第三章:UMA探偵と巨大な白骨-1

 取材班の二人を残してトラックを降りると、有馬は急ぎ足でが見えた方向に向かった。

 についての自分の予想が、間違いであることを祈りながら。

 だが、近づくにつれて、その予想は確信へと変わっていった。


 間違いない。

 あれは、人間の死体だ。


 自然界で野生動物を相手にした日々を送っている有馬の視力は良い。最後に測った時も、両目ともに5.0を超えていた。その有馬がかろうじて見つけられたくらいだから、取材班の二人は気づいていないだろう。できれば、あの二人にはこんなものは見せたくなかった。一度UMAに襲われる経験をしているとはいえ、二人はあくまでも一般人だ。

 確かに、琴家ルルは妙に肝が座っている。巨大タコUMAとの戦いでは、彼女がいなければ有馬の身も危なかっただろう。

 矢部桐人は……あれは肝が座っているとか勇気があるとか、そういうのとは少し違う気がする。そんな強い意志や精神力のようなものは感じない。ただ、UMAに襲撃された時、そして暴走したルルにスピアガンを向けられた時も、取り乱すことなく落ち着いていたのは確かだ。

 しかしそんな二人でも、こんな所で人間の死体を見て、はたして精神的ショックを受けずにいられるか。下手すると一生モノのトラウマになるかもしれない。


 死体は白骨化していた。

 だがそれは、腐敗や風化によるものではない。それにしては、衣服の状態が良すぎるのだ。この死体は恐らく、つい最近まで生きていたものだ。では何故、骨だけしか残っていないのか。

 心当たりはある。

 あの救難信号。『……も喰われ』とか言っていた。

「喰われた……のか?空飛ぶ巨大UMAに?」


 片膝をついてしゃがみ、死体を検分する。その間も、周囲への警戒は怠らない。

 大型の飛行生物は多くの場合、気流に乗って緩やかに飛ぶものだ。だが、相手がUMAの場合、既知の生物の常識が当てはまるとは限らない。矢部達にはこのライフルがあれば大丈夫だと大見得を切ったが、高速で突っ込んでこられたら、撃つ間も無くやられてしまうかもしれない。

 しかし幸いにして、謎の巨影に日がさえぎられることも無く、また、自分達が乗ってきたトラックのエンジン音以外には物音一つ聞こえない。何もおかしいところは……。


 いや、何かおかしい。


 そう、おかしいのはところだ。こんな山の中なのに、鳥どころかセミの声すら全くしない。

 まるで、生き物という生き物がこの山から消失してしまったようだ。

 嫌な予感がますます募る。

 立ち上がった時、一番近くにあった建物の様子が有馬の注意を引いた。

 扉が開けっ放しになっている。

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