エピローグ「目があった話」

 その後、有馬はタコの死骸が一部でも残っていれば回収すると言ってUMA探偵協会の船に乗り、私達の方はイトウが操舵する有馬の船で島を去った。

 港でイトウ達と別れ、その後、麻倉や矢部とも別れて帰宅した。

 誰の視線も無い自宅に入ると、緊張の糸が切れたのか玄関で座り込んでしまった。しかしただのしがない動画配信サイトのリポーターが巨大UMAや武装組織との戦いに巻き込まれたのだから、それくらいのことは許してもらいたいところである。


 あの大ダコとの最後の戦いで撮影した映像は間違いなく大スクープだ。視聴者数もうなぎのぼりに違いない。そうなったら、その貢献をたてにとって屋内での事務仕事に戻らせてもらおう。これで無駄に人目に晒されるリポーターなんて仕事ともおさらばだ。


 そのまま玄関で寝てしまいたいほど疲れていたが、やはりシャワーくらいは浴びておこうと思い直した。なにしろ今日は海に落ちたりもしている。そのままにしておくと髪も傷んでしまいそうだ。

 それに、ここは私の家だ。他人の視線の無い空間であり、外見を取り繕った琴家ルルから三井田伊豆子に戻る場所だ。だからメイクは落としておきたかった。


 鏡の前に立った時、額に指の爪くらいのサイズのできものがあるのに気がついた。

「いつの間にこんなのができてたんだろ。今朝は無かったはずだけど。虫にでも刺されたかな?」

 独り言を呟きながら指先でそれに触れようとした時、気がついた。

 一見しただけなら、それは私の一部の様に見える。色も私の肌とまったく同じだ。

 しかしよく見ると、そのできものには……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る