第三章:UMA探偵と巨大な白骨-4

「ちょっと待った、本来の生息地って?!」

 山奥に作られた怪しげな施設で密かに飼育されていたことを考えても、この生物は遺伝子改変等で人為的に作られたものではないかと有馬は考えていた。

 だが、本来の生息地があるとなると、その仮説は否定される。


「そいつらの生息地は沼地や湿地帯だ。そこの飼育場の外周部分に水が溜めてあるのは、皮膚を乾燥させないために水浴びができるようにしているのだろう。そいつの巨体から考えると浅すぎるように思うかもしれないが、潜れるくらい深くすると危険なのだ。強力な尾で水を掻いて、水中から思いもよらない高さまでジャンプする場合が……」

 有馬の言葉を、生息地がどのような場所かについての問いと受け取ったらしく、カクコは滔々とうとうと説明し始めた。

 有馬は慌てて軌道修正を図る。

「いや、違う。そういうことが聞きたいんじゃあない。本来の生息地があるということは、こいつは野生動物なのかい?!」 


 海ならまだしも、陸地の生物でこれほど巨大なものが、これまで見つからずにきたなんてことが有り得るのか?

 しかも沼地や湿地帯となると、密林と違って開けた空間だ。見つかる確率は尚更高い。

 いや、見つからずにきたわけではないのだ。少なくともカクコ達と、ここでこいつを飼っていた何者かはこいつの存在を知っていた。

 しかし何故隠す必要がある?

 生物兵器として利用するため?

 バカバカしい。戦象だって紀元前の時点でスキピオに対策され、破られてしまっているのだ。大陸間弾道ミサイルやロボット兵器が作られている現在、巨大生物を兵器として利用したところで、大した有用性は無い。


「……そいつを捕食できるような生物がいるかという話だが」

 話を逸らされた。

 それにしても、話を逸らすのが下手だな、こいつ。

 しかし話を逸らすこと自体は下手でも、喋らないと決めたことは喋らないのだ、カクコは。ここで話を逸らすなとか言って食い下がっても無駄だろう。


「少なくとも私はそんな生物に心当たりは無いな。思うに、そいつは別に喰われたわけではなく、単に餌を与えられずに餓死し、その後に白骨化しただけなのではないか?」

「こいつと同じ状態の人間の死体もあってね。そっちは、服の状態から判断してごく最近まで生きていたと見て間違いない。腐敗や風化での白骨化ではないよ。それに昨日の救援要請の件もある」

「一見して同じような状態の死体だったとしても、死因まで同じとは限らないだろう?人間の方は昨日何かに襲われて喰われたのだとしても、キーコ ル ケ ア の方は前からとっくに白骨死体になっていたのではないか?」

 なるほど、確かにそう考えれば一応説明はつく。

 しかしいまいちすっきりしないのも確かだ。あんな巨大な生物の死体を白骨化するまで放置し続ければ、その間の腐敗臭は相当なものになるだろう。昨日までここにいた人間達は、それをどうしようともしなかったというのか?

 それに、あの死体の状態。

 どうにも気になっていた。人間もキーコルケア(?)も、もしこの仮説が正しければ襲ったのは……。


「カクコさん、もう一つ聞いておきたいことが……」

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