第三部:UMA探偵と魔草の絶叫
プロローグ
男は、やれやれとでも言うように頭を振った。建物の外壁に背を預けて座り込んでいるのは、そうしないと体を支えることができないからだ。なにしろ、左脚の膝から下が無くなってしまっている。
男は、彼の前に立つもう一人を見上げた。そのもう一人こそが、彼をそんな状態にしたまさに張本人であった。
「これはいったいどういうことだい?こっちの計画に乗ってくれるって話じゃあなかったのかな?」
相手を見上げてそう問いかける男の表情からは、不思議なことに苦痛が読み取れなかった。そんな男に不気味なものを感じながらも、相手の男はそれを表に出さないようにしながら、蔑むような口調で聞き返す。
「そっちこそ、あんなバカな話に我々が賛同すると、本気で考えていたのか?」
「バカな話ねぇ……皆が幸せになれる良い計画だと思ったんだけど。それじゃあ、結局君達は、彼らと全面対決する道を選ぶというわけかな」
「当然だろう。我々が消えるか、奴らが消えるか。二つに一つだ。他の選択肢は無い」
「頭の固いことだねぇ。ところで、今日のこれは、彼女の判断なのかな?」
新たな問いに相手は応えなかったが、彼の方はそこから察したようだった。
「なるほど、君の独断というわけだ。あーやれやれ、油断したなぁ。彼女だったら、私の案に賛同するかは別として、少なくともこんな真似はしないだろうと考えていたのがアダになったよ」
「いずれにせよ、お前はもう終わりだ」
「それは残念。これを作るのにはけっこうコストがかかるんだけどね。まあ良いさ。君達が協力してくれなくても、こっちはこっちで勝手に計画を進めるし、君らは君らの方で、自分の信じる道を進むと良い。君らがどんな道を進み、どこまで行けるのか、じっくり見物させてもらうことにするよ」
これから死ぬ奴が何をわけの分からんことを、と思いながら、相手の男は引き金を引く。
銃声が響き、座り込んでいた男の頭が吹き飛ばされた。
後始末を部下に任せ、その場を去ろうとしたもう一人の方は、背後から響く部下の驚愕の声に、思わず振り返った。そして、彼もまた、驚愕に目を見開くことになった。
しかし同時に、納得もする。
なるほど。これを作る、というのはこういうことだったのか。ならば、『こっちはこっちで計画を進める』だの『じっくり見物させてもらう』だのと言っていたのも理解できる。
思っていた以上に厄介な奴だということがよく分かった。だが、奴の残していったこの施設は、こちらの計画の役にも立ってくれるだろう。いや、正確には、この施設に残された生き物達は、と言うべきか。
彼は、今もどこかから見ているかもしれない敵の男に、心の中で挑戦状を叩きつけた。
じっくり見物させてもらうと言っていたな。ならば見ているが良い。我々が、この世界を救うのを。
そしてもしお前が邪魔をするつもりなら、何度でもこの手で排除してやる。
今日の様にな。
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