第三章:UMA探偵と巨大な白骨-6
「ぐっ……」
うめき声をあげて、東雲が倒れた。
有馬は冷や汗を拭う。
焦った。死ぬかと思った。
非殺傷武器であるテーザーガンの発射速度は、相手の体をぶち抜いてしまって構わない通常の銃ほどには速くない。こちらよりワンテンポ遅かったとはいえ、あのタイミングで東雲が構えてすぐに引き金を引いていれば、テーザーガンのワイヤーが到達するより先に撃たれていた可能性はあった。
だが、どういうわけか東雲は一瞬
最初に構えた時点で、正確にこちらの頭を狙えていたというのに。
有馬はテーザーガンの引き金に指をかけたまま、空いた方の手で急いで拳銃を拾い上げた。電気ショックを与えられた東雲はすぐには動けないはずだが、用心するにこしたことはない。
「……ふっ、ふふふ、強いじゃないか、UMA探偵」
舌は回るようになったらしく、東雲は倒れ伏したままながらも、不敵に笑った。
「この前はあんな姑息なやり方をしてきたから、てっきり正々堂々と戦えば弱いのかと思っていたんだが。正直言うとね、本当は一発目の蹴りで決めるつもりでいたんだ。あの不意討ちがまさか防がれるとは思わなかった……」
「人間よりはるかに強いUMAを相手にしてきたUMA探偵が弱いわけがないだろう?」
余裕ぶって言ってみたが、実際は危ないところではあった。東雲が気配を隠すのがもう少しうまかったら、確かに最初の一撃でやられていたかもしれない。
有馬の見たところ、東雲は正面切って戦う武道家としては優れていても、暗殺者や工作員としてはそうでもないようだ。自分が不意討ちをしかけるのも、逆に相手の不意討ちに対処するのも、うまいとは言い難い。そのあたりが、有馬に幸いした。
「君は姑息なやり方というが、野生の世界では不意討ち騙し討ちの類はむしろ王道なんだよ。カマキリは草、ワニは流木を装って獲物の不意をつくし、チーターだってぎりぎりまで隠れて近づいてから突然襲いかかる。そんな野生動物と対峙するUMA探偵の辞書にも、姑息だとか卑怯だとかの文字は無いのさ。それに、仮に人間同士の戦いは野生の世界とはまた別と考えるにしても、どのみち武道や格闘技の試合じゃあないんだから、姑息だとか正々堂々だとかそんな話は無意味だろう」
「……そうだな。確かにこれは武道や格闘技の試合じゃないし、だから正々堂々とか一対一とか、そんな話をするのは無意味だ。ただ、それでも私は、お前への借りは私自身の手で返したかったんだ。……だから、こんなかたちになってしまったのは、本当に残念だよ」
「武器を捨てて両手をゆっくりと挙げろ。お前は完全に包囲されている」
背後からの声とともに、周囲の建物の陰からも次々と銃を構えた人影が出てきた。
しまった。
東雲に気を取られすぎて、その間に接近を許してしまっていたようだ。
今にして思えば、倒された後の東雲の態度は余裕が有りすぎた。あれは単に虚勢をはっているだけではなかったのだ。
「やれやれ、今度は着信音じゃないようだね」
有馬は苦笑しながら、言われた通りテーザーガンから手を放し、ゆっくりと両手を挙げた。
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