幕間「カラスの死体は消失する」
「カラスの死体は消失する」
そんな噂を、聞いたことがある。
都会には数多くのカラスがいるにも関わらず、その死体を見ることはほとんど無いことから、そのような都市伝説が生まれたらしい。
自然発火して焼失するのだとか、UFOが回収するのだなどという話もあるが、もちろん本当に死体が消失するはずもない。
カラスは自らが死ぬべき時を知っており、その時が来ると人目につかないところに行って静かに死を迎えるため、人間が死体を見る機会が無いというのが実際のところらしい。
似たような話で、象の墓場というのもある。これも死期を悟った象が自ら墓場まで赴き、そこで死を迎えるというものだ。
カラスにしろ象にしろ、生き物というのは本来そういうもの、そうあるべきものなのだろう。
自らの死ぬべき時をきちんと理解し、その時が来たら静かにそれを受け入れる。
そうでないのは、人間だけだ。
死ぬべき時が来ても死にたくないと醜く足掻き、自分と、そしてなにより周りを不幸にする。ゴミを漁るカラスですら自分の死ぬべき時は理解しているというのに、人間というのはそれ以下の醜い存在だ。
そして、そんな醜い人間の代表がまさに自分だ。
死ぬべき時に死なず、その結果、多くの人達が不幸になり、そして中には命を落とした人もいる。
だから、次にその機会が来た時は、今度こそ迷わずちゃんと消え失せよう。
そう思う。
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