第三章:UMA探偵と人喰いミズコ-1
私は、誰にも見られたくなかった。
そんな私が、リポーターなどという万人の目に晒される立場に耐えられたのは、見られているのは“私”ではないと思うことができたからだ。
顔もキャラも、念入りに作り上げた別物だ。だから、撮影され、配信され、多くの人に見られるのは、多くの人が目の当たりにするのは、“私”じゃない。
そう思っていたからこそ、望んで就いたわけではないこの仕事をやってこれたのだ。
だが、さっき、海に落ちてからはどうだ。余裕を無くして素の性格で有馬に食って掛かっていたばかりか、メイクまで落ちてしまっていたらしい。
外見ばかりか、中身も見たままだ。
もしかして、あの映像にはそんな私の姿まで収められているのか?
あの時、矢部はまだカメラを回していただろうか?
あの映像が配信されたら、“私”が――見せかけではない、見たままの“私”――が大勢の目に晒されることになるのか?
視線を感じた。
こちらをちらちら見ては噂をする近所の主婦達の視線。
嫌悪に満ちたクラス委員長の、クラスメイト達の視線。
あの男の視線。
私が食べたかもしれない両親の視線。
私が見殺しにした、弟の視線。
視線が気持ち悪くて、目眩がしてきた。
見て、あの子よ。見ているぞ。ほら見て、気持ち悪い。見ているぞ。ずっと見ているぞ。
やめろ、見るな。
見ているぞ見ているぞ見ているぞ見ているぞずっとずっと見ているぞ。
見るな見るな。
見ているぞ見ているぞ見ているぞ見ているぞ見ているぞ見ているぞずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと見ているぞ見ているぞ見ているぞ。
見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな。
私を見るな!
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