第7話 宿命の出会い

 ミナはウェル達の言われた通り、離れた場所で待機していた。

 双眼鏡を持って遠くを覗く。

 魔族達の倒れている姿が目に入る。

 本当に討伐できるのだろうかという不安があった。

 途中で逃げ出しているのではないかと思っているほどである。

 ミナは双眼鏡で町の周辺を確認していた。

 見えるのは魔族の死体だけである。

 町の中まではさすがに見えない。

 それでもとミナは周辺を確認する。

 そこにはウェルとデイグが歩いて来るのが見える。

 ミナは安堵と共にウェル達に向かって走り出した。

 離れた場所のため、距離がある。

 それでもミナは走るのを止めなかった。

 しばらく走るとウェルとデイグが手を振っている。

 ミナはそれに気付き、走りながら手を振る。

 そして、ミナは二人と合流した。

 皆がウェル達に向かって走ったため、息を切らしている。

 その息を切らしているミナにウェルは軽い口調で話した。

「ここの頭を倒して来たぞ」

「本当!」

「ああ。 というわけで町に入って確認しようか。 魔族なら全滅させているから問題ないぞ」

 ウェルは軽い口調でミナに伝え、三人で町に入った。

 そこでガーデスの死体を確認して、報告はしたということで三人は王国へと帰っていった。



 王国へ帰るのに三人は徒歩で向かった。

 ウェルとデイグは予備の服を持っていたため、着替えている。

 流石にあんなに赤く染まったままの状態ではマズイだろという考えで着替えてもらったのだ。

 三人が帰っている途中、道端で三人は馬車を見つける。

 その馬車は移動中のためかこちらへ向かって来るのだ。

「馬車がここを通るなんて珍しいね」

 ウェルが言う。

 ミナは少し考えて、おかしいと思い始める。

 ここから来るということは向かう場所はミナールの町しかない。

 しかもミナールは先程、魔族を討伐したばかりで王国にも連絡が入っていないはずだ。

 つまり、ここを通る理由は王国からの依頼の者、又は別の目的の為ということになる。

 ミナが考えていると、ウェルが手を振って馬車を止めたのだ。

「待って! なんで止めるの!」

 ミナの怒りの声にウェルは軽い口調で答えた。

「だって、馬車で帰った方が楽じゃないか」

「そうじゃないでしょ! ここに馬車が通るということは誰か乗っているってのは確実でしょ!」

 ミナの抗議にウェルは耳を両手で塞ぐ。

「おい。 誰か出て来たぞ」

 デイグの声に二人は反応して馬車を見る。

 馬車から一人の青年が現れた。

 青年はローブを着ており、眼鏡をかけている。

 顔から判断するに少し痩せていることも分かる。

「お待ちしておりました」

 三人は目が点になる。

「あなた方に是非お会いしたかったのですよ。 王国に行った際、ミナールに向かったということでこちらから伺いました」

 デイグはウェルとミナに知り合いかと合図を送る。

 二人は首を横に振り、知らないと合図を送った。

「ああ。 紹介が遅れました。 私はヤクドと申します。 魔法や科学について研究する研究者です」

「で、その研究者が何の用だ?」

 デイグは殺気を込めた言葉でヤクドに聞く。

「そんな睨まないで下さいよ。 私はあくまで話をしに来たのだけですから」

 ヤクドはデイグの殺気に少し怯えながら言う。

 三人は気付いていたのだ。 誰かを追って来たのだとしたら、当然目的がある。 危険な可能性もあると踏んでいたのだ。

 三人の警戒態勢にヤクドは笑顔を振りまき話をする。

「実はそこの男性のお二方に聞きますね。 再び英雄になりたくはありませんか?」

「は?」

 ウェルはヤクドの言葉に疑問で返し、ウェルは口を開いた。

「魔王を倒して世界に平和が訪れて、おめでとうという話で終わったのだから英雄の仕事はとっくに終わっているだろ。 何を言っているんだ」

「再び戦争をする準備をしているとしてもですか?」

 三人は驚く。 この平和を取り戻すために戦ったのに、また戦争をすると言っていることがおかしすぎる。

 その三人の考えを知ってか知らずか、ヤクドは再び口を開く。

「戦争でね、私達の作っている物が飛ぶ様に売れたのですよ。 戦争はねビジネスなんですよ。 だからあなた達に協力して欲しいのですよ」

「断る!」

 ウェルはヤクドの誘いに間髪入れずに断った。

 ヤクドは少し落胆したかの様に頭を下げる。

「では、私の製品を見てもらってから決めてもらいましょう」

 すると、馬車からもう一人ローブを羽織った者が出て来る。

 ローブの者は頭にフードを着けているため、どんな顔をしているか分からない。

 ヤクドはフードの男に合図を送り、フードを外す。

 その者は二本の角が生えており、肌は青白い色をしていた。

 ウェルはその姿を見て、剣を構え、その者に突撃していく。

「貴様ーーーー!!」

 ウェルはその者に剣を全力で振り下ろすが、片腕の防壁魔法で止められてしまう。

「どういうことなの!?」

 ミナは慌ててデイグに聞くと、デイグは銃を構えながら答えた。

「あいつはな魔王だよ。 数年前に戦ったと言われるあの魔王だ」

 ミナは口を開けざるをえなかった。 

 ミナも剣を取り、三人は戦闘体制に入ったのだ。

 

  

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