と考えはじめる。男はひとしきり自己肯定をする。

 しかし不機嫌さは収まらず、何度も止まるバスに苛立ちを募らせる。男の目は自然と車中の電光掲示板に向かって、今日が××日だときづく。結婚記念日である。妻が不機嫌だったのは、朝食後に残業で遅れると言ったせいだときづく。不平不満を言うことがなく、声を荒げることもない妻だった。その妻と、ただひとつだけ約束したことがある。それは、結婚記念日だけはともに過ごす、ということだった。

 男は思わず、バスを降りる。

 家に戻った男は、妻に、定時で帰ってくる、と伝える。

 妻は笑って、わざわざ帰ってこなくてもいいのに、と云う。



*時系列と情報開示の順序を整えたあらすじ+(追加情報)+『追加したオチ』

 水曜日の朝、午前7時30分頃。若い会社員の男が玄関で靴を履いている。家の中に向かって「行ってきます」というものの、(とつぜん不機嫌になった)妻の返事はない。(妻は朝食を食べ終えるまで機嫌がよかった。)

 男は返事がないことで不機嫌になり、家を出る。マンションを出て数分。すでに何人か並んでいるバス停の最後尾につく。(いつもよりバスを待つ時間が長く感じられて、)男はますます機嫌を悪くする。

 不機嫌なまま乗り込んだバスは、いつもと同じように混んでおり、座(れそうにない)。肩や肘をぶつけ、頭をさげて、手すりにつかまる。(椅子に座って談笑する男女の二人組を目にする。)

 不機嫌さは極まり、男は自分がなにをしたというのか、と考えはじめる。男はひとしきり自己肯定をする。(家事は自ら進んで分担を引き受けるし、残業で遅くなるときには今日と同じように事前に伝える。不慮の場合も電話する。妻に怒られるようなことは避けてきたし、できるかぎり怒ることもないように努めてきた。思わず声を荒げてしまったこともあるが、そのときは必ず自分から謝るように決めていた。)

 却って不機嫌さが増す。(バスが急制動をかけ、前につんのめり、ぶつかってしまい、謝る。手すりに捕まりなおしたところで、またバスが止まる。今度はつんのめることはなかったが、何度も止まる)バスに、苛立ちを募らせる。

 (苛立ち紛れに)男の目は車中の電光掲示板に向かう。(時計が目に入り、バスは三分ほど遅れてきていたと知る。しかも道が混んでいるせいで、電車は2本は遅れることになりそうだ。男は肩を落として、最悪な日だと思う。顔をあげると、)××日と書かれているのを目にする。

 (今日は)結婚記念日である。妻が不機嫌だったのは、朝食後に残業で遅れると言ったせいだと気づく。(これまで自分がそうしてきたように)不平不満を言うことがなく、声を荒げることもない妻だった。(互いに譲り合ってしまうところのある)妻と、(互いを尊重するために)ただひとつだけ約束したことがある。それは、(たとえ会社を休むことになっても、)結婚記念日だけは、(12時間以上)ともに過ごす、ということだった。

 (無理やり午前0時0分から数えてものこり5時間が必要であると気付き、)男は思わず、バスを降りていた。

 (10分近く走って)家に戻った男は、妻に、定時で帰ってくるから、と伝える。

 (目を丸くした)妻は、笑って、わざわざ帰ってることないのに、と云う。

『続けて、だって今日は結婚記念日よ、と言って笑う。

 男は妻の言葉で、約束を完全に思い出す。

 妻とした約束は、結婚記念日だけは、お互いに譲り合ったりしないで、我儘でいようね、であった。』


 

*文体の検討:

 思考、独白に言及する場面が多いので、一人称にしたい。

 しかし、それでは面白くない。書く側として面白さを感じたい。 

 慣れ親しんだ三人称(単視点)を採用し、あたかも事実を積み重ねているかのように演出したい。

 美文の練習をしたいところではあるものの、あらすじと舞台設定に合わない。

 身近な話題といった印象を強めたい。

 口語多めの、やや馴れ馴れしい三人称にした方が、ように思える。

 

*人名・場所名の決定

 いそうでいない名前がいい。

 できれば夫婦ともに音を開き、柔らかい印象をもたせたい。

 ただし、夫の方は不機嫌になるため、固さを残したい。

 苗字を高柳として、濁音、カ行で固さを出す。

 名前は夫婦それぞれ、宗太、真奈とし、ア行で開く。

 したがって初出は高柳宗太となり、妻・真奈とすることに決定する。

 

 住んでいるマンションは、なじまパークサイドとし、近隣に公園のある、やや郊外を想定する。公園のイメージからキャラの性格が逆算されることを期待する。

 結果として、夫婦は、本来は不機嫌になるような人物ではないことを演出する。


 以上。

 次回、文章化。


 タイトル

 未定

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